ニュイ・ブランシュ 2010

HAPPENINGText: Kana Sunayama

9回目を迎えるパリの毎秋恒例イベント「Nuit Blanche(ニュイ・ブランシュ)が、今年も10月2日の夜から3日の朝にかけて開催された。
2002年からパリ市文化政策の大きな試みの一つとして始められたこのニュイ・ブランシュは、毎年名だたるコンテンポラリーアートのキュレーターによって企画される。いわばパリという街全体を会場とみなした一晩だけの展覧会だ。

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Wilfredo Prieto © Mairie de Paris Anne Thomes

もちろんそんな大掛かりでありながら花火のように一瞬で消えてしまうイベントが毎年大成功するわけではない。パリ郊外の住人や海外からの旅行客、またパリ在住の外国人たち以外で、生粋のパリジャンがこのイベントを本当に楽しんでいるのかは謎だ。毎年少しは出かけたとしても、『いまいちだった。いつもニュイ・ブランシュにはがっかりさせられるよ。』と歯に衣を着せぬ不満を口にするのもパリジャンの特徴だから。

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© Brice Pelleshi & Pier Schneider

今年は数ヶ月前に「FIAC」(Foire Internationale d’Art Contemporain/国際現代美術フェア)の共同ディレクターを退任し、フランソワ・ピノー所有のヴェネツィアの二つのミュージアムのディレクターへと、アート界をアッと驚かせる空中ブランコのような異例の就任劇を見せたマルタン・ベトゥノが、一晩だけのアートの祭典を牛耳った。

40を数える公式プロジェクトのうち、15作品ほどが今回のニュイ・ブランシュのために制作され、アソシエイト・プロジェクトは200にのぼった。いくら一晩パリを練り歩いても全てのイベントを制覇することは不可能だ。実際、アソシエイト・プロジェクトは期間中の展覧会を公開しているギャラリーなども数えられる。また、無料配布された小さなカタログの通り会場にたどり着いても、実は何もやっていなかったり、はたまた長い長い列に並ばなければ見ることのできない展示も多い。

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Lang & Baumann © Maire de Paris Anne Thomes

2010年のニュイ・ブランシュの夜、パリは三つの地区に縮小された。一つ目はパリ西側のパレドトーキョーやパリ市立近代美術館、またギメ美術館などの有数美術館が高級住宅街のなかにひしめくトロカデロ/イエナ周辺。ここは美術館を一晩中開放し、館内の会場にニュイ・ブランシュ企画の作品を展示しているものが目立った。

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