札幌ビエンナーレ

HAPPENINGText: Mariko Takei

札幌ビエンナーレ

「札幌ビエンナーレ」を実現するには、『街や自治体の現代アートに対する認識を深めたり、多くの人達の協力は不可欠で、様々な課題が残されている』とニーナは言う。そして『札幌のアートシーンは小規模で、若手アーティストの助成システムや作品制作の場を提供するプログラムなどがない。これらの基本的なサポートが札幌のアートの現場にはまず必要。また、アーティスト運営などスペースやコンテンポラリー・アートギャラリーがもっと市場の発展のためにも必要』と付け加えた。地域や自治体がどれだけアートに関心を寄せて協力体制を整えていくことができるのか?村おこしでも、お祭りでも、何かを盛り上げるイベントを行うときには必ず周りの協力が必要だ。それなくしては成立しえないアートビエンナーレだからこそ、芸術に対する街や人々の意識をコツコツと深く掘り下げていく地道な作業は不可欠だろう。

札幌ビエンナーレ

札幌ビエンナーレの出発点はまだ先にあるのかもしれないと、肩を落としていたところ、「札幌ビエンナーレ」構想の発起人とも言えるCAI現代研究所やアートギャラリー「CAI02」の代表で、自らもアーティストの端聡氏から、落ちた肩がググッと持ち上がっていくような希望に満ちたお話を聞くことができた。

周囲のコンセンサスを得るのを待ってからビエンナーレ開催をしようと思ったら100年や200年経っても難しいと言う端さん。第1回より第2回と、回を追うごとに周囲から認知されているのが、横浜トリエンナーレの現状でもあり、札幌での開催もまたしかりという訳だ。端さんは「創造産業としての地域産業の活性化」「若手アーティストの育成とその着地点を作ること」「観光産業としての芸術を見直すアートツーリズム」」の3つの視点を柱とした土台の上に札幌ビエンナーレの重要性というものが浮かび上がってくると言う。

『この100年に一度と言われている世界的不景気な状況が進む昨今、従来の産業が停滞している中にあっても、面白いことにアーティストだけは不思議と活動しつづけています。しかもアーティストはどこか作品を発表する場があれば、地域住民とうまくコミュニケーションとれる術を持っている。アーティストやデザイナーが空きスペースをうまく利用している例を一般市民にアピールできれば、入居を促すことができ、それは地域に段々広がっていく。目立ち始めている空きテナントを文化芸術イベントで有効利用することが、新しい創造産業を促していき、結果地域産業の活性化と結びつくと考えます。』と端さんは言う。

クリエイティブな活動が地域の産業をバックアップできるとすれば、その逆もしかりで、双方向の発展にも繋がりそうだ。もちろんこれには行政の協力もさることながら、その創造産業をこれから担っていくであろう若手アーティストやデザイナーが地域に根付いていく環境も必要不可欠となる。クリエイターが育っていく教育の場と、北海道や札幌を拠点に活躍できる実践の場=着地点を作るのを手助けするのが札幌ビエンナーレなのかもしれない。

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