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プリマベーラ・サウンド 2009

HAPPENINGText: Julio Cesar Palacio

2009年、他国と同様、大きな経済危機に見舞われたスペイン。その影響もあり集客数の減少が懸念されていたが、驚くべきことに今年の「プリマベーラ・サウンド」に過去最高の8万人もの観客が足を運ぶ結果となった。主催者側も恐らく、このような事態は予想していなかったに違いない。実は、これには2つの事実が関係している。一つは、プリマベーラ・サウンドと並ぶ音楽フェスティバルである「サマーケース」が、一連の経済情勢により中止になったこと。そしてもう一つ、これだけの観客が押し寄せてくることになった最大の要因は、恐らく今年のラインアップにあるだろう。
何と言っても今年はニール・ヤングマイ・ブラッディ・ヴァレンタインソニック・ユース、ジェイホークス」、そして旬の若手ミュージシャン達が一堂に会することとなった。見逃すわけにはいかない。

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Shellac

今年は、入場の際に小さな箱に入ったノイズリデューサーが配られた。これは今年のラインアップが、ノイズミュージックやエクスペリメンタル・ロック中心だからである。ライトニング・ボルトマジック・マーカーズシェラックオネイダサンジーザス・リザードなどの演奏を聴く際にはきっと必要になるだろう、という主催者側の配慮が感じられる。

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Magik Markers

憶えている限り、恐らく初日としては、今までで最高のラインアップである1日目の木曜日。
ショーはまさに最高頂の状態で始まった。昨年同様、オール・トゥモローズ・パーティーズ(ATP)がキュレーターを務めるステージもあり、フェスティバル全体でも最高のアーティスト達がこのステージに出揃った。
19時前、週末の期待のショーの一つ、ニューヨークを感じさせるサウンドを持つマジック・マーカーズが登場して来た。彼らのニューアルバム「Balf Quarry」の演奏が始まり、さっそく今年のフェスティバルも忘れ難いものになるだろうことを予感させてくれた。

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The Vaselines

ロックデラックス・ステージでは、再結成を果たしたグラスゴーのヴァセリンズが過去の数々のヒット曲を演奏してくれた。

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Lightning Bolt

同じ頃、ATPステージでは、ロードアイランド州の爆音ノイズデュオ、ライトニング・ボルトが素晴らしいショーを披露していた。ブライアン・チッペンデイルとブライアン・ギブソンの2人は、ドラムとベースがマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの様な大物バンドよりも、どれだけ大きな音で速く演奏できるかを見せつけてくれた。
フェスティバル自体がまだ始まったばかりだというのに、既に観客の中では一騒動起こっていた。が、ライトニング・ボルトの演奏が進むにつれて、それも収まっていった。本当に圧倒されるようなコンサートで、エネルギーに溢れ、大いに観客を楽しませてくれた。
メンバーである2人のブライアンは一見すると若く見える為、もし彼らの事を知らなければ若手バンドだと思うかもしれない。しかし、実際彼らは既に多くの経験を積んだベテランなのである。

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The Jesus Lizard

ロックミュージックのベテランといえば、ATPステージではデヴィッド・ヨウ率いるジーザス・リザードのメンバーが年齢を感じさせない演奏とパフォーマンスで観客を興奮の渦へと巻き込んでいた。
ステージと観客席との間にはだいぶ距離があった。しかしデヴィッドは気にする様子もなく、文字通り3度もステージの奥から勢いよく走り出し、観客の中へと飛び込んでいた。もちろん3度ともしっかりと受けとめられたので、地面にぶつかる事はなかったが。とにかく本当に見事なショーだった。

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Yo La Tengo

大音量で激しい演奏が続いた一日目にエストレヤ・ダムステージに現れたのは、いくつになっても永遠に若者の心を持ち続けるヨ・ラ・テンゴ。メンバー達は彼らの曲調に合わせるように、まず始めに観客全体を和ませ、一呼吸置いてから次々とヒット曲を演奏していった。彼らはいつでも素晴らしい音楽を聴かせてくれる。そう、いつでもである。

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My Bloody Valentine

そしていよいよ、エストレヤ・ダムステージに、待ちに待った瞬間がやって来た。イギリスの英雄マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの有名なアルバム「ラブレス」の演奏が始まったのである。観客は続々とノイズ・リデューサーを耳にはめ、素晴らしい演奏に聞き入っていた。ただ、このショーは良い音を出す事よりも大きな音を出す事により重点を置いているようだった。確かに彼らの演奏は遠くまで響き渡っていたが、あまりに大きすぎて曲がうまく聴き取れない事もあったし、屋外でやるにはあまり良い方法とは言えないのではないだろうか。

若手バンドのステージも見たくなり、ボルチモア出身の新人バンドポニーテイル・チューンズが自身のアルバム「アイスクリーム・スピリチュアル」を引提げ演奏するピッチフォーク・ステージへと向かった。バンドは常にステージ上で動き回り、観客も演奏中ずっと一緒になって踊ったり飛び跳ねたりして楽しんでいた。

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Wooden Shjips

ガレージロック、サイケデリアなどジャンルを超えた独創的な音が魅力のサンフランシスコのウッドゥン・シップス。彼らのATPステージでの演奏を聴いて初日を締めくくった。

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