ベルリン・ナイト・クラブ

PLACEText: Shintaro Miyazaki

オートマーテンバー(2001~2004年)は、かつてベルリンの前衛たちが集った場所だ。オートメーション化された文化の保存と分析の促進を目的に、ヴィゾマートのようなメディア空間アーティストのグループによる構想で始まったバーである。ベルリンのミッテにあったこのクラブは、今でこそエレガントなブティックになってしまったが、かつては完全にオートメーション化されたバーだった。改造とプログラミングを施したコーヒーの販売機が、ドアを制御し、部屋全体を監視し、オーディオ・ビジュアルのジュークボックスを動かす。それによって、無料でDJの音楽とVJの映像が楽しめる。そして、会員は磁気カードをドアにかざして入場するというシステムだ。

四方幸子によってキュレートされたドイツと日本を結ぶメディアアートプロジェクト「モブ・ラブ」のメンバーであるテレマティックもまた、このメディア空間アーティストのグループの鍵となっている。そして、ミウォンもまたこの面白いバーによく訪れる客の一人だ。彼は、シュロム・シュヴィリ(マンチェスター)とタデウス・ハーマン(ベルリン)の運営するインターナショナル・レーベル・シティー・センター・オフィス(CCO)より、自身のセカンドアルバム「From A to B」を発売したばかりだ。

ミウォンは、今最も勢いのあるベルリンエレクトロニカアーティストの一人で、この記事に際してインタビューに答えてくれた。CCO経営者のシャデウス・ヘーマンは、エレクトロニカのライフスタイルを提案する「デバッグ」という雑誌の編集長でもある。また同時に、タケシ・ニシモト(I’m not a gun)、ポルノ・ソード・タバコ、ディクタフォン、ディーゼル+ヒュン、スタティック、そして先ほどのミウォンなど、エレクトロニカレーベルに所属するベルリンアーティストの親的存在でもある。シュロム・シュヴィリは、ブームキャットとイギリスのレコード配布元ベイクド・グッズの創設者だ。

ミウォンは、他の有名なベルリンのエレクトロニカレーベルに、スケープモニカ・エンタープライズストーブゴールドモール・ミュージックルックス・ニグラonpa )))))カラオケカルク(org. from Cologne)などを挙げてくれた。

このようなレーベルのアーティストたちがブラつくところと言えば、大抵静かなレコード屋だ。個人経営のレーベルにとっては厳しい時代だが、生き残っているレーベルもある。スタールプラートデンスハードワックスなどはその中でもしっかりとした地位を確立しているレーベルで、それぞれ微妙に異なった志向を持っている。スタールプラート(プチ・ミニオン)はより実験的だし、デンスはよりエレクトロニックで、ハードワックスはダンスミュージック寄りだ。

ミウォンは、「あなたのルーツは?そして他のベルリン・エレクトロニカアーティストとのネットワークはどこで作ったのか?」という質問に対して、「ベーシック・チャンネル」と答えている。ベーシックチャンネルは、ベルリン・エレクトロニカがミニマルテクノと一緒になる場所でもある。モリッツ・フォン・オスワルドの最新のプロジェクトは、ミニマルテクノとクラシックを衝突させた作品「Re-Composed」である。彼とカール・クレイグは、この作品でカラヤン率いるベルリンフィルハーモニー管弦楽団の音源をサンプリングし、ラヴェルやムッソグスキーのリミックスを作り上げた。ベルリンの伝統と革新が出会う瞬間だ。

ベルリン・エレクトロニカと現代のベルリン在住日本人のライフスタイルについてのポットキャストはこちら。

Text: Shintaro Miyazaki
Translation: Tatsuhiko Akutsu

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