ヘンリー・ハドソン&ステラ・ヴァイン展「美と忌」

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

デザインオフィスや、ギャラリー、スタジオのならぶショーディッチから、ほんの5分の距離だというのに、もうここはブローカーやバンカーのひしめき合う金融とビジネスの中心地、お札の香のする場所、シティのど真ん中。そこにヒスコックス・ギャラリーはある。そもそもヒスコックスは、ファインアートの保険までカバーする大手の保険企業であり、その巨大なビルディングのグラウンドフロアに、シティで働くワーカーにもアートに触れる機会を与えたいとして作られたのが、このというギャラリースペースなのである。さて、ここで開催される、ヘンリー・ハドソンステラ・ヴァインによる展覧会「美と忌」に足を運んでみた。

ステラ・ヴァインといえば、ダイアナ妃の血を流したポートレイトへの賛否両論から、サーチ・ギャラリー移転問題に頭を抱えている(だろう)イギリス最大のコレクター、サーチ氏に作品を見い出された、元ストリッパーのミューズなどとして、どちらかというと、スキャンダラス方面に注目を浴びてきた若手アーティストである。

彼女の作品には、新聞やタブロイドでとりあげられる陰惨な出来事に対する彼女なりのレスポンスをテーマにしたものがこれまでも多く見られた。そして今回は、ドラッグやボーイフレンドの問題で近頃タブロイドを騒がせるスーパーモデル、ケイト・モスに彼女は心惹かれたようだ。

ほとんどの女の子は、ゴシップが大好きだ。タブロイドもゴシップ欄からはりきって読みはじめるのは、なにも私だけではないだろう。でも、そこに自分を投影するということはあまりない。ゴシップは人事だからこそおもしろいのだから。ただ、このステラ・ヴァインというアーティストは、世間一般で起こる恐ろしい事件や、メディアからバッシングを受けるセレブリティに、本気で心を傷つけられ、鬱になったり、それに取り付かれてしまう、それが彼女の作品のベースになっているように思う。

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