ピーター・サザーランド

PEOPLEText: Garry Waller

1998年にコロラドからニューヨークシティーに移り、ニューヨークを拠点に活動しているアーティスト、ピーター・サザーランド。この都市にたどり着き、ベジタリアンのレストランで働いていた彼には、ここで本当にすべき大きな野望はまだ見えていなかった。それが明確になったのは、街を徘徊するスケートボーダー達のドキュメンタリー映画を実験的に撮影した後である。ピーターはそれ以来、最近もその勢いをますます増し続ける写真とドキュメンタリー映画の両方を含む、無数の個人プロジェクトに取り組み始めた。


Peter Sutherland, Pedal, 2001

最初のプロジェクト「ペダル」は、ピーターがニューヨークシティーに移って来て間もなく撮ったドキュメンタリーであり、ニューヨークシティーのサイクルメッセンジャー達の説得力のある描写、この危険な仕事に存在する魅惑的な文化である。2001年に、南部のサウスウエスト映画祭、ニューヨークのバイシクル映画祭にて初上映となり、後にサンダンス・チャンネル(インディーズ映画のケーブルチャンネル)にて2004年まで放映された。

映画製作中は200人ものメッセンジャーに働きかけ、そのうちニューヨーカー達がよく目にするがこれまでに実態を何も知られてこなかった人生の部分を最も立証する者をフィーチャーしたのだ、とピーターは僕に説明してくれた。映画に関して正式なトレーニングも受けず、ピーターはカメラを持って出かけ、80時間近くもの映像を撮った。その多くが彼のスケートボード上から、仕事に出かけるライダー達を激しく追跡したものだ。


Peter Sutherland, Pedal, 2001

ピーターが、メッセンジャーが繰り広げる人生や物語の多くを捉え、示すことができたのは明らかである。そしてその理由は計画的には行かない数々の場面をおさめていることにもある。例えば、ある若い女性メッセンジャーが混雑した交差点を乗り切ろうとした際に、車に強くぶつけられた場面。彼女は無傷で立ち上がり、壊れた自転車を調べるだけだった。

そういったエキセントリックなキャラクターが、この作品「ペダル」を魅惑的にし、多くの人々から隠れたところにあるサブカルチャーのスナップを見る者に提供しているのは明らかだ。ピーターは、彼が描きたいと感じるありとあらゆる種類の人々を捕らえるコツを持っているように見え、数々のプロジェクトでそれを示してきた。作品「オートグラフ」もそのうちの一つだ。


Peter Sutherland, Autograf, 2004

これはピーターがニューヨークの最も悪名高いグラフィティ・アーティスト達を捕らえた写真集のタイトルで、ニューヨークシティを背景としながらも、57のポートレイトそれぞれが異なったロケ地で撮影されている。さらに、それぞれの写真では個々のアーティストが本物のタギングを行っている。

ピーターと対象者たちとのこのコラボレーションは、通常 “立ち入り禁止” である部分に立ち入っていた。多くの人々がアートとして見るデリケートなバランスを考慮し、ピーターはこれら多くのグラフィティ・アーティストたちを匿名で撮影したが、不法な公共物の崩壊という人もいるだろう。

ニューヨークは9月11日のテロ以来、ストリートやそれらをカンバスとして利用する人々を一掃しようとする傾向にシフトしていて、寛容さをなくしている。しかし彼らの名を隠しながら、この本もまた「ペダル」のフィルムのように、存在していることは知っているが直接体験できないものに対する興味深い一瞥を読者に与えるのだ。

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