ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

THINGSText: Shinichi Ishikawa

戦闘シーンでは、エヴァのシャープなアクション、敵「使徒」の不気味な存在感と動き、エヴァを助ける防衛システムの兵器等は気持ちいいほど良い動きをしてくれて楽しい。対して、人物が登場する場面は戦闘中でも静的であり、戦闘シーンの場面と良いコントラスト。逆に緊張感を生む。

Evangelion Rebuild
© カラー・GAINAX

静的であるのは、他の日常的なドラマ・パートも同様である。間を置く演出や、なにげないカットで主人公の心情を表現する場合が多い。そのため落ち着いて観ることができるし、いろいろ想像するのも楽しい。防衛組織という大人の世界に放り込まれている主人公だが、学校の友人や、操縦者仲間である少女との関わりのシーンもあり、親しくなっていく過程がくっきりと浮かびあがっているのがいい。大人に対して心を閉ざし、従順すぎる主人公が同世代とのつながりを通して成長していくところは、素直に本作の良質の部分だと思う。いくつかの伏線を経てラスト近くに仲間の少女と心通わせるシーンは、作戦の迫力と合わせて満足できる大団円だ。

一番印象に残っているのは、序盤で主人公が父親や防衛組織の女性上司にエヴァの操縦者になることを説得され、承諾するまでのシーン。主人公の立っているエヴァの格納庫の足場のような場所が演劇の舞台のように使われ、そこで場面が固定されシーンが続く。ただ奇をてらったものではなくて、主人公の内心の動きをうまく伝えるうまい演出だと感じた。

今回の劇場作品は4部作3回に分かれて毎年一作のペースで公開予定だ。本作は、TVシリーズにほぼ沿った内容だったが、今後はオリジナルの設定、ストーリーも加えて、TVシリーズを熟知しているファンにも予想できない展開がありそうだ。最後にもう一度、この作品は決してカルトでも、ひねくれたテーマを持つアニメでもない。誰もが楽しめる良質のアニメーション映画だと思う。多くの人に観てもらいたい。来年の公開も今から楽しみである。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
公開日:2007年9月1日〜ロードショー
原作・脚本・総監督:庵野秀明
監督:摩砂雪、鶴巻和哉 
主・キャラクターデザイン:貞本義行 
テーマソング:「Beautiful World」宇多田ヒカル(EMI Music Japan Inc.) 
製作:カラー
制作:スタジオカラー
配給:クロックワークス、カラー 
配給協力・宣伝:日活
https://www.evangelion.co.jp

Text: Shinichi Ishikawa

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