夢を実現する前に死ぬな

HAPPENING


今年の夏、TVの広告スポットでこんな映像が流れるようになった。サラ・リバーズという架空の若いセレブが「デパートで買い物中にスカウトされたの。ほら!私の家を案内してあげる。」とゴージャスな家の部屋の様子が次々と写し出される。そして家の玄関を出ようとすると、キキーッという音と共に学生服の彼女が道に転がり、身動きしなくなる。

地下鉄のホームに張り出されたポスター。一見すると新人歌手のアルバム発売広告のようだが、中央に「キャンセル」とある。説明書きを読むと「14才の時、リル・ビッグは道路を横断中の事故により死亡。Don’t Die Before You’ve Lived(夢を実現する前に死ぬな)」。同じく女性新人歌手ヴァネッサの両A面シングル発売を宣伝するポスターにも「キャンセル」の文字があり、11才で同様に死亡したと書かれている。シングル収録曲は「I Told You So (だから言ったでしょう)」と「True or False (ウソかまことか)」、音楽雑誌が5つ星評価を与えている。

どれも強烈なインパクトを与えるが、これらは全て、4月からロンドン交通局がティーンエージャーを対象に路上事故による死傷者防止を呼びかけて行なったキャンペーン“Don’t die before you live”の一環。サラ・リバーズやリル・ビッグも架空の人物。若い時に路上事故に遭ったため、その後に来るはずであった名声や富を知らずに逝った、というわけだ。ヴァネッサもそうだが、彼女の場合、キャンペーンに因んだ収録曲名と音楽雑誌名も架空という懲りよう。

ロンドン交通局によると、2003年で717人の青少年がロンドン市内で歩行中に事故に遭った。ティーンエージャーの歩行中の事故のおよそ4分の1は登下校中に起こり、その中でも11才〜14才男子が道路を横断中に車輌と接触するリスクが高いという。多くは携帯電話で通話中、メール中またはヘッドフォンの使用で注意力が散漫になるのが原因だ。

なにもセレブや歌手にならなくても、自分の夢を生きたい気持はティーンエージャーならば誰でも持つもの。このキャンペーンは若い時につまらない事故に遭って夢を台なしにするな、という強烈なメッセージを放ち、多くの若者の感性に訴えかけ、ロンドン市内の交通事故による死傷者数の1割減など、実際に成果があったそうだ。また、TV広告の方は広告プロデュサー協会によって今年の広告トップ50に選ばれるなど、業界内でも評価も受けている。

Transport for London
Don’t Die Before You’ve Lived キャンペーン
日程:2004年4月から
地下鉄構内及びTV,FMスポットで展開
http://www.tfl.org.uk

Text: Sari Uchida

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