第7回 ブラジリアン・フィルム・フェスティバル

HAPPENINGText: Patrick Burns

8月始めの1週間、ニューヨークはブラジル的な一面を現す。そして、トライベッカ劇場で開催の第7回ブラジリアン・フィルム・フェスティバルで判断するに、距離だけではブラジル文化の活気を感じることと、マンハッタンを切り離すことはできないようだ。フィルム・フェスティバルの間、オーディエンスは笑って、歌い続け、最後にサウダージ(ポルトガル語で郷愁)もしくは、一番感傷的な感情表現から生まれる悲しみの類いで満たされた劇場を後にした。

サンバを私たちに伝えた国であることから想像されるように、多くの映画が音楽に関するものだった。たとえ、そうでなかったとしても、映画はブラジルのものとされる特有のリズムをにじみ出していた。主要上映作品13作の内、ほぼ半分がドキュメンタリーだ。そこには、同フェスティバルのクリスタル・レンズ・アワードを受賞した「ロキ – アルナルド・バチスタ」(オス・ムタンチスというバンドのリーダー、アルナルド・バチスタに関する伝記映画)も含まれる。

1週間のフェスティバルを通して劇場は満員で、何カ月も公式に配給される予定のない映画を一見しようという客が外で心配そうに列を成した。観客の会話の大部分はポルトガル語だったが、今年のフェスティバルのキュレーターは、ニューヨーカーを満足させるに足るブラジル文化を紹介し、ブラジルへの新たな旅行客のハートを掴むものを提供した。

すべての映画祭がそうである様に、すべての映画を見ることは不可能だったが、ここに私が見た映画のレビューを紹介する。

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「ブダペスト」ウォルター・カルバーリョ監督
「ブダペスト」は、ブラジルの詩人で作詞作曲家のシコ・ブアルキによる人気小説に基づいた、不思議な現実主義者の物語。言語と文化的変容がどのように人の人生を再定義できるかというストーリーだ。ゴーストライターのホセ・コスタは、サンパウロで報われない存在としてぼんやりと過ごしている。思いつきでブダペストに旅立ち、“悪魔が尊重する唯一の言語”に遭遇し、しわがれた音に満ちたハンガリー語が、ホセの人生と退屈な文章を生き返らせる。ホセが、ブダペストで女性や詩と出会う場面はとても生命感を感じさせ、見る人はこの物語が自伝的だと思わずにはいられない。
スクリーンの前に顔を出したウォルター・カルバーリョ監督は、迷路のような台本に従いつつ、ハンガリーの特色と文化のニュアンスを鮮やかに捉えた。この映画はすでにブラジルで大ヒットし、ブダペストの人もきっと同様に気に入るに違いない。

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「Simonal, No One Knows How Tough It Was(シモナール、どれだけ大変か誰も知らない) 」クラウディオ・マノエル、マイケル・ランガー、カルヴィート・リール監督
世界的に賞賛されたエンターテイナーから残念な隠遁者へと変貌を遂げた、ウィルソン・シモナールの悲劇人生は、ブラジル人にはよく知られている話だ。世界の他の国々にとって、この徹底して製作された彼の人生のドキュメンタリーは、ブラジルの独裁時代にいた少数派が名声を得るのに限度があることを教えてくれる。
黒人で貧しい暮らしの中で成長したシモナールは、人生において成功しないだろうとわかっていた。しかし、彼が後で呼ばれるように、「シモーナ」は彼の星が明るく輝いていることをすばやく悟る。彼は、驚くべき声を持ち、ブラジル人がこれまでに一度も聞いたことがないような、群衆をコントロールできる抑えきれないようなカリスマ性をもっていた。シモーナが現れる以前、ブラジルの黒人の歌手は、「サンビスタ」か、サンバの歌手しかいなかった。シモーナは、群衆を立ち上がらせるために、サミー・デイヴィスJr.から手がかりを得て、ラット・パックのスタイルでオーディエンスを楽しませる先駆けとなった。「アレグリア、アレグリア」や「ハピネス、ハピネス」がシモーナの有名なリフレインだ。偉大な微笑とスラップスティクの一服で、彼は南米のすべてを魅了した。彼の名声は想像を絶する富を彼にもたらしたが、ちょうど黒人にとって空前のレベルに達したように、彼はすぐに堕落してしまう。今だに議論される出来事で彼は一変し、社会ののけ者になり、スポットライトを浴びることがなくなってしまった。彼はおよそ20年近く、アルコール中毒となりその苦難から逃避した。
本作は、シモーナの遺産を新しい観点から解明し歴史にメスを入れる。彼の音楽を一度も聞いたことがないという人々でさえ、このドキュメンタリーを見て、シモーナが、彼自身がしばし恐れていた「ブラジルの音楽の歴史から消されないこと」を確信しているのだ。

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