ヤン・ヨンリャン

PEOPLEText: Emma Chi

ヤン・ヨンリャンの作品を遠くから眺めていると一見優雅な水墨画だが、近くで見ると描かれている山や丘、湖水の流れなどに加え、巨大なクレーンが森林伐採をしている様子や高層ビルや信号機、といったような現代を表す光景が描かれている。彼の絵に押されている印でさえも、水路の蓋のように見えてしまうから不思議だ。一体誰が、伝統的な水墨画と現代の都市の景観を互いに生かし、そして一枚の絵画へと発展させることができただろうか。コンピューターを駆使し、水墨画と都市を撮影した写真を融合させるユニークなアーティストだ。最近、上海の「Bund18号」で彼の展示が行われた。

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1980年代後半に上海で生まれ、自国の伝統文化に深い興味を持っていたヨンリャン。中国画、書道、篆刻などを幼いころから学んでいたという。これらのバッググラウンドが、現在の彼の創作活動に大きな影響をもたらしているのは間違いないだろう。

水墨画と現代の景観の写真を組み合わせるようになったのはなぜですか?

子供の頃から水墨画と書道を習っています。そして上海という、恐らく現在最速のスピードで成長している都市に住み、毎日何かが変化しているこの場所で、僕は静かにそれらを観察をしていると思うんです。高層ビルが建ったり、壊されたりという事が本当にたくさん行われています。このアイディアは自然とそういったものを見て生まれました。学校で学んだものと、自分自身の目で見ているもの、両極端のものではありますが、それらを組み合わせてみたのです。

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10メートルにも及ぶ絵画は、現在のところあなたの作品の中で一番長いものですね。どのようにして、現代的な建築物を水墨画に取り入れたのでしょうか?

僕の作品には、2つの対極したものがあります。ひとつは中国の伝統的な文化と現代カルチャー、もうひとつは現代の進歩した生活と人々のエコに対する考えの矛盾です。人々はより良い、住みやすい環境を作るため高層ビルを建て続けていますが、一方それらにかかるコストは膨大なものです。僕の作品は距離を置いて見ると自然の風景ですが、近づいてよく見ると現代の風景が隠されているのに気付くと思います。僕はそれらの矛盾を、ハーモニーとして融合できないだろうかと試みたんです。伝統的な中国の水墨画とモダンな都市の細部は両極端にあると思いますが、僕の作品を通じてそれらは同じ紙の上に存在し、視覚的バランスを得ることができたと思うのです。

中国の山水画は宋の時代がピークだったと言われていますね。近年のアーティスト達はどのように成功していくかを重要視しているように思います。このような状況をどう思われますか?

残念ですが、古代の芸術は現在のそれとは比べることも再現することも不可能だと思うんです。社会的な環境も違えば、人々の精神状態もかなり違うと思います。私たちは今、物質主義の、全ては工業化された社会の中で生きていて、それは昔の人々が手作業で全ての事をまかなっていたものと比べることはできません。まず、芸術的な創造物というのは、古代に作られたものの領域には行きつくことはできないと思うんです。例えば、絹画では昔は100%純粋な絹が使われていましたが、現在では、大抵ナイロンが混ざっているんです。インクなんかも、昔は口に入れても平気だったのですが、今日では自然とそういう事はできなくなっています。古代のアートを再現することができるかと聞かれると、条件が単純にもう合わないんですね。個人的な意見ですが、どのようなメディアを使って表現するのかが重要なのではなく、古代の人々の創造的な魂を守り続け、やり通す事が重要なんだと思います。残念ながら、知識階級の文化がその精神を引き離してしまいましたが、山や森に住めない現実を受け入れ、現在を楽しむという考えを持ちつつ、大きな都市に存在する“世間に知られた世捨て人”ということを強調できると思うのです。

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「セメント」がテーマの展示でしたが、大量のレンガが崩れ、壊されたような山にドライアイスの霧が、雲のようにかかっていました。あの作品は、風景画を違った視点から捉えたものだったのでしょうか?

そうですね、あの作品はすぐに山の景色が目に浮かぶと思います。
ビルの崩壊や建て替えで、レンガの山が大量に丘に積まれるんです。撮影の時に吸う、タバコの煙が遠くで雲のように見えたりして、絵で表現する奇妙な感じがしますが、同時にそれが融合して面白い物になると思ったんです。

他には、龍が飛び出てくるようなインスタレーションもあります。縦2メートル、横6メートルに及ぶ、セメントで作った巨大なものでした。どうして龍なのか。龍は巨大ですし、リアリスティックな形をしていて、オーディエンスの視覚を通して感情を呼び覚ましえるようなものだと思ったからでしょうか。

龍を選んだ理由は、龍という生き物は中国だけで語られているイメージだからです。大昔には、龍は神秘的な生き物ですが、僕の作品では実際に生きている、現実に存在する動物として表現したかったんです。セメントは今の中国の住宅建設を反映させているのですが、この社会的な現象についてはコメントはするつもりはありません。良いか悪いかはそれぞれの判断ですからね。

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これからの計画や挑戦してみたい事などあれば教えてください。

特にまだ決めていません。様々な事に挑戦したり、先行き不透明な感じが好きなのです。ビジネスに興味はないですし、広告関係の仕事を辞めたのも、その仕事から、自分の5年先や、ましてや10年先まで見えてしまうのが嫌だから。将来が見えてしまうと、突然人生に意味がないように思えてしまうんです。そんなわけで、最終的にアートの道を選んだのでしょう。将来の事は未定ですが、その予測不可能な未来が良いですし、何も恐れることはありません。僕が死の床につき、目を閉じる前に様々な事柄が鮮やかに思い出されるでしょう。全ての出来事は、価値のあるものだと心から信じています。短く言うと、自分に真摯に生きていけば、必ずそれは返ってくる!という姿勢でいたいです。

Yang Yongliang artificial solo exhibition in Wonderland
会期:2010年4月30日〜6月8日
会場:Gallery 18
住所:4th Floor, 18 Shandong Road, Shanghai
電話:+86 21 6323 8099
http://www.yangyongliang.com

Text: Emma Chi
Translation: Junko Isogawa

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