TARO HORIUCHI

PEOPLEText: Monika Mogi, Brian Weiland

若々しく変革の精神に富んだ新しい才能として日本のファッション業界に急浮上してきた28歳の新星、TARO HORIUCHIのデザイナー、堀内太郎。その短いキャリアの中で、既に彼はディーゼルとのコラボレーションを果たし、現在2度目のコレクションを大成功のうちに終えている。「Void(空虚)」と名付けられた2010年秋冬コレクションでは、ディテールな装飾とミニマルな組み合わせで、彼の高い才能を紹介した。彼の手掛ける作品は、経験値だけでは計れないそれ以上のものを呈している。遠くからみると、冷たいグレーと白の空間に素敵な黒い服が展示されているように見える。しかし、よく近づいて見ると、繊細なラインのコートは、ジャケットの襟による星形のような細かなディテールを伴っていたり、カーブが美しいフードはスカートに縫い込んであったりと、単なる黒い服以上のものであることがよくわかる。ジュエリーは、主にシンプルなトライアングルやオーバル・アイのデザインで、彼のデザインする黒い服に良く馴染み、現代的で儚い雰囲気を醸し出している。一時的であること、トレンドの切迫感は、何も悪いことではない。それは、彼のコレクションを際立たせ、バイヤーに永遠なものではない、現在進行形なものであることを気付かせてくれる。堀内氏にインタビューを行い、洋服、ジュエリーや彼の思想について話を聞いた。

ae46b1f460ee46f789c27b264a6cb421-771x1024.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

前回のテーマは真実、自然、そして時間でした。非常にミニマルなデザインに、グレーの色使いでしたね。今回のテーマは空虚ですが、このテーマをどのように表現したのですか?

今回のテーマは、私が感じたことから生まれました。ちょうどヨーロッパから戻ってきたばかりで、私は東京という場所を、常に混沌としていて色々な出来事が起こっている場所だと感じたのです。しかし同時に、東京は空っぽだとも感じました。「空虚」という言葉には否定的な響きもありますが、私はそれをもっと美しく表現したかったのです。この言葉から私が想像したのは、ブラックホールのようなものでした。ブラックホールは、無であるのと同時に全てを含んでいます。黒い空虚が全てを包み込み、静かな美しさがその中に存在すると考えています。また、今回、私は初めて黒を扱いました。黒は全てを含み、その内には微細なディテールがあります。私が考えるファッションとは、外界とのコミュニケーションであり、それゆえ私は、自己とコミュニケートするような何かを創りたかったのです。

TARO4.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

あなた自身の作品を、アートだとお考えですか?それとも機能的でもあると思いますか?

機能的なものとして考えています。また、いかに着る人が心地よいかを考えて制作しています。今回のコレクションでは、スーパーオーガンジーのようなとても軽い素材も使用しています。

TARO2.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

あなたがデザインに用いる色は、シンプルでミニマルなものが多いですね。なぜ彩度のない色を選ぶのですか?また、好きな色はありますか?

私は、黄色や赤のような鮮やかな色が好きです。しかし私のキャリアは始まったばかりなので、最初は黒やグレーのようなシンプルな色から始めたかったのです。

今回のコレクションで用いた特別なテクニックを教えて下さい。

内側にラインをプリントしたり、幾何学模様の刺繍を敢えて手作業で行いました。とても技術性の高い素材の融合をしていますが、それを説明するのは難しいでしょう。ほとんど全てオリジナルの素材を使っています。

TARO1.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

グラス・オーガンザの素材を用いた作品が秀逸でした。このテクニックを用いた経緯を教えていただけますか?

シャネルがこれを用いたことがありますが、あまり多く使われてはいない素材です。これは日本の技術力が生み出した素材で、非常に素晴らしいものです。今回のコレクションでは重い素材のものもいくつか創りましたが、私はとても軽くて動きやすいものも創りたいと考えていました。そしてグラス・オーガンザの生地がとてもよく馴染んだのです。

一番好きな作品は何ですか?また、一番人気が出ると思うものはどれですか?

