FITC 2005

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

FITCの2日目も素晴らしいクリエーターの競演、まずは、デザイナーズ・リパブリックや、ワープ・レコーズのウェブサイトを手がけた、クレバーのグラフィックデザイナー、トム・ミューラーが登場。サイト管理者に優しいバックエンドの構築や大いに盛り上がりを見せるフォーラム機能の仕掛けなど、ウェブの洗練されたユーザビリティを感じさせるプレゼンテーションだった。写真は終了後のトム(左)とウィーワークフォーゼムのマイク・チーナ(右)。優れたクリエーターが交わるそこかしこで広がるデザイン談義。

次にイコグラダ(国際グラフィックデザイン団体協議会)会長のロバート・L・ピータースが壇上に上がると、場内はすっと静まった。「デザインによる未来」というタイトルで、引用されたシンプルな言葉と強く思慮深いビジュアルを交錯させながら、『デザインがカルチャーを生み出す。カルチャーが価値観を形成する。そして価値観が未来を決定する。だからこそデザイナーは、未来の子どもたちが暮らす世界に対して責任を持っているのだ。』とデザイナーの社会における責任に言及した。前述のマイク・チーナも『ソーシャルなことにデザイナーは取り組まなくちゃね。』と話してくれたが、拍手喝采を送るオーディエンスの反応を見ても、いよいよソーシャル・クリエーターの時代がきていることを直に感じた。

そしてついにFITCも最終日!朝一から言わずと知れた、キャットマンの作者、カナダ在住の日本人クリエーター青池良輔が登場。何かとテクニカルな側面がフォーカスされるフラッシュにおいて、アニメーションの道をひたすら突き進む姿が新鮮で、貴重なFLAファイルを紐解くプレゼンテーションでは、アニメーションの細かいテクを多彩に披露、メモをとるオーディエンスの姿が目立った。

午後から全身タトゥーのジョシュア・デイヴィスが満を持して登場。TOOLというハードコアバンドとのプロジェクトを巡るドキュメンタリのこぼれ話をフックに、エッジの効いた笑いが織り交ぜられ、会場のボルテージも最高潮。スーパーマリオの新しいシリーズ「ペーパーマリオ」からインスピレーションを得たという2Dと3Dが行き交う空間を自動生成するアプリケーションは、思わず見ほれる動きだった。

いよいよ大トリは、フラッシュの方向性を結果的に進化させた張本人、YUGOPこと中村勇吾が登場。会場は超満員に膨れ上がっていた。“お金を生み出すタイポグラフィ” たる「AMAZTYPE」は、国境を越えて大好評!『普段何気なく使っているロジックの “ちょっと間違った使い方” を起点に、それをオーバーに洗練させていくと作品に何ともいえないオーラが宿ってくる。そうすることで、まだ見たことのないものをつくっていきたい。』という彼らしい卓越した言葉に、場内からはスタンディング・オベーションが起こった。

こうして濃密な3日間は幕を下ろしたが、グラフィックデザインやビジネスモデル、マルチメディアユースにいたるまで議題は非常に多元的だったといえる。それはフラッシュというひとつのクリエイティブ・ツールが、その可能性と魅力で各分野のいろいろな才能を惹きつけるプラットフォームへと進化してきた証だろう。3日間のうちに幾重にも重なったインプットは、ウェブクリエイティビティに関わるものそれぞれにとって、「ウェブのその先」を描くための示唆に富むヒントとなったにちがいない。

FITC 2005
会期:2005年4月9日〜11日
会場:ウェスティン ハーバー キャッスル、トロント・カナダ
https://www.fitc.ca

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Yoshihiro Kanematsu

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