ライト・サージョンズ

PEOPLE

今回で5回目となる「Innovation Sessions」が、去る1月17日に東京・代官山の「Ballroom」で行なわれた。このイベントは、毎回多彩な顔ぶれのゲスト(過去には、ジェームス・ラベル、フーチュラ、生意気、エリック・ヘイズ等)を迎え行なわれる、東京で活動する若手クリエイターを対象に、クリエイター同士の新たな交流やネットワーク作りまたはアイデア発見の場を提供することをコンセプトとしたマルチメディアイベントだ。


今回は、GASからのDVDリリース、MO’WAXやニンジャ・チューンとのコラボレーション、また最近ではイギリス北東部・タインサイドのアーティスト達を題材にしたショートフィルム「CHIMERA PROJECT」が英BBCで放映されるなどしている、UKのクリエイター集団「THE LIGHT SURGEONS」(以下T.L.S)をゲストに迎え、技術革新により進化し続けるムービング・イメージの現在をテーマに、彼らの映像を交えたトークショウとオーディオ・ビジュアル・パフォーマンスの2部構成で行なわれた。

前半は、 T.L.S のディレクターでもあるクリス・アレンとロブ・レインボウによるトークショウ。彼らの映像を交え、制作過程やそれにまつわるエピソード、また今回のセッションのもう一つのテーマでもあるインスピレーションやイノベーションについて約 50 分間、興味深い内容の話を語ってくれた。以下、そのセッションの内容を抜粋したものを紹介しよう。

●T.L.Sの成り立ちについて

『1995 年に様々な分野のアーティストを集めこのグループを結成した。そして、非常にクラブカルチャーなどに影響を受け、特にヒップ・ホップに影響を受けた。そして、そのヒップホップで使用されている手法を方式を映像に取り入れようと思った。つまり、サンプリングしてカットアップして使うこと、勿論これはヒップホップの方法論なんだけれども。』

●クラブでのパフォーマンスについて

『実験的なことを試みる場であるが、それと同時に人と出会いネットワークを作る場であって、その中で様々な人とコラボレーションする環境を作っていった。』
『そういった中から僕達は、スライドだったり、16ミリフィルムだったり、ビデオを使った自分たちのビジュアル・ランゲージを作っていった。そういった手法を使ったのが、「SELECTED CUTS」のような作品なんだ。』

●モチベーションについて

『一般に聞き入れられていない言葉にフィーチャーして、どんどん皆に発信していくというのが僕達の作品のテーマでもあるんだ。』

●インスピレーションとイノベーションについて

『インスピレーションとは、旅であり人に会うことであり、色々な都市を巡ること。そしてロンドンというマルチ・カルチュアルな街に住んでいてホントに良かったと思う。そういったものを通して巡り会う幸運な出来事がインスピレーションのもとだ。』
『プラスティック・アイス・キューブ(その日配られていた、氷を模したライトを手に取り)の様に内から光るというのがイノベーションなんじゃないかな。』

以上が、コメントの一部を抜粋したものなのだが、その他にも政治的だったり社会的なものに対するメッセージなどを発信することも表現者にとって大切なのではと語っていた。

同時に上映されていた彼らの作品はコメントにも出ていたモンタージュ作品「SELECTED CUTS」やカリフォルニアのビーチで偶然知り合った男、ロバート・A・ワイザーのナレーションが入った音と映像と物語性にフォーカスしたショートフィルム作品「THUMBNAIL EXPRESS」、他にもインスタレーション作品である「STEALING BEAUTY」などなど盛りだくさんだった。以上のこれらの上映された映像とロンドンの彼らのスタジオで行なわれたインタヴューが納められているDVD「LOST LEADER」がGASからリリースされているので興味のある方は手にとって見てもいいだろう。

後半は、 T.L.S のサウンドマンでもあるDJのジュード・グリーナウェイと T.L.S の映像による、オーディオ・ビジュアル・パフォーマンス。細かい網目状のシートの向こうに機材を並べ、プロジェクターから投影された光の中でプレイする3人の姿それ自体が、ビジュアルとして興味をそそるデザインであり、中央、手前のシート、横の壁へ投影される映像がリアルタイムで音と同期する。

音と映像が同期することなど、現在では普通の事だと思いがちだが、テクノのような単調なビートとは違い、彼らのスタイルはヒップ・ホップという複雑で有機的なビートの上に映像を乗せていっているのに、なぜこうもピタリと映像がビートを刻むように動き流れるのだろうと不思議に思う。手法的なことでいうと、大量のカットアップされた映像素材をラップ・トップに保存していて、それをメインとなる映像に音を聴きながらリアルタイムでのせていくのだという。つまり、複数台のプロジェクターを使い普通に流れる映像とリアルタイムで操作できる映像のレイヤーを重ねるというもの。

また、多くの人がデジタル技術の恩恵を重要視しすぎる傾向がある中、彼らはアナログ的要素も大切にしているようだ。会場に設置されていたOHPプロジェクターもそうだが、オーディオ・ビジュアル・パフォーマンスのときもオープンリールのフィルムを回転する三角錐型の鏡に投影し、それを彼ら自身の手で回転させ、あたかも映像がフロアを動き回るような演出をしていた。
モーションダイブなどの高性能なVJソフトウェアで誰もが映像・グラフィックを扱いVJのようなことが出来る時代に、何がイノベーターとして大切なのかということも同時に、彼らのパフォーマンスから感じることができた。

音楽も、これから活躍が期待される(3月よりロンドンのクラブ・FABRICのレジデントを務める予定)“SCANONE”ことジュード・グリーナウェイによるヒップ・ホップ・トロニカ的DJセット。彼も、単にレコードを回すだけでなく、自前のサンプラーなどをつかった半ライヴ的要素をも持ったDJプレイ。フロアを上げすぎるでもなく、落としすぎるでもない実に心地よいグルーヴを T.L.S の映像と共に演出していた。途中、電源類のトラブルなどに見舞われたが、それを感じさせず忘れさせてしまうようなパフォーマンスを T.L.S の3人は披露してくれた。

イノベーションとテクノロジーの進化がアーバンカルチャーをどう魅力的にしていくかをムービング・イメージという観点から、ある一面を照らし出し、こういったシーンから刺激を受けた若いクリエイターの中からの新しいアイデアがどうフィードバックしてくるかが楽しみでもあり、また期待されるものであった。
次回、2月27日は大阪、28日は東京で行なわれる予定なので一度参加して肌で感じて見てはどうだろう。

Innovation Sessions #5
日 程:2004年1月17日(土)20:30 – 25:00
会 場: 代官山「Ballroom」
ゲスト: The Light Surgeons (Chris Allen, Jude Greenaway, Rob Rainbow, Nicky Godleib)

Text and Photos: Yasuharu Motomiya

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