シークレット・パブリック

HAPPENING

サッチャー政権の1978-1988年、社会不穏に揺れるイギリス社会で生まれたアンダーグラウンド・アートを再結集させたエキシビジョンが、現在ICAで開かれている「シークレット・パブリック」である。政治や経済が大きく動く中で、ジェンダー、セクシュアリテ、ボディパフォーマンスなどを題材としたどこかダークで退廃的なムーヴメントが生まれた時代である。

グラウンドフロアで展開されているのは、リチャード・ハミルトンの「トリートメント・ルーム」というインスタレーション。一見シンプルな病院のオペ室を再現した空間に足を踏み入れることになる。小さな洗面台と、移動式の簡易ベッドが置かれている。そのベッドの頭上には大きなテレビモニターが設置してあり、サッチャー旧首相の演説をながながと放送している。メディアの影響力、その強力なすりこみのような効果への批判が込められているのか、それに対してのタイトルが皮肉的で、イギリス的と思わせるような作品である。

ファーストフロアへ続く通路では、若き日のウォルフガング・ティルマンズの写真を見ることができる。ドイツの片田舎に住む少年が夢見る80年代のパンクロンドン、ポップカルチャーがいきいきと写し出されている。当時のセレブパパラッチ的な一枚や、キングスクロスのクラブカルチャーなどウォルフガングの興奮ぶりがうかがえて微笑ましい。

マーク・カミーユ・カイモウィックはサウンドとライトを多用した作品で知られている。エキシビジョンルームの一室をすべて使ったこの作品では、ダウンライトの中、撮影用ライトが乱立し、ミラーボールが回る中、クリスタルのオブジェ、ほとんど枯れかかった花、小さな噴水などが秩序なく置かれている。その横にはアーティスト自身の手書きによる「Enough Tyranny Recalled」というメッセージ。北アイルランド紛争についてタブロイドで取り上げられた言葉を引用したポリティカルメッセージを含んだ作品。

どちらかというと、陰気で皮肉に溢れたけして愉快な気分になれるようなエキシビジョンではない。けれど、この時代のイギリスの社会的背景を写して、かくのようなアートが産まれたという観点で見ると、非常に興味深いものがある。

The Secret Public
会期:2007年3月23日〜5月6日
会場:ICA
住所:The mall London, SW1 London

Text and Photos: Sayaka Hirakawa

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