16℃の再設定

HAPPENING


エアコンが今世紀最大の発明だと称えられている常夏の国シンガポールでは、ある場所を説明する時にエアコンがある/ない、という点は欠かせない。日中の暑さの中、人々は熱を遮断するガラス窓に守られながら頭上のエアコンから送られる冷気に包まれているので、コートを着て過ごす。私達がエアコンの存在を当たり前のように考え、暑さを不快なものと考えているのは疑いようのない事実だ。

“16℃の再設定”は、シンガポールのエアコン事情—社会的良識(あるいは社会的良識の欠如)におけるエアコン問題とその程度—を探究するものだ。地元のアーティストであり講演活動も行っているポール・リンカーンによるこの個展はインスタレーションとして展示され、人々がエアコンに頼り、それを当然のように受け止めているという状況を批判する。

空間には稼動されたままの3つのエアコンが置かれ、空間の左手にある空気凝縮機が、冷気が循環するようになっている場所に、生成した熱気を排出し、ひとつの場所で熱気と冷気の空気の流れを作る。公共住宅地に隣接するこの感覚的なインスタレーションは、視覚だけではなく、肉体的な感覚にまで訴えかける。この皮肉な空気の層は、「ザ・エスプラナード」(芸術振興を目指すウォーターフロントの大開発計画)でも、インスタレーションとして展示されることとなった。そのインスタレーションは、公共住宅の写真の正面で送風機が稼動しているというものだ。このくだらないようにも見える試みと努力は何なのだろか。“16℃の再設定”は、めったに気に留めないけれども絶えず必要としているものに対し、もっと目を向けるよう訴えかけている。

人間が快適だと感じる温度は24℃だそうだ。エアコンが室内環境のコントロールを可能にするという理想に反し、もしかしたらコントロールされているのは逆に私達の方ではないか、とこのインスタレーションは問いかける。16℃という設定のなかで、私達の持つ妄想が私達の現実を歪ませている。

Sixteen Degrees Centigrade Reconditioned
会期:2004年8月9日〜9月8日
会場:P-10
住所:10 Perumal road, Singapore 218777
http://www.p-10.org

Text and Photos: Fann ZJ from npsea Enterprise
Translation: Ryoko Ogino

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