エル・コレクティボ・デ・ジュリアン

PEOPLEText: Gisella Lifchitz

『僕は、自分の存在したところに何か跡を残したい。僕が確かにここに居たということを、誰かに知ってもらうために。』- エル・コレクティボ・デ・ジュリアン

エル・コレクティボ・デ・ジュリアンは、ここブエノスアイレスで今、これぞ音楽と言われているバンドの一つ。彼らのファーストアルバム「コレヒアレス・エクスプレス」を聞いてもらえば分かるのだが、ブエノスアイレスらしさや考え方を、実にうまく表現する音なのだ。もちろんこの大きな街で考え方が一つとは言わないが、土地がらで、何か共通するものがあるものだ。このアルバムは、ブエノスアイレスの今と、バンドの作曲を手掛けるジュリアン・マッサルディの想いをミックスさせた作品らしい。

バンドはどのようにして、生まれたのですか?

曲を作っているうちに、バンドを組もうと思い、前に一緒にバンドをやっていたメンバーに声をかけました。最初、僕達は誕生日パーティーなので演奏をしていたのですが、次第にコンサートをするようになりました。僕はもともと、ベースだったのですが、コンサートをするうちに、自分は実は、歌うべきだと思うようになりました。ベースを担当していたころは、前には出ずに、ベースの後ろに隠れているようなところがありました。でも、世界にチャレンジし、その保護された場所から外に出なくてはと思っていました。このバンドの初のライブは、パーティーをオーガナイズし、いくつかのバンドのためにステージを作ってくれた友人の家でした。そして2000年に、サン・テルモという場所でデビューを果たしました。

バンド名の由来は?

これが、矛盾した名前なのです。もともとのコンセプトは、コンサートは毎回、何かをミックスさせたものにしようというものでした。「コレクティボ(コレクティブ)」という言葉は、スペイン語で2つの意味を持ちます。移動する「バス」という意味と、同じ目的に向かうグループである、「集団」という意味です。バスは、僕にとってインスピレーションをもたらしてくれる場所で、よく詩やメロディーなどを考えるときは、バスで長い時間を過ごします。また、「集団」という意味では、普通のパフォーマンスに、何かを加えたいという思いがあったのですが、少し複雑です。

僕は、ステージがあって、バンドのメンバーしか知らない曲を演奏し、曲の合間には異様な静けさ、そしてライブが終わるとバンドの友達がアンコールをし、バンドはステージに戻ってくる。そして完全にライブが終わると、観客はミュージシャンを見送り、会場を去っていく。僕はこういう、典型的なロックコンサートが好きではないのです。最後に残るのは、空虚さだけです。そのミュージシャンと観客の間の隔たりが好きではなく、ライブを音以上のもの、ビジュアル的なものにしたいと思っています。僕達は、例えば鮮やかなブルーのバス柄のシャツを着たり、観客に混じったり、ダンスをしたりなど、比較的小さめなパフォーマンスをします。また、歌う時はマイクを使いません。観客の受け身的な概念を壊したいのです。

このバンドのジャンルは何でしょう?ロックでしょうか?

ジャンルには分けたくないです。ロックは心地よい音楽だと思いますが、興味はありません。ロックの良いところは、ある意味単純なところですが、僕は、もっとバリエーションのある音楽を目指しています。バスに乗っている時に、ウォークマンで音楽を聞いていると、リラックスでき、なんだか希望に満ちた気分になります。とても落ち着く、大好きな時間です。楽しい音楽は、明るい気分にしてくれる。音楽こそ僕の人生です。

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