ビクトリア・ミロ・ギャラリー

PLACEText: Aron Mörel

ビクトリア・ミロは1985年にコークストリート(メイフェア地区に位置する歴史的なロンドンアートシーンの中心部)にオープンして以来、イギリスのアートシーンにおいて最も影響力のあるモダンコマーシャルギャラリーの一つとなっている。コークストリートは、英国王立美術院の目の前を走る通りで、コマーシャルギャラリーが立ち並ぶ画廊街としてロンドンの中心部で名高い通りである。しかし、そのような歴史の深い環境からこのビクトリア・ミロや、ホワイトキューブなどのギャラリーは大胆にもそのメイフェアを去り、ロンドンのイーストエンドにその拠点を移し、ロンドンにおける新しい現代アートの中心部としての地位を築いていったのだ。

ビクトリア・ミロ・ギャラリー

2000年にロンドンの中心部のいわば「お墨付きの」環境から転居を決めたビクトリア・ミロは、2006年の12月には隣のビルディングへそのギャラリースペースを約2倍に広げるまでに至った。れんが造りのビクトリア時代の工場を改築して作られた約1600メートル四方もの巨大なスペースは、建築と自然が調和し、見る側にはアートを鑑賞するための霊的な空間、そして作る側にはロンドン最大級のギャラリースペースを提供している。デザインの構想はクラウディオ・シルバートリンアーキテクト、ディレクションはマイケル・ドレインアーキテクトが担当したこの建築は、以前の建物の要素と現代アートを鑑賞するための空間とが見事に融合している。

ビクトリア・ミロでは、毎回現代アートシーンにおいて影響力のあるアーティストの展示が行われ、これまでにも名誉あるターナー賞のノミネートアーティストであるイアン・ハミルトン・フィンレイ、ピーター・ドイック、アイザック・ジュリアン、フィル・コリンズそしてその受賞者であるクリス・オフィリやグレイソン・ペリーなども展覧会を行ってきた。ビクトリア・ミロ彼女自身、現代アートシーンで活躍する革新的なアーティストに対する洞察力が高く評価されており、数多くの展覧会を通して若いアーティストを育てていることでもよく知られている。

ビクトリア・ミロでは現在、草間彌生の展覧会が行われている。一つの展覧会でギャラリー全体を使うのは、今回が初めてだという。まず入り口に入ると、気が遠くなるほど繰り返されるパターンが目に飛び込んでくる。そして45ものシルクスクリーンの新作、そして彼女自身の90年代の作品が並ぶ。

ビクトリア・ミロ・ギャラリー、草間彌生
Yayoi Kusama exhibition view

彼女のキャンバスを支配する形象的なイメージ。女性の顔の輪郭、唇や目の輪郭、不思議な有機体、蛇のような形をした物体、人形のような形。「私が昨日見た夢(A Dream I Dreamed Yesterday)」、「夢を見ている女(A Woman in a Dream)」、「無限の宇宙(Infinity Cosmos)」などのタイトルで表される不思議な世界に今にも気絶寸前だ。中を覗き込んでみると鏡の部屋が見え、無限に反射と分裂を繰り返す万華鏡のような視界が広がる2つ箱の作品なども並んでいる。

ビクトリア・ミロ・ギャラリー、草間彌生
Yayoi Kusama exhibition view

ギャラリーの上層部では、他の作品とともに「水玉強迫−無限の鏡の部屋(Dots Obsession – Infinity Mirrored Room)」の展示が行われている。大きく膨らんだバルーンが並ぶ作品では、水玉模様のバルーンそれ自身が水玉模様の一つの点となっている。一番大きなバルーンは中に入ることが可能で、いったん入り込むと自らが無限に広がる鏡の部屋の全面に映り、そんな姿を取り囲むのは中にある同じ水玉模様のバルーンたち。無限に度重なる宇宙へ引き込まれる感覚だ。

草間彌生展は2008年3月20日まで開催。

Victoria Miro Gallery
時間:10:00〜18:00(日・月曜日休廊)
住所:16 Wharf Road, N1 7RW London
TEL:+44 (0)20 7336 8109
http://www.victoria-miro.com

Text: Aron Mörel
Translation: Tatsuhiko Akutsu
Photos: Courtesy of Victoria Miro Gallery

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