森本晃司
今月のカバーを手掛けてくれたのは、大友克洋監督の「AKIRA」に参加後、ケン・イシイのミュージッククリップ「EXTRA」、最近では「アニマトリックス」など、オリジナリティ溢れる独特の世界観と映像スタイルで国内外から注目を集めるアニメーション監督、森本晃司。今月7月、複合メディアショップ「SHOP33」と深厚が厚いという同氏は、15日に移転する「SHOP33吉祥寺店」の新店舗にて、初の作品集「Oレンジ」の出版記念エキジビションを開催する。現在、次なる映画の制作準備まっただ中という彼にインタビューを敢行。
まずはじめに、自己紹介をお願いします。
森本晃司。空中散歩人。44歳。絵師。
映画「マトリックス」のアンソロジーアニメーション「アニマトリックス」のプロデュースをはじめ、ミュージッククリップなどでも、アニメーション映像による独自の世界観を展開する「スタジオ4℃」には、創設から関わったとのことですが、その経緯を教えて頂けますか?
ハーレムを作りたかったので設立しました(笑)。でも、鵜匠になって操ろうと思っていたのに、今はなぜか逆に操られてます。
現在、どのような活動をされているのですか?
楽しいことならなんでも。基本的には、絵を使って遊んでます。他には、サウンド・キッカーズ(吉カーズ)というイベントを内密にやったり…(笑)。あと「SHOP33」と次なる野望を目論んでいます。乞う御期待。
アニメーターになろうと決意したのは、いつ頃ですか?何かきっかけなどがあったのでしょうか?
刺激を受けた作品は「宇宙戦艦ヤマト」の地面から主砲が出てくるシーン。男の下半身をイメージしました(笑)。あと「風の谷のナウシカ」の巨神兵がトリメキアのクシャナに命令され火を吐くシーン。あれはまさに男の射精なんですよ。2発目はゆるくて弱い…みたいな(笑)。反応してしまうのってそんなシーンばかりですね。共通項として監督が意識したかどうかは知らないけど、そういう男の生理的な部分って絶対隠されていると思うんですよ。その興奮するポイントって男ならわかるんじゃないかな。アニメーターになったのは、変なキャラクターが“こいつらどんな風に喋るんだろう、どんな声なんだろう”とか“何を言い出すんだろう”って考えるのが好きなので。動かすことでそのキャラが生きるんでそれが楽しい。人を驚かすドッキリみたいなものです。よく言えば創世主的というか“紙の上で神になる”という感じ?(笑)。
今月、7月15日からは、「SHOP33」の新店舗のオープンと同時に、個展を開催されるそうですね。どのような内容になるのでしょうか?初日に行われるオープニングパーティーでは、どのようなことをするのですか?
DJのQ’HEY君とCDを作ったり、SHOP33とユニットを組んで「大吉/大凶」というモチーフでいろいろな遊びをしてます。みんなにも馴染みの深い言葉の「大吉/大凶」のイメージを全く新しい解釈でビジュアル化しました。初の画集になる『Oレンジ』もちょうどこの日発売なので、オープニングパーティで居合わせた人にはサインしようかな(笑)。
『Oレンジ』ではこれまで描きためた500点以上の作品を集めたものということですが、今、この作品集を出すきっかけのようなものはあったのですか?
きっかけとしてはまず“区切り”ですね。“44歳の別れ”みたいな(笑)。あと自分のスケッチブックを“この時、自分は何を考えてたのかな”ってよく見返すんですよ。それが新しいアイデアになったりするんだけど、そのスケッチがあちこちばらばらになっていたので本になったら見やすいなと。そういう意味では自分のために作ったっていうのが一番ですね(笑)。でも今後たくさん作品を作っていく中で、本の中からキャラクターが出てきて動き出すっていうのがたくさんあると思うんで、アイデアノートをみんなで共有するみたいな感じでみんなにもその辺を楽しんでもらえればなと思ってます。名前がついてないキャラクターもフィルムの中に入ったらきっと素敵な名前がつくと思うんでお楽しみに。
今回のカバーデザインのコンセプトを教えてください。
好きです。愛です。Hのあとです。
「AKIRA」をはじめ、これまでに数多くの素晴らしい作品を手掛けられてきたわけですが、これから目指したいこと、新しく挑戦してみたいことなどありますか?
5次元みたいな作品を作りたいですね。5次元って誤った解釈の次元なんですよ。これからマンガも描こうと思ってるんだけどタイトルは「誤次元」にしようと思ってます。
今年は、日本のアニメ界の巨匠達の作品が続々と発表されていますね。日本のアニメは、他の国では例を見ないその独自性で世界から注目され、コミックや、テレビ、映画が海外で高く評価されていますが、日本のアニメについてどうお考えですか?これからどうなっていくと思われますか?
世界的に注目されたことで、いろんな国の人たちが入ってきて人材やいろいろなことが変わっていくとまた面白くなっていくと思います。
アニメ業界に関してはなるべく交通整理が行われないような媒体であって欲しいんですよ。もともと好き勝手できる媒体なのに流行っちゃったからといって、例えば国や大きな資本が入ってきて交通整理を始めてしまうと途端につまんない分野になってしまう。モラルとか倫理観とかうるさく言われ始めたら、自由に作品が撮れないとか遊べないってことになるんですよ。本来子供的な意識のものなので、大人的なものをあんまり持ち込まないでほしい。そういう意味でずっと無法地帯であって欲しいんです。無法地帯だともちろんつまんない作品もあればいい作品もあるけれども、とにかく数が多いっていうのが魅力だと思うんですよね。その中から面白いものや新しいものって生まれてくるわけだから。
個人的なことでは、ディズニーなんかもセルアニメーションをやめて全部コンピューターにシフトしたりしてるけど、それはつまらないなと思ってるので、みんながどう変わっても自分はやっぱり手で描いて2次元的なものを動かしていきたいと思ってます。
最後に、シフト読者へメッセージをお願いします。
いいセックスしてください(笑)。人を気持ちよくできれば世界は変わる。あとは画集『Oレンジ』を買ってください!面白い世界を共有しましょう。
森本晃司画集『Oレンジ』発売記念エキジビション
「大吉ハイ!大凶デス!」
会期:2004年7月16日(金)〜8月31日(火)
7月15日(木)18時よりオープニングパーティ
会場:SHOP33 吉祥寺店
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-22-5-1F
営業時間:12:00〜21:00(定休日なし
電話:0422-28-7515
http://www.shop33.com
Text: Naoko Fukushi