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第7回 ブラジリアン・フィルム・フェスティバル

8月始めの1週間、ニューヨークはブラジル的な一面を現す。そして、トライベッカ劇場で開催の第7回ブラジリアン・フィルム・フェスティバルで判断するに、距離だけではブラジル文化の活気を感じることと、マンハッタンを切り離すことはできないようだ。フィルム・フェスティバルの間、オーディエンスは笑って、歌い続け、最後にサウダージ(ポルトガル語で郷愁)もしくは、一番感傷的な感情表現から生まれる悲しみの類いで満たされた劇場を後にした。

サンバを私たちに伝えた国であることから想像されるように、多くの映画が音楽に関するものだった。たとえ、そうでなかったとしても、映画はブラジルのものとされる特有のリズムをにじみ出していた。主要上映作品13作の内、ほぼ半分がドキュメンタリーだ。そこには、同フェスティバルのクリスタル・レンズ・アワードを受賞した「ロキ – アルナルド・バチスタ」(オス・ムタンチスというバンドのリーダー、アルナルド・バチスタに関する伝記映画)も含まれる。

1週間のフェスティバルを通して劇場は満員で、何カ月も公式に配給される予定のない映画を一見しようという客が外で心配そうに列を成した。観客の会話の大部分はポルトガル語だったが、今年のフェスティバルのキュレーターは、ニューヨーカーを満足させるに足るブラジル文化を紹介し、ブラジルへの新たな旅行客のハートを掴むものを提供した。

すべての映画祭がそうである様に、すべての映画を見ることは不可能だったが、ここに私が見た映画のレビューを紹介する。

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「ブダペスト」ウォルター・カルバーリョ監督
「ブダペスト」は、ブラジルの詩人で作詞作曲家のシコ・ブアルキによる人気小説に基づいた、不思議な現実主義者の物語。言語と文化的変容がどのように人の人生を再定義できるかというストーリーだ。ゴーストライターのホセ・コスタは、サンパウロで報われない存在としてぼんやりと過ごしている。思いつきでブダペストに旅立ち、“悪魔が尊重する唯一の言語”に遭遇し、しわがれた音に満ちたハンガリー語が、ホセの人生と退屈な文章を生き返らせる。ホセが、ブダペストで女性や詩と出会う場面はとても生命感を感じさせ、見る人はこの物語が自伝的だと思わずにはいられない。
スクリーンの前に顔を出したウォルター・カルバーリョ監督は、迷路のような台本に従いつつ、ハンガリーの特色と文化のニュアンスを鮮やかに捉えた。この映画はすでにブラジルで大ヒットし、ブダペストの人もきっと同様に気に入るに違いない。


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「Simonal, No One Knows How Tough It Was(シモナール、どれだけ大変か誰も知らない) 」クラウディオ・マノエル、マイケル・ランガー、カルヴィート・リール監督
世界的に賞賛されたエンターテイナーから残念な隠遁者へと変貌を遂げた、ウィルソン・シモナールの悲劇人生は、ブラジル人にはよく知られている話だ。世界の他の国々にとって、この徹底して製作された彼の人生のドキュメンタリーは、ブラジルの独裁時代にいた少数派が名声を得るのに限度があることを教えてくれる。
黒人で貧しい暮らしの中で成長したシモナールは、人生において成功しないだろうとわかっていた。しかし、彼が後で呼ばれるように、「シモーナ」は彼の星が明るく輝いていることをすばやく悟る。彼は、驚くべき声を持ち、ブラジル人がこれまでに一度も聞いたことがないような、群衆をコントロールできる抑えきれないようなカリスマ性をもっていた。シモーナが現れる以前、ブラジルの黒人の歌手は、「サンビスタ」か、サンバの歌手しかいなかった。シモーナは、群衆を立ち上がらせるために、サミー・デイヴィスJr.から手がかりを得て、ラット・パックのスタイルでオーディエンスを楽しませる先駆けとなった。「アレグリア、アレグリア」や「ハピネス、ハピネス」がシモーナの有名なリフレインだ。偉大な微笑とスラップスティクの一服で、彼は南米のすべてを魅了した。彼の名声は想像を絶する富を彼にもたらしたが、ちょうど黒人にとって空前のレベルに達したように、彼はすぐに堕落してしまう。今だに議論される出来事で彼は一変し、社会ののけ者になり、スポットライトを浴びることがなくなってしまった。彼はおよそ20年近く、アルコール中毒となりその苦難から逃避した。
本作は、シモーナの遺産を新しい観点から解明し歴史にメスを入れる。彼の音楽を一度も聞いたことがないという人々でさえ、このドキュメンタリーを見て、シモーナが、彼自身がしばし恐れていた「ブラジルの音楽の歴史から消されないこと」を確信しているのだ。


