河村勇樹

PEOPLEText: Yurie Hatano

11月にEUで初のDVD作品集「SLIDE」をリリースする、パリで活動する日本人映像アーティスト、河村勇樹。作品は、DOTMOVフェスティバル2005での特別上映作品としても招待されている、今後もっとも注目すべき映像アーティストの一人だろう。

まずはじめに、自己紹介をお願いします。

こんにちは、河村勇樹です。1979年京都生まれ、2000年に渡仏し、パリ在住で映像を作っています。

映像制作を始めたきっかけは何ですか?

そうですね、映像制作を始めたきっかけは、子供の頃から全く訪れた事もない、古いヨーロッパの街並みをテレビで見ていて、なぜかよく懐かしい思いに浸っていました。といっても幼稚園の時のことなのですが(笑)。それで、ある架空の街の住民として生活していた夢をよく見ていました。そして10代半ばになると、その懐かしいヨーロッパの街並みを実際の映像で見るために、50〜60年代のフランス、イタリア映画を見るようになり、それぞれの監督が持っている素晴らしい映像に入り込んでいきました。そして、それだけでは飽き足らず、自分が夢として見ていたものが、現実に存在しないのであれば、自分自身の世界を自分で作れば良いと思ったのが、映像制作を始めたきっかけです。

パリで活動されているとのことですが、そこに至った経緯を教えてください。

さきほどの話の続きなのですが、18歳のときに、自分が夢の中で住んでいた街は本当に存在するのか?と思い、フランス、スペイン、イタリアに旅行をしたのですが、結局見つからなかったんですよ。でもパリに訪れた時、他の国にはない居心地の良さを感じました。そこは僕が夢の中で見ていた街ではなかったのですが、活動するにあたっての立地条件の良さ、映画製作を国が支援している事などに共感し、20歳のときにパリに移住し映画専門学校に行く決意をしました。そして、卒業後、現在パリを拠点に活動しています。

パリのクリエイティブシーンをどう思いますか?日本との違いは何ですか?

やはり一番大きな違いは、時間の使い方ではないでしょうか。パリは日本と違って、一人一人が情報に左右される事なく、個人の時間を大切にする事ができます。そして、芸術が老若男女問を問わず人々との距離が近く、誰もが個人的主観で批評したり賛美したりします。(日本人の僕にはその口論が長く感じたりする事ありますが!?)そういった意味で、作品作りはパリの方が、何事にも流されず自分自身を見る事が容易に感じます。そして、そういった人々のエネルギーによって、フランスのクリエイティブシーンが支えられているのはないのでしょうか。

11月にリリースされるDVDについて教えて下さい。

11月には、パリのポンピドゥーセンターにおいてのみの先行発売なんですが、その後12月中旬にはヨーロッパ各国、アメリカ、日本、香港、台湾などでの発売になります。

フランスのLOWAVEからリリースされるこの作品のタイトルは「SLIDE」で、8作品+ボーナス1作品が入ったDVDです。この「SLIDE」というタイトルが意味しているものは、この作品を見た人が、一瞬にしてある空間から他の空間に滑り込んでいってくれれば良いな、という僕の希望です(笑)。

僕らは、普段一つ一つの空間を、目と脳で認識し作り上げています。それに対してこのDVDに使われている映像は、このような視点からではなく意識的に、見ようとした時にだけとらえられる自然の詩的な瞬間を切り取ったものです。

ボーナストラック作品以外は、音楽家の半野喜弘さんとのコラボレーションになっています。素晴らしい音楽をつけて頂き大変感謝しています。今回一緒に作業させて頂き、とても良い影響を受けました。今後もご一緒させて頂ければと思っています。

それぞれの作品について詳しく教えて下さい。


BALLON
12の赤いボールが地面から空中にはねあがる。転がり落ち、止まり、消えることで、重力のリズムの美しさを表現している。


SLIDE
人の輪郭が、人そのものに変化し、光のある場所へと歩く。全てのものが互いに繋がりあっている。物質は次々にスライドするスペースに姿を変え、人は塵となる。


SCENE H
雪景色にての疾走。イメージは記憶のように行き来する。

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