
テーブルウェアが踊り出す。不思議の国の食器達。
見れば誰もが顔に微笑みを浮かべてしまう、その今にも動きだしそうな、愉快な姿形をした食器達。そんな食器の魅力に引きつけられるように、SHIFTはそのデザイナーにインタビューを試みた。オランダ在住のそのデザイナーの名前は、ヨリネ・オーステルホフ。ヨリネによるおとぎの世界へようこそ!
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自己紹介をお願いします。
ヨリネ・オーステルホフ。1981年オランダ・ハーグ出身です。幼少時からファンタジーやシュールな物語と同時にアニメ、キャラクターや陶芸にも特に興味を持っていました。その興味が今も続いているというわけです。私が手掛けるのは、モノに停止した物語を作り出したり、家族のある製品やユニークな物達を作ることです。2005年にアーネム芸術デザインアカデミーを卒業。同年に自身のデザインスタジオ「JORINE」を設立し、現在もオランダ・アーネムを拠点にクライアントワークや個人のプロジェクトを制作しています。
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Buffalo, Dear Deer. Puhlmann
最近手掛けた作品やプロジェクトをご紹介下さい。
展覧会では、オランダ・デザイン・ウィーク 2009の会期中に、アイントホーフェンにある「MU」にてグループ展「ペーパー・ズー」に参加しました。そこで私は、トランプからチョウチョを作るシリーズ「ロイヤル・フラッシュ・バタフライ」コレクションを発表しました。
これまでに「ディア・ディア」というプロダクトのデザインを手掛けた、アムステルダムを拠点にしているブルマン社のプロジェクトでは、新たに4種類のコートフックと、2種類の貯金箱、鳥をモチーフにしたクリップとマグネットのコレクションを制作しました。もう間もなく店頭に並ぶ予定です。
スイスのミュゼ・カルージュによるコンペでは、「ホットカップ」というソーサーが保温の役割を持つ、ティーカップとソーサーのセットをデザインしました。
他にも多数制作途中のプロジェクトがある中で、あるフェアトレード企業ためにデザインした18ピースからなるテーブルウェアセットのデザインというのがあります。このプロジェクトでは、エグバート・ヤン・ラムと共にベトナムを訪れ、ハノイの近くにあるバチャンという村にある陶芸工場と協力して制作しました。
また、カナダの「Imm Living」のために手掛けている最新プロダクトに、ギフトショップや博物館のショップで取り扱うカップのシリーズがあります。この次には、テーブルウェアの新作を手掛ける予定です。
プロダクト・デザインを手掛けるようになった経緯や理由を教えて下さい。
子供の頃からもの作りに興味があり、大好きでした。当時確かだったのが、アートスクールに行きたい、ということでした。プロダクトデザインを選んだのは、後のことです。
プロダクトは、生活の一部となるので好きですね。日常の活動を手助けしてくれますし、特別なものにもしてくれます。特別なディナーウェアがあれば、ただの夕食がごちそうに変身しますよね。特別な空気感を捉えることが、自分のデザインの中で取り入れようとしていることなんです。
機能や美、ディテールに取り組むこと、再生産しやすいプロダクトを作ること、簡単に生産できる製品作りを考えること、これらのことが、プロダクトデザインという仕事を魅力的なものにしてくれるし、チャレンジ精神を駆り立ててくれます。
作品をいくつかご紹介ください。

Tea Times
「ティータイム」は、キャラクター設定したティーセット。家族を構成していて、ピースそれぞれに個性があります。キャラクターの様相を呈したティーセットは、今にも動き出しそうで、まるで小さな国の兵隊のように、テーブルの上で息づいてるかのようです。不思議の国のアリスのようなシュールな時間を作り出しています。

Cafe Pompose
「カフェ・ポンポーザ」は、カプチーノカップ、エスプレッソカップ、リステロットカップによる構成のコーヒーセット。カップには風刺的な個性があります。例えば、カプチーノカップは、太ったレディ、エスプレッソカップは、誇り高き威厳のあるジェントルマン(だけど隣の妻よりも、おかしなほど背が低い)、リステロットカップは2人の子供、といった具合です。
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Hotel Dinnerware, Tableware for Private Jets, De Ster, 2007
「ホテルディナーウェア」は、シックなホテル、プライベートヨットやジェット向けにデザインした、46ピースのディナーウェア。「ティータイム」から派生した、この全ピースも、それぞれ異なるキャラクターからなり、朝食、ランチ、ディナーなど、どんな食事もごちそうに変えてくれます。この食器セットは、ディナーセット、朝食セット、ティーセット、コーヒーセット、アジアンセット、リキュールセットから構成。また、磁器製のカトラリーやグラスも特別にデザインし、完璧なディナーウェアを提案しています。

