アーク・ノヴァ 東日本への贈りもの

HAPPENINGText: Yuko Miyakoshi

とりわけ今年の4月に単身来日したインド出身の指揮者ズービン・メータの言葉は、日本の人々の心を励ましてくれた。『危機のなかにいる人々が、あまねく平和を求めることを、私は自らの経験で知っている。そして、その平和は音楽の中にこそある。苦しむ人たちの前で音楽を奏でるために、私たち音楽家がいる。』(朝日新聞4月18日)

メータはロサンゼルス地震や湾岸戦争の時も指揮台に立った経験があり、今の日本にも音楽の力で人々を励ます場面が絶対に訪れると信じている。天災の脅威を受け、心の拠りどころを失いそうになった時、例えつかの間でも安心を感じられるのは、このように確信に満ちた言葉に出会った時ではないだろうか。

震災から5ヶ月が過ぎた今、復興への取り組みは次のステップへと移りつつある。梶本はこのプロジェクトを永続的に続けていきたいと語る。『大震災がもたらした傷は依然深く、すぐさま癒えるものではありません。アーク・ノヴァ・プロジェクトによって、私たちはこの困難の中にいる人々のもとを訪れ、日常では経験できないような喜びをお届けしたいのです。このコンサート・ホールは、パフォーマンスのための空間として使用されるのみならず、出会いの場として、想像的インスピレーションを見出す場として、そして被災地の復興を永続的に後押しするものとして役立つことになると確信しています。』

アーク・ノヴァでは、クラシック音楽だけではなく、ジャズ、ダンス、マルチメディア、各分野にまたがるアート・プロジェクト等が提供される。また、スポンサー企業や後援者から出資を受け、被災地の方々は無料で公演を鑑賞できるようになる予定だという。現在製作が進められているコンサートホールは、2012年春から巡回の見込み。こけら落としは、大がかりな復興プロジェクトの始動の日としても、アート作品が私たちの目にふれる日としても、特別な日になりそうだ。

ARK NOVA ~東日本への贈りもの~ 概要発表
日時:2011年8月9日(火)日本時間19:00(スイス時間12:00)
スイス:ルツェルン KKL コンサート・ホール
日本:東京国際フォーラム
https://www.ark-nova.ch

プロジェクト・チーム
建築:磯崎 新
シェル・デザイン:アニッシュ・カプーア
音響コンサルタント:豊田泰久(永田音響設計)
舞台コンサルタント:デビッド・ステープルズ(シアター・プロジェクト)
監督:ルツェルン・フェスティバル、KAJIMOTO、磯崎新アトリエ

Text: Yuko Miyakoshi

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