キャンプ・ベルリン

HAPPENING

migrationするアーティスト達。

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人は様々な理由により故郷を離れて移り住む。経済的な問題により新しい仕事を探すもの、戦争等の被災によりそこでの生活を余儀なくされるもの、あたらしく人生の発展を求めるもの。自分自身の尊厳と活動の為に拠点を変えた人と言えば、20世紀に活躍した著名なアーティスト、先にはパブロ・ピカソ、マン・レイ、サルバトーレ・ダリ、はたまたジョナス・メカス、ナムジュン・パイク、等々。

今回紹介する展覧会「CAMP BERLIN」は「migration (移住、移動)」をテーマとしたプラットフォーム型の展覧会で、広島アートプロジェクト実行委員会が主催の下、広島市立大学ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学が共催する交換プログラムとなっているが、日本国籍を持つアーティストのおおよそ半分がドイツ在住のアーティストで構成されている点は興味深い。またおおよそ30を超える参加アーティストのほとんども“migration”した人としてテーマを体現している。


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率直にテーマに向き合った作品も多くあった。ドイツへ移住した人々の労働現場を長編のドキュメンタリー映像でつづったエンプファングスハレというアーティストデュオ、スペインにある移民達の働く農園を写真、およびそこで使われているビニールとコンクリートブロックを展示したラウル・ヴァルフ。何れも問題意識の高い作品だった。

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ラウル・ヴァルフの作品にもう少し言及しておく。この写真に写った農園では主にドイツに向けて大量の作付けが行われており、この労働に従事するのはスペイン人ではなく主として南アフリカから来る労働者だという。そのような現実を間接的にこの展示から知らされる。

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観客が自ら”移動する”体験に焦点を絞ったのは、ダヴィッド・ポルツィンの作品だった。彼は会場内に小さいながらも自らの聖なる神殿を構築した。その神殿の中を一目見ようとする鑑賞者は、ゲートにてコントロールであるアーティスト本人に身分証を提示し中に入る必要があった。空港等の越境コントロールと同じ構造を再現することにより、鑑賞者は架空の領域に足を踏み入れなければならなかった。

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マリー・ルイーザ・ビアークホルツの作品も観客の移動を作品の要素に撮り込んでいる。壁にライトを設置し、その手前に植木を設置した。この構造は典型的なドイツの一戸建てに於ける公共空間としての前庭とプライベートな空間に一致する。

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また、展覧会のテーマ「migration」をユーモラスに解釈したのは、エリック・アルブラスとイレーネ・ペツーク、古堅太郎だった。エリック・アルブラスとイレーネ・ペツークは、会期中徐々に”移動する”壁を設置した。

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壁に一枚の白い板が立てかけられていた。この白い板は壁と同じ素材の様だが、周辺が薄く汚れていた。古堅太郎は展覧会の設置に際して使用した壁材に炭をかけて、手形や指紋を浮き上がらせた。設置の際、人々の仕事の跡が残ることにより、会場を設営したアーティスト達、すなわち移動する今回の主役達が彼の作品の中の主人公となった。

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その他、開発好明は、海外各地のアーティスト・イン・レジデンスを転々とした自らの経験を基に、現地で調達出来る素材で作品を制作するワークショップを開催し、参加者とともに制作。

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増山士郎は、長時間録画が可能なデバイスを箱の中に埋め込む事により、ハンブルクまでの郵便のプロセスをビデオに収めた。今回の展示では、録画に使われた機器と、編集された映像が投影されていた。箱を覗き込む郵便にたずさわる様々な人の様子や、はたまた税関に呼び出される作家本人が映るとても刺激的な内容の展示だった

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福田恵は、5つのビデオインタビューを主としたインスタレーションを展示していた。ビデオインタビューの他に、アンケート、花にまつわる記号となるオブジェ、そして本人の代替となるオブジェ。インタビューのテーマは花。国花、またその花にまつわる思い出だった。興味深かったのはインタビュワーそれぞれの花にまつわる思い出と国花の説明をする時の温度差だった。

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通路の壁面には緑色で中心に月と星、黒で十字架が張られていた。エディン・バユリクは出身であるサラエボでの経験を移住先でインスタレーションとしてアートの文脈に載せた。もともとは戦争の犠牲者を追悼する為に、その人の宗教的シンボルを壁に貼るところから来ている。

このプログラムは次回広島で開催される。それぞれのアーティストの移動した結果、次の展開が楽しみである。

CAMP BERLIN
会期:2008年2月2日〜10日
会場:旧ベルリン市交通局中央整備工場
住所:Uferstarasse 8 – 11, 13357 Berlin Mitte

Text and photos: Yoshito Maeoka

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