Babushka glass, 2008
「バブーシュカ・グラス」は物語のあるグラスウェア。それぞれのグラスにストーリーがあります。重ねて置くと模様が透けて見えるようになっていて、毎回異なるストーリーを展開できます。

Birdclip, Puhlmann
ブルマン社のためにデザインしたプロダクトがいくつかあり、それらは認識しやすいイメージだったり、動物の形をしているものが多いです。ディア(鹿)の形をしたコートフックの「ディア・ディア」は成功し、バッファロー、アヒル、馬、ブタやウサギのコートフックも子供向けのラインとして展開しました。また、ブタの貯金箱ならぬ、ハムスター貯金箱やリス所金箱の他、バースデーカードをクリップするための鳥をモチーフにした「バードクリップ」のデザインも手掛けました。このバードクリップは、電線にとまっている多数の鳥をイメージしています。もともとは「バードマグネット」のアイデアを引き継いだもの。
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Hotcup
「ホットカップ」は、カップがソーサーの中にぶら下がる形で対になっているもの。その間にある空間が2つを隔離しています。そうすることで、ソーサーは暖かいブランケットのような役割を果たし、飲み物の保温効果が生まれます。
あなたのデザインするプロダクトには不思議な物語があるように感じます。それぞれのデザインにストーリーを展開しているのですか?プロジェクトを手掛けていく上で一番重要なことは何でしょう?
自分のデザインでストーリーを語るのが好きです。特に、一時停止した物語。既存の物語を使ったり、そこに新たな物語を加えることもあるし、自分で作った物語の時もあります。自分のデザインで伝える物語は、初めて目にする時に明確なものでなければなりません。空気感みたいなものです。
シリーズで展開するのが好きで、家族のように捉えてプロダクトの制作を行います。こうすると、よりストーリー展開をしやすくなりますね。

