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エヴォリューション・カフェ

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

ガラス張りのエントランスに面したラウンジ。外には早春の突き抜けるような青空に港の景色が広がる。「えっ、これやばい」彼女は言った。「貴方の声が心地よい震えになって感じる」と。港湾倉庫を改造したムーディーな空間で、彼女の当惑しながらの微笑が照らし出される。照らすランプは、妖しくその声に反応して収縮し、より一層のムードを引き出すのだった。

情事の一コマは、一つの作品によって引き出された。相手の声を認識して心地よい振動を与えるソファ。その環境を察知して妖しく収縮するランプ。周囲の環境から得られる感動を増幅させることを意図した作品「サラウンディングス」は、その企みを十二分に発揮した。カップルにとって話の種になるアートは今まで存在しただろうが、物理的に密かに働きかけて親密にさせるアートなど今まであっただろうか。

「サラウンディングス」は最新のIT実用化の賜物として、日本最先端のIT研究を行っている慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の知財支援機関を通じて、特許の申請が行われたという。そう、ITとクリエイティビティーが結びついたアートは、私たちのライフスタイルを豊かにする新しいスパイスを与えているのだ。

IT革命と呼ばれて久しい。このように記事を世界中で読み、グローバルなデザインコミュニティーを共有できるのもIT革命のお陰である。しかし、五感でそれを実感したことはあるだろうか?時代の先を行くクリエイティビティーを持つからこそ、強度を持ったアートになる芸術家から、それを感じたことがあるだろうか?

ファミコンが生まれて20年、アップルがこの世に現われ、PCも手にできるようになって四半世紀がたった今、それに慣れ親しんだ「ビット・ジェネレーション」が、作品を生み出せるようになって初めて、それが実感できる作品が生み出されている。

実感できる作品を実感し、21世紀のライフスタイルを我が物にしてもらおうという展覧会が今、東京の隣の港街、横浜で開催されている。先の作品によってカップルが親密になる瞬間は、その展覧会での一コマである。この展覧会を企画した筆者はそのタイトルを「エヴォリューション・カフェ」と名づけた。ITによるクリエイティブで進化するライフスタイルの空間を沢山の人に経験してもらうためのパブリックな居間、すなわちカフェを展覧会の場に作ろうと考えたからだ。

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