横浜トリエンナーレ 2005

HAPPENING

3年に一度の国際美術展「横浜トリエンナーレ2005」が9月28日に開幕した。世界30カ国、86名のアーチストが参加し、その作品群は、横浜・山下埠頭にある巨大倉庫二棟を利用したスペースに展示されていることからもそのスケールの大きさがうかがい知れる。


さて、トリエンナーレの様子だが、まず入り口から驚かされた。巨大なコンテナがアーチ上に組まれこの巨大なイベントへ続く門の役割を担っているようだ。これはルック・デルーによる作品で、「Speybank」というシリーズの一つであり、彼が貨物船に乗り72日間かけて世界を旅したときに構想したアイデアである。作品名もその時に乗船していた船からとったが、その名前は第二次大戦中にドイツがイギリスから奪取し、横浜に二ヶ月間投錨していた船の名前と一緒という不思議な偶然も合わせ持っているそう。

そして入り口から入ってすぐには、今回のテーマ「アートサーカス(日常からの跳躍)」というタイトルと重なり合うサーカス会場が設置されている。ここではオープニングの時に、アートサーカス集団「ビュラン・サーカス・エトラン」によるサーカスが実際にパフォーマンスを行った。そしてこの「アートサーカス(日常からの跳躍)」というテーマとは、この「横浜トリエンナーレ2005」が作品と見る側という一方的なコミュニケーションに陥りがちな展覧会への一種の問題提起として、そのような垣根を取り払い、ダイアローグ的な展示や鑑賞への挑戦と、そこから生ずる作品の表現の跳躍と、日々の生活空間からの跳躍という大規模かつ野心的なテーマを持っている。
このようなテーマから、展示されている作品は参加型、観るだけでなく、観客のアクションが伴い成立する作品のものが多く見受けられた。

その中から幾つか紹介すると、まず、今回のトリエンナーレのために結成されたバンコクのアートプロジェクト「ソイ・プロジェクト」の作品群が上げられる。バンコクにあるソイ(路地)をイメージしたというインスタレーションは混沌とした中にポップさやバンコクが持つエネルギーが溢れていた。射撃ゲームと映像が連動したインスタレーション、そして観客もくつろぐことができるチルアウトバーなどは、そこにいると日本にいることを忘れてしまいそうになる。また、このプロジェクトでは会場周辺の施設を利用して、タイと日本のミュージシャンが参加しライブ・パフォーマンスを行う「ソイ・ミュージックフェスティバル」を行うという。

ヴォルフガング・ヴィンターとベルトルト・ホルベルトのアーチストユニットによるパビリオン作品「ライトハウス」はビールケースを積み上げて、独特な風貌をもつ空間を創造していた。コンテナの上に立てられたその作品は螺旋階段から内部に入ることができ、入室者の想像力を刺激する。夜はライトが灯されるという。
残念ながら夜の状態は見ることができなかった。また、このトリエンナーレのために製作されたスインガークラブは発光するプラスチック(よく観ると車のテールランプの部品を積み上げて作られていた)の造形物と光るブランコの作品は、幻想的に会場内に浮かび上がり、観客が気持ちよさそうにブランコに揺られていた。

奈良美智+grafによる作品は、会場内に小屋のような不思議な建造物を建て、その中に奈良美智によるドローイングなどが展示される「AtoZ」。なかには作業場を再現したような空間インスタレーションもあり、作品にまつわる様々な物語を想起させる。特に印象深かったのはコンテナに沢山ののぞき穴が開いており、そこを覗き込むの無数の犬のフィギュアが並んでいるインスタレーションだった。

会場はとにかく広く、東京ドーム2つ分くらいはあっても嘘ではない規模。その中を動き回り作品を見て回るのは頭と体力が必要になってくる。そういった心と体を癒す休憩場も例によってアーチストによる作品となっているのが嬉しい。

その憩いのカフェとなっているのは少々、奇怪な形をしたアトリエ・ヴァン・リースホウトの「バー・レクタム」。出展されている作品には「Arsch Bar」とプリントされていたが、身体の内部器官を模したというこの作品の中に入って休んでいるのは変な気分でもある。

二つの倉庫に続く中庭にももちろん作品があり、またコンテナで結ばれた通路なども設置されている。そこでなにやら不思議に存在感を放つ無数の電話ボックスは岩井茂昭による「ミリオン・ママ」。電話ボックスに入ると呼び出し音が鳴り、受話器を取ると自分の子供に受話器越しに向けられた母によるメッセージが流れる。
笑いあり感動ありのメッセージの内容は、当たり前のことだけど普段忘れがちなことを思い出させるハートフルな作品。

ここまで、数人の作品をピックアップしたが、キュレーターマンによる「Super (M)Art」など刺激的作品がメイン会場のみならず、横浜の街の至る所に展示されている。会期も9月28日から12月18日までと長いものとなっており作品の特性上、会期中も常に変化し続けるものもあるので、興味は尽きない。会場に行くことが可能は方はぜひ足を運んで体感することをお勧めする。

全体を通じて、日本のアーチストが多いのは当然だが、特にアジアのアーチストの参加が目立った。現在のアジアが持つ可能性や活力がこのトリエンナーレにも影響しているのだろう。そして、アーチストのホームステイ、参加型の作品制作や公開制作など観客や市民とのコミュニケーションや以前、誌面でも触れたがバンクアートのような行政も関連したアープロジェクトなどを常に行っている事からも、一過性のフェスティバル的な要素としてのアートではなく、人や街や環境としてのアート、美術という可能性を追求し、国際的な文化を発信し生みだすという、横浜という都市の明確な意思が強烈に伝わってきた。がしかし、一方ではこのビエンナーレでしか成し得ない表現というものが何なのかはこの会期が終わった後に浮かび上がるであろうことは、依然として未完成な模様を呈する、このトリエンナーレの状況からもうかがい知ることができるだろう。

横浜トリエンナーレ2005
会期:2005年9月28日〜12月18日
会場:横浜市山下ふ頭3号、4号屋上ほか
主催:国際交流基金、横浜市、NHK、朝日新聞、横浜トリエンナーレ組織委員会
問い合わせ:横浜トリエンナーレ事務局
ハローダイヤル:03-5777-8600
http://www.yokohama2005.jp

Text and Photos: Yasuharu Motomiya

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