ワビサビ

PEOPLEText: Yurie Hatano

シフトと同じく拠点を札幌とするデザインユニット、ワビサビ。7月にはソーソーカフェで3週に渡り展覧会を開催、ドイツ・フランクフルトの展覧会に参加するなど活動の幅を広げている。

超日本展

まずはじめに、自己紹介をお願いします。

ワビサビは、工藤“ワビ”良平と中西“サビ”一志の2人からなるデザインユニットです。お互いの持ち味を活かしたクリエイティブワークを目指し、1999年に結成しました。

出会いはもう20年も前(笑)。僕(ワビ)の働いていたデザインプロダクションにサビが入社してきたことから始まります。その後、僕は広告代理店でクリエイティブディレクター・アートディレクターとして働くようになり、サビは2つのプロダクションを経て再会、2人はディレクターとデザイナーの関係で仕事をするようになりました。ファッションテナントビルの広告がメイン。そうこうしているうちに、もっとクライアントの意志に関係なく、自分たちの創りたいものを自由につくろうと、僕が声を掛けて始めたのが“ワビサビ”です。

ワビサビ
Callibonsai, Aoyama Flower Market

ホームでの仕事とワビサビとの違いを教えてください。

ホームはワビが広告代理店から独立して始めたデザインプロダクションで、広告制作がメインです。CM、新聞、雑誌、交通広告といった、あらゆるものを手掛けます。ホームでの仕事とワビサビとの違いですが、僕たちがモノを創る上で、その志はまったく変わりないと言えます。アプローチの根元は同じ。とにかく“いいモノ”を創りたいという(笑)。ただ大きく違う事と言えば、まず、誰が“いいモノ”と思うか?でしょうか。ホームのクリエイティブは、クライアントのニーズを受けて、いかに消費者に届くものを創るかが勝負どころ。でもワビサビでは、まず2人がいい!とうっとりしちゃうモノが基準。2人とも自分たちが創る作品が大好きなので(笑)。ワビサビはアートワークがメインになっていると言えるかも知れません。

ワビサビワビサビ
The Guitars, SRV

7月にソーソーで開催された「ワビサビ+ウルトラグラフィックス展」について教えてください。

東京のウルトラグラフィックスは、僕たちの大好きなデザインプロダクション。ウルトラグラフィックスの代表でありアートディレクター・グラフィックデザイナーである山田英二氏と知り合ったのは、札幌のクリエイターで組織する札幌アートディレクターズクラブの作品審査会に、山田氏が審査員として来札した時です。ワビサビは準グランプリをはじめ各部門で沢山の賞を受賞させていただきましたが、その時『ワビサビは東京でも全然イケルよ。』とJAGDA (日本グラフィックデザイナー協会)への入会をしきりに勧めてもらったことをキッカケに、交流が続いていました。そんな矢先、サビとウルトラグラフィックスの近藤ちはるさんがJAGDA新人賞を同時に受賞したわけです。もうお祭り騒ぎですよこれは!この件についてはあとでサビに語ってもらうとして、今回のコラボ展は3週間を週替わりで開催しました。

WABISABI
The Music, Exhibition, Photo: Meyuga

1週目はワビサビ展。ミュージックをテーマに、愛する5本のエレクトリックギターを、以前から創っているカリグラフィーの手法で制作しました。 50〜60年代のオールドギターを実測しながら、原寸に忠実に作っています。まず楽器を撮影するところからスタートしました。

僕(ワビ)はバンドもやっていて、楽器にはかなりうるさい(笑)。ヘッドからボディーまで、垂直に分割して撮影しました。よくカタログなんかに出てる写真は、当然パースがかかったりするから拡大しても本物の様にはならない。ヘッドが小さくなって存在感が全然違うんです。そういうスケール感にこだわりました。だから自分の使ってるレスポールカスタムと、ロンドンから抱えてきたダンエレクトロのオリジナルショートホーンから始めました。

サビはまったく楽器を知らないので1から勉強してました。そういう律儀なところがサビにはあります。納得しないと作れないとか、面倒なことを言います。ホームの社訓は「DON’T THINK, FEEL !」なんですけどね。これブルース・リーが燃えよドラゴンの中で言った台詞。僕が勝手に社訓と決めてるだけなんですけどね。壁に貼って。だけど、そのうちサビは『ワビさん、それはテレキャスターではなくブロードキャスターでは?』などと、ヴィンテージギターショップのオーナーみたいなことを言うようになり、僕はちょっとうれしかったな。

テレキャスターとリッケンバッカーの2本はヴィンテージギターショップ、SRVのオーナー奥田さんに相談して貴重なギターを撮影させてもらいました。そして59年のグレッチは、タトゥーショップ、COOL STAR TATTOOの彫龍翠氏の私物です。5本のうち僕が1.7本、サビが3.3本を作りました。最後に弦を張るのは僕の役目。いつも使ってるアーニーボールの01を張りました。とはいえコンピューター上でですけどね。

ワビサビ
Megumi Kaneko, The Music, Exhibition, Photo: Meyuga

会場は5本のギターと、70年代に大活躍したスピーカーボックスとラッパの山積みPAを再現したポスターを壁に張り巡らせました。オープニングパーティーではシークレットイベントを計画。わずか3分5秒のショータイム。突然暗転した会場に、これらのスピーカーが鳴ったらきっとこれくらい?という大音量でイギー・ポップの「シェイク・アピール」を鳴らし、客席の一人が踊り出すという内容。「シェイク・アピール」は僕にとって栄養ドリンクのような曲。たまたまビザ切れのため帰札していたニューヨークのダンサー、メグミ・カネコのパフォーマンスは圧巻でした。しばらく鳥肌が引かないほど。この企画を依頼した時、彼女はイギーのことを知らなかったけれど、徹底的にイギーを調べて入り込んでくれました。世界中のイギー・ファンに見せたかった!それくらい素晴らしいパフォーマンスでした。

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