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岡田公彦展

HAPPENING

岡田公彦氏は、これまで、さまざまなデザインコンペなどに入賞、入選されていたが、待望の住宅が今年竣工予定の運びとなっている。その前哨が今回の展示である。岡田氏の作品には、どこか透明感、浮遊感を感じられるものがあるが、この作品「Another Geography」にも、それは感じられる。

岡田公彦展岡田公彦展

「Another Geography」は、DIESELが持つ、多面的なイメージにインスパイアされた風景として構想された。「いままで見たことがない近未来の新しい自然、どこか遠い惑星の地表面を思わせる風景、または人類の英知による創造物」である。岡田氏によれば、「生物が本来持っている本能を覚醒させるような場所」でもある。「素材に内在する力が生み出す形」や、「自然の法則によってできる地形」の、結晶的な法則性を喚起させる。来場者は、ありえない場所のありえない風景を物語るモノリスの誕生現場を目撃することになる。


岡田公彦展

DIESEL DENIM GALLERY AOYAMAを外から眺めると、二階の窓越しに、鍾乳石のような、しかし、煌めきをもった、素材の分からない、大きなふくらみが見える。夜ならば、いっそう不思議感が増す。「あれはいったいどこからきたものだろうか」と。階段を上がってすぐに、出会うのは、洞窟のような空間だが、見ようによっては、逆さにした地形の巨大な模型を思わせる。床に置かれた照明は、雲にもみえ、天地が逆転した世界ともなる。さまざまな解釈が可能である。

アルミニムを素材としているが、照明のぐあいで、素材感はかならずしも、アルミらしくない。重くも見えるし、軽くも見える。場所によって見え方は変わるし、さまざまな素材がミックスしているように見える。さらに、インターコミュニケーションな提案として、来場者は、LED懐中電灯でオブジェに種々の色の光線を投射して、その光具合を楽しむこともできる。通常外から照らされた物体はその周辺まで光が拡散するが、LEDの光は指向性が強く、複雑な多面体の光源を向いている面のみがくっきりと光るため、内部から光が出ているかのようにも見える。  

DIESEL DENIM GALLERY AOYAMAの2階ギャラリーは、天井高が4メートル以上あり、光も三方向から入るという恵まれた条件をもつが、その空間に圧倒されない存在感をもった作品をつくることは、アーティストにとって、チャレンジングな仕事でもある。ただ、台にのせたアートワークを置くだけでは、空間という箱の大きさの中で作品としての主張が弱いからだ。

岡田公彦展

高さに圧倒されない展示で物を配置するには、原理的には、下に置く、上から吊るすかという垂線で考える事になる。岡田公彦氏の作品「Another Geography」も実際、天井からテグスで吊られている。しかし、吊られているという感じはなく、どこからともなく、雲のようにこの空間に現れ、その天井を覆い、垂れ下がった部分をもった感じに見える。つくられた部分の中に構造があるわけではなく、がらんどうで、軽い。全体を一気につくることはできないから、部分的にしだいに張り合わせていく。こういう方法しかとれないのだが、どこからどう始めるか、やってみるとかなり難しい作業であることが分かる。ギャラリーの正面フロントファサードには二層吹き抜けで、ダブル・ハイトになっているが、この部分の天井も覆われている。スタッフは命綱のようにロープをからだに巻いて、この部分の天井の設置を行なった。 

そうして、少しづつ張り合わせていって、ある程度の大きなかたまりにまとめてから、そのつくりかけのかたまりの中にもスタッフが入り、内部の要所要所の点をテグスで天井から吊り下げる。そして、最後に、大きな空きのところを張り合わせる。 

岡田公彦展

表面には、大小さまざまなシワやヒダやデコボコがある。シワがあるのは、造形的な「地形」の表現として意味があるが、強度を高めるためという実用的な理由もある。シワのないまっさらのアルミ箔では形が保持できないが、しわが寄れば形が作りやすくなるのだ。ここで用いられた、アルミ箔は、家庭用のラップよりもすこしだけ厚く、その厚さ0.03ミリ。すべての膜を集めて延ばすと、面積は約600平方メートルとなるが、固めても重さはわずか20キロ、人がひとりで持てる重さである。だから、この展示物は、かなり軽い。垂れ下がった部分などは、その周囲を人が通っただけで、実は、ゆらりと動いていたりもしている。 