T(r)eacups
作品を制作する上でインスピレーションとなっているものはありますか?
インスピレーションはいろんなところにあります。大抵は日常やファンタジーストーリー、自然の中に見つけますね。特に自然の不思議だったり、動物が群れてどう生活しているか、群れの中の異なるキャラクターなどコミュニティーの形に興味があります。また、特別な風土のもと生活する動物や、厳しい環境のもと生きるのに進化した動物の群れ、人間が作りだした環境に自分達を適合させている動物などにも興味があるのです。
そのことは私のデザインから見て取れると思います。プロダクトに魂を吹き込むようなキャラクターを取り入れるのが好きで、その役割を果たすキャラクターを設定していきます。
何(誰)から影響を受けていると思いますか?
ボーイフレンドのエグバート・ヤン・ラムです。彼の批評はとても大切に思っていて、自分の作品について彼と話合うと、自分がまだ考えつかないことを気付かされます。それは本当に目からうろこですね。あと、私はとても頑固なところがあり、時にそれは良質なものを生んでくれます。
好きなものや人物を教えて下さい。
イームズが好きですね。彼らの考え方や息の長いエネルギーはとても興味深いです。他に好きなアーティストは、マシュー・バーニー、カタリーナ・フリッチュ、ダミアン・ハースト、レイチェル・ホワイトリード、イ・ヒョングなど。
でもそれは、デザインにおいて手本としている訳ではなくて、他の作家の作品を見るのが好きなのです。インスピレーションとしてではなく、どんなことやっているのかをもっと見てみたくて。作品作りにおいては、自分のことをすることが唯一必要なことなんだと思っています。
とても影響を受けた特別な本があります。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」です。彼の変なものの考え方や疑いで全てを捉えることや、長く受け継がれているその原理などが好きです。キャラクターも素敵ですよね。他に好きな本は「ネバーエンディングストーリー」で、見ての通り、ファンタジーのお話が好きですね。
また、クレイアニメーションはインスピレーションの源となっています。1秒の映像を作るのにどれだけの作業が必要なのか、自分でクレイアニメーションを制作したことがあります。アードマンは好きなアニメーションスタジオのひとつです。顔の表情や性格の表現が素晴らしいですね。
尊敬する人は、自分に命懸けの人か、無力な動物の救助を命懸けでやっている人です。また、ボーイフレンド、母、父、姉妹も大好きな人達です。
オランダは、家具やインテリア製品など、プロダクトデザインでとても発展している代表的な国のひとつです。オランダのデザインシーンについてどう思いますか?
ダッチデザインは、明確で、落ち着いていて、論理的な製品と言われていて、そんなダッチデザインを有名にしたデザイナーには、ドローグ、マルセル・ワンダース、ユルゲン・ベイ、ハイス・バッカーなどがいます。私たち若手は彼らの恩恵を受けていると言えますね。例えば、アートやデザインでは素晴らしい教育を受けることができます。たまに、オランダ人デザイナーであることの便益を感じることがあります。外国の人の中にはオランダ人デザイナーが好きな人もいて、そのことが、ある種の即効性のある質をもたらしてくれます。ビジネスの上では、そのようなことは関係ないでしょうけど。
また、デザイナーが、人気のある職業になりつつあります。年々世界中でデザイナーを目指す卒業生が増えていて、新しいデザイナーが増えていることから、著名なデザイナーになるのが段々難しくなってきています。私のゴールはそこにはなくて、自分のことをやりつつ素敵なプロダクトを作っていきたいと思っています。
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Koppen, 2006
もうひとつ、コラボレーションしているデザインカンパニー「フリークス・ユナイテッド」について教えてもらえますか?
「フリークス・ユナイテッド 」は、2006年にエグバート・ヤン・ラムと共同設立したデザインカンパニーです。当時、私たちの友人がグレイトーンズ2006というプロジェクトの展覧会「ヒューマン・フリークショウ」のためのプロダクトをいくつかつくってほしいと頼まれたのが始まりです。その制作に協力したことがうまくいきました。どちらかというと、エグバート・ヤンは技術者で、ヨリネはストーリーテラー。そのことがとても面白い作品を生み出しています。これまでに、ファーストクラス向け機内テーブルウェア、カナダのクライアントのインテリア製品やギフトウェア、フェアトレードのテーブルウェアなどを手掛けてきました。一緒に作業するのは気分転換になりますね。双方が好きなプロダクトを一緒に手掛け、お互いに譲歩しつつ、影響を与えたり受けたりしています。
今後はどのようなことを展開していきたいですか?
セラミックはたくさんの段階を有する素材です。だからとても学ぶことが多く、私はまだ基礎の段階にいます。自分のデザインをつくるのに十分ですが、もっと陶芸を追求するのにもっとたくさんの事柄があります。ノウハウを広げて自分のデザインの可能性を広げていくためにもっと学びたいと思っています。新作の制作の際に学んでいます。
今後は、ローゼンタール、ニンフェンブルク、ウェッジウッドなど大手陶器メーカーと一緒に制作していきたいです。良いデザインを作り、複製し、より多くの人の手元に届けたいです。あと素材としてはガラスにも興味ありますね。
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Left Overs Tableware
今後の予定を教えて下さい。
最新作は、「ホワイトラビット・テーブルウェア」シリーズ。磁器でできる様々な色を使用してみた作品です。磁器には様々な種類の白を表現するのが可能です。セラミックデザイナーにとっては、出来るだけ白い磁器に近づくことがゴールでもあるのです。それには特別なトリックや技術があって、それは皆秘密にしているんです。
このシリーズでは、ひとつのテーブルウェアセットにあらゆる白の磁器を取り入れてみました。楽しく、ユニークなものとなりましたね。それぞれのセットはランダムに成型されるので、最終的にはそれぞれ異なるセットとなります。
「レフトオーバー・テーブルウェア」シリーズは、食べ物で遊ぶテーブルウェアです。ディナーが素晴らしい盛りつけで出されます。でもその良さは、ほんの数秒のこと。食事を食べ始めれば、その盛りつけは崩れるでしょう。このシリーズのお皿やボウルにはレリーフが施されていて、食べていくと、お皿にかかったジュースやドレッシングなどの液体によりレリーフが露になります。ディナーを食べ終わってもお皿は素敵な状態を保つことができるのです。
これは現在手掛けているほんの一部です。他にもコレクションのカラーバリエーションの制作など多くのプロジェクトを行っています。
Jorine Oosterhoff
住所:Statenlaan 8, 6828 WE Arnhem, The Netherlands
TEL:+31(0)26 4435349
info@jorineoosterhoff.nl
http://www.jorineoosterhoff.nl
Text: Mariko Takei