村上隆 ベルサイユ展

HAPPENINGText: Kana Sunayama

「美」とは何か。議論を巻き起こした村上隆の展覧会。

青木亮、安藤雅信、村田森、小嶋亜創、奈良美智、小出ナオキ、青島千穂、ガブリエル・オロスコ、ローズマリー・トロッケル

村上隆のベルサイユとの出会いは、日本人にはなじみの深いフランス革命を題材にした池田理代子の長編漫画作品「ベルサイユの薔薇」だという。村上隆は「マンガ」文化の表現方法を芸術作品として発表している、世界で作品評価額の最も高いアーティストの一人である。そんな彼の作品22点が、太陽王ルイ14世の威光の結晶を一目見ようと集まってくる世界中からの観光客で溢れるベルサイユ宮殿に、12月12日まで展示されている。

村上隆

最初に出会える村上隆の作品は、全長8mにも及ぶ「とんがりくん」。マルチカラーの仏陀のような様相でヘラクレスの間の天井画に突き刺さりそうな勢いだ。

MURAKAMI

村上隆の作り上げたマスコットキャラクターのうちの一組、カイカイとキキはルイ14世の守備をするかのように立ちはだかる。

MURAKAMI

村上隆のアーティストとしてのキャリアの上で伝説的代表作品になっている「HIROPON」や「My Lonesome CowBoy」などのポルノ的描写があるとも捉えられかねない作品は姿をくらまし、ベルサイユ宮殿が家族連れなど老若男女の集まる観光地であることを考慮して、作品選択において自主的な規制がなされた。

また、全作品のうち半分ほどが今回の展覧会のために制作された新作であるが、それ以外の作品の大半が世界中に広がるコレクターのものではなく、アーティスト蔵であることに驚く。

村上隆

ベルサイユ宮殿のメインともいえる鏡の間にはムラカミカラーのブーケが枝を伸ばして広がる。

村上隆

グランド・アパルトモンの最後を飾るのは、裸の王様にインスパイアされた作品。ジャック・ルイ・ダヴィッドによる「ナポレオンの戴冠」の前にかわいらしくリディキュールに鎮座する。

インタビューでは村上隆自身が、この展覧会のテーマを「歴史の衝突」または「異文化の衝突」と設定しているが、実際はどちらかというとベルサイユと村上作品の「調和」をより狙ったように思われる。アメリカ人アーティスト、ジェフ・クーンズによって、二年前にここベルサイユ宮殿での現代美術展サイクルは始まったこともあり、今回の村上隆展はジェフ・クーンズ展と常に比較される。

クーンズによるアメリカ大衆文化からインスパイアを受けたポストポップと呼ばれる作品のように、コンテンポラリーではあるがヨーロッパ文化にはないものをベルサイユ宮殿という懐古主義の象徴とも言える箱の中に展示するという点と、なによりもクーンズも村上も世界でビジネス的に最も「成功」しているアーティストであるという点、また彼らがベルサイユ宮殿のディレクター、ジャン・ジャック・アイヤゴンと強いコネクションを持つフランソワ・ピノーに代表されるようなメガコレクターたちのお気に入りアーティストであるという点。それらに加え、いざ今回の村上展がオープンされてからの批判としては、クーンズ展のときと全く同じような展示方法であることが挙げられる。開催前の宣伝としての報道とは逆に、開催後はフランスのメディアには村上展がかなりあからさまに批判されているのが実情だ。クーンズがアメリカンスマイルをたたえながらも、作品でベルサイユに闘いを挑んだ挑戦の展覧会であるのに対して、村上は日本人的調和を探求したがその芸術的評価は低いものとなってしまった。

村上隆

開催前からテレビ、ラジオ、新聞、雑誌など様々なメディアで紹介され、大規模な宣伝が打たれたこの展覧会。ジェフ・クーンズ展と同じく、フランスの極右団体やベルサイユ友の会などによる反対運動も行われ、オープンから2週間ほど経った10月1日の時点では5690人もの反対署名が集められた。しかし一方で今回の展覧会の反響により、今年の入館者数は去年と比べて15〜20%の増加ということだ。

ベルサイユ宮殿ディレクターのジャン・ジャック・アイヤゴンは結局、まだまだ7年間は継続の予定されている宮殿での現代美術展を、来年からは宮殿内の鏡の間やヘラクレスの間、王の寝室、王妃の寝室などが続くアパルトモン部分での現代美術の展示をストップし、宮殿敷地内の庭園などでの展示のみでの続行を表明した。『反対運動の騒ぎを沈静化するためではない。』と言及しながらも、2012年に予定されているイタリア人アーティスト、マウリツィオ・カテランの展示では反対運動が確実に行われるであろうことを見越しての決定と言えるだろう。

また反対運動だけではなく、各メディアやインターネットまた日常の会話の中でも、本展は議論を巻き起こし、この展覧会を発端として、『「美」とは何か。』『ではその逆の「醜」というのは何をもって定義するのか。』という議論にまで発展している。「ベルサイユ=美」なのだろうか。たとえ反対運動があろうとも、また批判が強かったとしても、展覧会だけには留まらない芸術議論を再発させたこの展覧会。一見の価値有りと言える。

Murakami Versailles – 村上隆 ベルサイユ展
会期:2010年9月14日〜12月12日
会場:ベルサイユ宮殿
住所:De’partement of Yvelines, Ile-de-France, France
http://www.chateauversailles.fr

Text: Kana Sunayama
Photos: Kana Sunayama

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