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ニュイ・ブランシュ 2010

HAPPENINGText: Kana Sunayama

二つ目はパリの真ん中、マレ地区。美術館、文化センター、また教会などを舞台にパフォーマンスが夜通しで開催された。そして最後は西側のベルヴィル地区。パリ第二の中国人街であるこの地区にはここ数年若いギャラリストたちが次々にギャラリーを開き、アーティストたちも自分たちのアトリエを開放するなど、アンダーグラウンドと呼ぶには少し派手なコンテンポラリーアートの動きがある。現在、ビエンナーレ・ド・ベルヴィルがここで開催されていることもあり、ニュイ・ブランシュはどちらかというとビエンナーレ・ド・ベルヴィルの夜間公開のような様子を見せた。

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Michelangelo Pistoletto © Mairie de Paris Anne Thomes

公式プロジェクトの中で多くのビジターが楽しんだものの中に、ミケランジェロ・ピストレットのインスタレーション「aimer la différence」がある。様々な言語での「違いを愛する」というフレーズのネオンがパリ市庁舎のファサードに光り輝く。ゲイ地区として有名なマレ地区のど真ん中に位置するこのパリ市庁舎を牛耳るのは自らもゲイであるドラノエ市長だ。言語の違いや国籍の違いだけでない、この現代社会に生きる私たち一人一人の違いの多様さと、その豊かさと幸せにふと思いを馳せることのできる展示。

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CÇleste Boursier Mougenot ©Mairie de Paris Anne Thomes

夜中に開かれる一時的でサイトスペシフィックな文化的イベントであることから、パフォーマンスや映像、音響作品の多いニュイ・ブランシュであるが、その開催前から騒がれていたのが、ティノ・セーガルの「Kiss」。パリ国立美術学校のギャラリーが開放されたが、人の多さとその展示方法のせいで、作品の持つ静謐さや覗き見的な感覚が全て削がれてしまっていて、非常に残念であったことは否めない。これはニュイ・ブランシュという大衆参加型のイベントの難しさが露呈した作品であった。

来年には10周年を迎えるニュイ・ブランシュだが、最近ではパリだけでなく、モンレアル、トロント、マドリードなどでも同様のイベントが開催されている。経済不況で文化予算が削られている話ばかり耳にする昨今、市民が無料で楽しめる一晩だけのアートイベントに、内容云々以前にその存在の貴重さを再確認する。

Nuit Blanche 2010
会期:2010年10月2日(土)夜から3日(日)朝にかけて
会場:パリ市内各所
https://www.paris.fr

Text: Kana Sunayama

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