私が一番好きなのはスポーツパーカーです。私の作品は素材と、ラインを作り出す縫い合わせの技術がとても高価なので、どれが一番売れるかは分かりません。

THa3.jpgTHa2.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

東京では今、H&M、Forever 21、ユニクロなどが人気ですね。ファストファッションがこの業界にどのように影響するとお考えですか?

ファストファッションに限らず、真の「創造」はすべて残っていくものだと思います。そして、そうでないものが淘汰されていくのではないでしょうか。

日本のファッション業界で、好きな面と嫌いな面を教えて下さい。

この業界ではいまだに、年長者が決定権を持っています。時代は変わってきているのです。かつてこの業界が取りいれたアメリカ的なスタイルは崩壊してきています。だから私たちが独自のスタイルを新たに創りだし、日本のファッション業界を確たるものにしていけるのではないでしょうか。

20cfce153c6dcbd30dc35695758066ae-1024x682.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

アメリカ的なスタイルのどういった点が日本に不向きだと思いますか?

日本は、必ずしも大量生産に向いている国ではないと思います。

日本のデザイナーとしてあなたが、この業界に今起こっていることを象徴していると思いますか?

そう思います。日本には近年本当に優れたデザイナーが生まれていませんが、それが変わってくることを望んでいます。

041c8e89b678b46731ac2144bc87c2e7-1024x682.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

ジュエリーについて、お聞かせ下さい。

ジュエリーは、「パーソナル ラグジュアリー (Personal Luxury)」をコンセプトに昨シーズンから始めました。ジュエリーの多くは、ルビーやダイヤモンドなど希少価値のある石を使っているため、はじめから宝石としての価値を持っています。私は、“ラグジュアリー”のもっと違った側面を見つけたいと思いました。幼い時は皆、何か好きなものがあっても、なぜそれを好きなのか理由は分かりません。でもそういう感覚がその人にとっての「Personal Luxury」なのだと思います。私はそのことに立ち返りました。そこで荒川に行って河原の石を選んできたのです。川の小石は何千年もの時間をかけて、水の力で形を変えるものです。だからひとつひとつ違った形をしています。また、どの石を選ぶかは十人十色ですし、人の個性をはっきり示すので見ていて面白いです。

49ef72b19c9b2addea8db508ca9b00b72-1024x682.jpg
Taro Horiuchi A/W 2010 collection – “Void” © Taro Horiuchi

ネックレスは、石に穴を開けて作っているのですか?

いいえ、石は簡単に割れてしまうので、とても特別な技術を使っています。日本でこれができる人はあまりいません。私は探して、ある男性を見つけました。彼は大学で石について教えており、趣味としてジュエリーを制作していました。彼がこの技術を身につけたのです。

あなたが使っている、変わった形の真珠について教えて下さい。

これも「パーソナル ラグジュアリー 」と同じアイディアです。真珠は、とてもなめらかで丸くあるべきとされており、それが真珠の値段を決める要素です。しかし真珠をよく見ると、正しい形でないものもたくさんあります。私はそうしたものの方がむしろ面白いと思ったのです。

堀内太郎は確実に素晴らしい何かを成し遂げた。ファッションについて十分な知識がない私たちでも、TARO HORIUCHIの今回のコレクションからはその素晴らしさが見て取れる。個人的にわかったことは、堀内氏は、単なるファッションデザイナーではなく、ビジュアルアーティストでもあるということ。風景写真がプリントされたグラスオーガンジーの作品から、密かに動物や幾何学模様のある裏地まで、彼の作品は、ストリートに出て着用するよりも壁に飾ってみたいと思えるものばかりなのだ。

TARO HORIUCHI
住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-13-21 LUCERIA #OD
TEL:03-6804-8372
http://www.tarohoriuchi.com

Text: Monika Mogi, Brian Weiland
Translation: Shiori Saito

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE