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アンナ・グレイ&ライアン・ウィルソン・ポールセン

PEOPLEText: Nat Andreini

最も記憶に残る共作のプロジェクトについて聞かせて下さい。

それぞれのプロジェクトから学ぶことがあるので、それは難しい質問ですね。

おそらく初めて展示会形式となった「every which way」が最も記憶に残っているかもしれない。私たちのベスト作品とは呼べないかもしれないけれど、一つの展示会を作り上げる中での駆引きといった自分たちの多様な面があからさまとなって、観衆が何をどのように考えているか自分たちがいかに沢山の想定をしているかということが明らかになったわ。学んだことは、人々がコラボレーションについて避けがたい程に興味を示しながらも、複数からなる共著というアイディアを受け入れ難く感じているということ。そして、数えきれない人々が、その作品の主題そのものよりもむしろどのように作業分担をしたか見極める試みをしているのを見て来たわ。対話を繰り返しながらそういったことに対して取り組むことができたし、そこで非常に強く感じたことは、この小さなプロジェクトは人々の頭の中で私たちを深く結びつけるのと同じくらいに、人々がその共作を興味津々と分析する衝動に駆らせると。「every which way」を通じて私たちは共にとてもオーガニックで快適に、そしてダイナミックなかたちで取り組むように成長したわ。そして最終的に自分たちが半ば懐疑的に感じていた過程への無数の疑問を浮き彫りにすることができるようになった。

直ぐに思い起こされるもう一つのプロジェクトは「A Classroom Reader」で、それは展示会と連動して企画した4つの講義を基にした記録から成る小さな出版物。そしてこれはそれまでで最も他者と深く関わったプロジェクトとなったの。私たち2人にとって、一緒に仕事をすることは自然に感じられるけれど、第三者を挟むとそう簡単にはいかないわ。交渉を進めていくことや期限を守ることは時として難しいもの。素晴らしく、そして信頼できる人々と仕事をしている中でも、プロジェクトが私たちの手に負えないといった感覚を自覚せざるをえないことがあったわね。

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“100 Posterworks” Printed posters, 11″ x 17″, 2008-2010 © Anna Gray & Ryan Wilson Paulsen

非常に記憶に残るプロジェクトをもう一つ上げるとしたら「100 Posterworks」かな。他の人々を対話に誘い込みながら、アイディアを通して2人で直ぐに自発的なかたちで始まったの。カメラや丸めた紙、インクを携えて街中を歩き回る中で、自分たちの頭に浮かんだことや反応を返すこと何でも記し加えていくように課しながら、ポスター作品としての型と形式をかたどっていった。

この問いに短く答えるとしたら、もっとも記憶に残るプロジェクトは完遂することが少し困難であったものと言えるかしら。その挑戦が記憶に残るものにさせて、時として理想には感じられない状況に進んでいっても、それが大切なプロジェクトの記憶となっていくの。

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“Bookworks” Various Bookworks, 2009-2010 © Anna Gray & Ryan Wilson Paulsen. Courtesy of PDX Contemporary Art

アイディア志向のアートといっても祖父母の代には説明に窮するかもしれませんが、それが今日私たちの生活する世界でもあります。つい最近まで哲学が科学とアートとの橋渡しでしたし、今では科学技術が私たちが欲する時にいつでも、全てのものとを結びつけてくれます。インターネット接続があれば、基本的に誰でもその指先で同じ情報を得ることができ、それは私たち、アイディア志向のアーティストにも当てはまります。しかしながら、個人的にあなた方の作品に興味をそそられるのは、あなた方自身とその作品を体験する人なら誰でも同じ視点に立てるということ。あなた方の観客感を聞かせていただけますか?

観客に関した質問は単純には答えられないもので、時に大学院でも取り上げられていました。私たちが心に置いておくべき大切なことは、素晴らしい作品の中には特定の対話の中でのみ語りかけ、存在するものがあるということ。幾つもの手段を用いて、私たちは特定のアイディアを特定の個人や会話の中へと方向付けを行っていて、同時に他の人々がその会話に加わることができる可能性、若しくは少なくともそれを傍で立ち聞きするのを楽しんでもらうことを望んでいます。さらに、私たち2人から生まれてくるアイディアのほとんどが、互いをどうにか印象付けようと試みているもので、どちらかが心動かされた時に作品に取り組み始めます。「100 Posterworks」はアーティスト、トム・ホームズ(彼からは全く返答を得られなかった)との対話を試みたところから始まりました。「The Classroom」は元は大学院生活での経験への強い還元として生まれた一大展示でもあります。

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