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鹿野護

PEOPLEText: Yurie Hatano

今月のSHIFTカバーを手がけたのは、仙台と東京に拠点をおく、 コマーシャルやプロモーションビデオを中心としたクリエイティブ・プロダクション WOW。「存在する映像」というコンセプトを軸に、インスタレーションやDVDなど様々な表現の実験を試みる「モーションテクスチャー」プロジェクトを初めとし、高品質で常に新しい映像表現を追求した様々な作品を手がけている。WOWアートディレクターの鹿野氏にお話を伺った。

まずはじめに、自己紹介をお願いします。

鹿野護。私はWOWでアートディレクションを手がけています。これまでコンピューターグラフィックスの技術を使って、CMを中心に様々な映像表現に携わってきました。また一方で個人的には「未来派図画工作」というサイトを立ち上げ、アルゴリズムによる映像表現をプログラムアートとして発表してきました。現在は、WOWでやってきたコンピューターグラフィックスと、個人的にやってきたアルゴリズムによる表現を一体化しようとしています。
元々私は情報デザインに興味があったので、プログラミングを映像制作に積極的に取り入れてきたのですが、今後はプログラムだけでは難しい表現を、コンピューターグラフィックスの技術で補おうと考えています。

WOWについて、教えてください。

WOWは仙台と東京に拠点をおき、コマーシャルやプロモーションビデオを中心としたクリエイティブ・プロダクションです。最初は仙台のメンバーによって始まりましたが、数年前に東京にもオフィスを置き、様々な個性を持ったデザイナーが集まることで、一気に表現の幅が広がりました。

仕事には大きく2つのタイプにわけられると考えています。一つは「高品質」な映像。これは表現するテーマがすでにあって、それをいかに高い品質で映像化するか、という仕事です。そしてもう一つは「新しい」映像。インスタレーション作品や新しいメディアへの挑戦、という意味合いが強い仕事です。こちらは前例がないことが多く、いかに柔軟に発想できるかが勝負です。

特に仙台と東京のオフィスの役割を決めているわけではないのですが、仙台では「新しい」映像が生まれる傾向が強いようです。たとえば「レスフェスト」でワールドツアーに選出された「JURYOKU」や「UONUMA」という社内のユニットも、「モーションテクスチャー」も仙台のデザイナー達が作り出しました。

東京のオフィスには、クライアントの高い要求に答えられる、素晴らしいCG技術を持ったデザイナーがそろっています。アイディアをいかに効果的に視覚化するか、そして自然現象をリアルに再現するか。そうした難題をデザイナーの表現力によって日々応えています。

WOWではこの2つ表現力を組み合わせていくことを目標としています。新しい発想と、高い表現力。いまその融合は進行中で、モーションテクスチャーはその始まりだと思っています。

モーションテクスチャーについてもう少し詳しく教えてください。

「存在する映像」というコンセプトを様々なメディアで表現していくプロジェクトです。定期的にオリジナル作品発表を行っているのですが、今回は作品そのものを中心にするのではなく、コンセプトを中心にしたはじめての試みです。作品はあくまでもメッセージを伝えるための媒体という考え方で、作品作りをしています。これまで、せんだいメディアテークにおけるインスタレーションの展示、そしてDVDをリリースしました。今後もウェブを始めとした様々なメディアでコンセプトを表現していきます。

まずインスタレーション作品では、見る人と作品の相互関係をテーマにしました。これは道を歩くと草木が揺れるような、水たまりの上を歩くと水が波打つような、さりげないインタラクションを「Quartz Composer」という技術を使って表現しました。

DVDでは作者と作品の相互関係がテーマになっています。制作する過程に、シミュレーションやアルゴリズムによるモーションデザインを大胆に導入したのです。デザイナーは彼らの想像力によってイマジネーションの世界を作り出し、そこで様々な現象を起こしました。そしてまるでその世界を記録するかのように映像をデザインしていったのです。これはまるでイマジネーションのドキュメンタリーのような作品になったのではないかと考えています。

せんだいメディアテークでの展示はどのようなものになりましたか?

はしゃぎ回る子供たち、静かに横たわる女性、ゆっくり映像の中を歩き出す人々・・。映像作品と見る人が直接ふれあう瞬間を見て、これから作るべき新しい映像作品のあり方を実感しました。特に今回は子供たちと年配の方々に好評だったようで、「明日また来ます」と通ってくれた年配の方もいらっしゃったようです。

また巨大な空間に作品を展示することが初めての経験だったのですが、メディアテークの素晴らしいスタッフに素晴らしいサポートをしていただき、準備や展示を通して非常に有意義な体験をしました。来場者数も予想を上回り、我々自身も驚いています。

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