この巨大な展示物を生かし、全体の雰囲気を盛り上げるのが照明だ。今回は、照明デザイナーとして、「コモレビデザイン」の内藤真理子氏が参加している。建築家とのコラボレーションが多く、さまざま場面での照明計画に携わっている。建物を外からみたとき、インパクトが出るように、しかし、内部の照明(色付き)と調和するように配慮されている。

床、三カ所と中二階の二カ所に置かれた、オリジナルの照明もユニークである。有機的にも見え、無機的にも見える。スチールワイヤーでつくった雲のような、あるいは、アメリカ西部の荒野に転がる枯れ草のかたまりの中に数個の電球が浮いている。よく見ると、決して任意にぐるぐると巻いてつくったものではなく、輪と輪の接点をひとつづつが手作業で結びつけられて、まとまりのあるかたちになっていることが分かる(なお、床に置かれた照明は、作品として販売されている)。 

岡田公彦展

DIESEL DENIM GALLERY AOYAMAでのアーティスト展示に建築家が加わったことは、画期的な試みであり、そしてある意味、自然の流れだった。
建築とアートは、一般の目からは、違うカテゴリーに分けて考えられているのではないだろうか。建築家は、アーティストであり、実務家であり、専門の技能者である。逆に、アーティストが建築家になることは事実上、できない。もちろん、すべての建築家がアーティストとしての創作ができるとは限らないが、少なくとも、なにがしかの審美性をもち、造形を考えるのは建築家の作業の一部であるから、もともとアーティスト的な感覚や思考を日々働かせている。また、建築家の仕事は、今のような時代、微妙な立場にある。従来のように大きな公共建造物をつくることは少なくなったかわりに、商業施設やインテリアのデザイン、家具、プロダクトやインスタレーションなどさまざまなジャンルに目を向ける必要もでてきた。とはいえ、建築家が万能だというわけではなく、今回DIESEL DENIM GALLERY AOYAMAで展示された建築家の方々は、アーティスト・センスが感じられるところで、キュレートされたのだが、その意味で成功だったといえる。 

岡田公彦展

アートの展示で、主宰側がもっとも気を使うのが、アーティストが作家性だけを前面に出して利己的に主張を通そうしたり、実務的な面に関して、社会通念を十分に理解しない対応をする場合だろう。もっともアーティストのアーティストたるゆえんはそのあたりにもあることは否定できないが。建築家とは対社会的な役割をもつ専門家である、医師や弁護士と同様に、高度の専門知識を駆使するプロフェッションであり、そのために、資格認定の制度もあるわけである。コンセプトを立て、構造や素材を考えるだけでなく、制作の工程を効率化し、出来る限り、合理的に仕事を進めて行かなくてはならない。しかも、展示スペースのことも考慮に入れ、必要があれば、そこに自ら手を加えることもいとわない。岡田氏の設営過程では、設備が集中する天井の空調の流れを横に流すための下準備だけで数日間をかけていたし、セキュリティーの問題なども率先して適切に処置した。まさにアーキテクトは、アーティストとしては、仕事のしやすい優等生なのだ。 

建築家たちの設営現場での仕事ぶりは、建築家のあるべき姿そのままで、建築家の仕事の領域の可能性も実感できた。岡田氏は、周囲の意見、コメントに対しては、常に真摯に耳を傾け、作家性を主張して作業が滞ったりするような場面はまったくなかった。ちょうど、クライントと相談しながら、淡々とひとつの建築プロジェクトが成し遂げられる現場を見たようだ。 

作業に関わった、岡田氏はじめ、岡田事務所の所員・長谷川氏、その指揮下の建築学科の大学生、大学院生からなるスタッフの仕事ぶりに建築界での仕事ぶりが伺える。みなさん、素晴らしい展示をありがとう!

岡田公彦展「Another Geography」
照明計画:内藤真理子(コモレビデザイン)
会期:2008年2月20日〜5月11日
会場:DIESEL DENIM GALLERY AOYAMA 2F
住所:東京都港区南青山6-3-3
TEL:03-6418-5323
営業時間:1F STORE 11:00〜20:00
     2F GALLERY 13:00〜20:00
定休日:不定休
主催:DIESEL JAPAN
キュレーター:高橋正明(ブライスヘッド)
http://www.diesel.co.jp/denimgallery

Text: Masaaki Takahashi (Curator)
Photo: Shuto Mikio

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