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「ワンダリング・ハート」フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ監督
カエターノ・ヴェローゾの曲「Coração Vagabundo(コラサォン・ヴァガブンド)」にちなんで名付けられた「ワンダリング・ハート」は、ブラジルの最も有名なミュージシャンであるカエターノ・ヴェローゾと共にする、ある日の1時間を収録したドキュメンタリー。この作品は、カエターノが英語の歌のみ収録したファースト・アルバムを発表後、サンパウロ、ニューヨークのカーネギー・ホール、日本の3都市を巡るワールドツアーに参加するという1人の歌手の様子を追いかけている。この映画は、柔らかく誠実で美しく、カエターノの声の調子と似ているようだ。
カエターノにこれほど親近感を感じることができるのは珍しい。それも、日本の大阪城やニューヨークのイーストビレッジの道ばたなど、共通点のない場所なのにだ。そこで、カメラは、激動の1960年代のカエターノの日々や、彼の初めてのボサ・ノヴァの経験に郷愁にかられるカエターノを捉えている。カエターノの陽気なユーモアのセンスにもかかわらず、サウダージへの深い感覚が反響し、よりすばらしい親密さを映画に与えている。
本作は、30年前には人に「混乱させる」と言っていた反逆者の芸術家から、現在は「人々をだますのは好きではない」と言う勇気を持つ男性まで、全く反対の立場に立つカエターノを映し出している。この平静で内省的なフィルムはカエターノのペースで進行する美しい映画である。


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「ファベーラ・オン・ブラスト」レアンドロ・HBL、ウェズリー・ペンツ(DJディプロ)監督
あるリオの悪名高いスラム(ファベーラ)で、屋根の上に腰をかけている子供達の一群と共に「ファベーラ・オン・ブラスト」は幕を開ける。彼らは凧を揚げながら、テレビゲームを買う十分なお金がどうしてないのか話している。簡潔に喩えるチャンスはうまくいってないが、このドキュメンタリーはファンク・ミュージックがどうスラムのユース・カルチャーの基本となっているかについて説明することに成功している。
映画を製作したフロリダのDJディプロが、「バイレ・ファンキ」と彼らが呼ぶ彼のヘビーなベースDJセットにブラジルの音楽を吹き込み始めたのは、わずか数年前。そして、そのジャンルはブラジルで大きく成長。バイレ・ファンキ、またはファンクは、マイアミ・ベースのその骨格のようなハイハットとパウンディング・キック・ドラムを受け継ぎ、ブラジルのドラム・ブレークダウンと卑猥な歌詞をそこに付け加えた。初期のヒップホップのように、初期のファンクも面倒を起こさないものにすることに尽きたし、一般的に利他的なものだった。だが、ヒップホップのように、ファンクもまた次第にセックス、ドラッグ、および暴力であおられた音楽のジャンルに傾斜していった。しかし、リオではそれはある表現以上のものとなり、それはまさに彼らにとって「なんとかやっていく方法」となった。
この映画の中で、DJやMC、ストリート・キッズたちは、交代でナレーションし、時にある特定のスラム街についてのフォークソングを歌っている。ある場面では、老人が古いフォークソングを歌い、若者のMCがその歌にファンクなビートを被せてビートボックスする。映画の最も啓示的な要素のある場面では、瞬時にして、ブラジルのフォークミュージックの平凡なリズムと、エレクトロファンクとの間に流れるリズムの繋がりが聞こえてくる。
また、本作はビジュアルも絶妙だ。リオデジャネイロを見下ろす高い丘の斜面から、汗まみれのダンス・フロアの底まで、場面は流動的に動いていく。本質的に暗い、野外のファンク・ブロックパーティーは、少し美化され(時に、ミュージック・ビデオのようにやり過ぎの感あり)、一方で観客がしばしば自身の感情に困惑するほど、映画は十分リアルに制作されていた。
がっかりした点は、監督がファンクに関して厳密に何を言ったらよいかわかっていないのが明らかなこと。それは大げさなのか、不愉快なものなのか、またはチャーミングなものなのか。 たったの90分でリオの周りのスラムと同じくらい不規則に広がったジャンルを捉えるには、語られない話は多い。それでも、ファベーラ・オン・ブラストは、実際にリオに行かずとも可能な限りバイレ・ファンキの全体的な様子を紹介している。

7th Cine Fest Petrobras Brasil
会期:2009年8月2日〜7日
会場:Tribeca Cinema
http://www.brazilianfilmfestival.com

Text: Patrick Burns
Translation: Yuya Masumoto

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