デラウエア

PEOPLEText: Naoko Fukushi

ニューアルバムについて伺います。沢山のゲストが迎えられての、久しぶりのニューアルバムをリリースされましたが、この2枚のアルバム制作に至る経緯を教えてください。また、ニューアルバムそれぞれについて教えてください。

まず「AmeN(アーメン)」から。「アーメン」はドラムも含め、全ての音がケータイ電話でできています。僕らはケータイのことを、電話としてよりも、むしろ新しくてカジュアルな楽器/出力装置と考えています。「アーメン」は初期着メロにベリー影響を受けているから、世の中に蔓延する多くの音楽と比べると、著しく音数が少ない。音数を減らすことは、装飾でごまかせない、確かなアイディアと根本的にイイ曲が必要とされます。ビートルズじゃないけど、…naked!ですね。今はそれがベリー大切なことだと思えるのです。音数の少なさだけでなく音楽の表情が、クラシカルというか耽美的というか、これまでのデラウエアと違うのは、新しいメンバーの渡辺ヨシキの曲が大半を占めているからだと思います。彼はデラウエアに新しいニュアンス/魅力を与えてくれました。

逆に、シリコンバレーのDoo_Wopグループ「+eX+_&_+He_SpeecHeS」を起用した「デラウエアの逆襲」は、インスト・オンリーの『アーメン』に対して、全て歌もののアルバムです。+eX+_&_+He_SpeecHeSのアカペラだけでできた曲、デラウエアの演奏と+eX+_&_+He_SpeecHeSの歌、+eX+_&_+He_SpeecHeSのアカペラ演奏とデラウエアの歌、3つのタイプから構成されています。

「+eX+_&_+He_SpeecHeS」の声は、HAL9000を想わせますが、何故起用しようと思ったのですか?

いま世界中で一番イカシてるヴォーカリストって誰か?と考えてみたら、科学者のスティーヴン・ホーキング、あのコンピュータ・ヴォイスかな!?と思ったのが2年前くらいです。数ヶ月後、メンバーのタジリ君が+eX+_&_+He_SpeecHeSを発見してきた。彼らの声に、皆もうベリーシビれてしまって。彼らって、感情を完全に拒否したような声なんだけど、なんかコミカルで、ほのぼのとしてくる。HALは彼らのアイドルなんです。HALみたいに歌いたい、というのが、+eX+_&_+He_SpeecHeSの出発点ですから。

彼らの声って、エレクトロニクスに囲まれた僕ら現代人にとって、もはやノスタルジックでさえあると思うんです。そういう意味では、「デラウエアの逆襲」も「アーメン」も、21世紀のフォーク・ミュージック/アコースティック・ミュージックだと思っています。
こちらで少しだけ曲が聴けます。よかったらどうぞ。

2枚のCDエクストラには、どのような作品が収録されているのですか?

「デラウエアの逆襲」では、Ages 5&Upと「h/m/s_in_+he_rain」を、「アーメン」では、長谷川踏太(Tomato)と「walk_on_+he_hill」をつくりました。「h/m/s…」はグラフィックが時を表わす時計じかけのクリップ。「walk_on…」は、ユーザーが自分なりに丘を作るとその角度/大きさによって音楽の表情が変わるというインタラクティヴ娯楽作品です。

僕らみたいな音楽やグラフィックで、アルバム・セールスの収入で生活をするというのは、残念だけどベリー難しいです。でも2つのアルバムを観たり聴いたりして、デラウエアに仕事を頼もう!というクライアントが出てくる可能性は、無くもない。そのためには、デラウエアってこんなかんじ/こんなこともできるって内容が必要だったんです。その仕事の報酬で生活しちゃおうぜ!というのがデラウエアの人生プランです(笑)。だから今回のアルバムは営業ツールでもある。デラウエア/2004年春夏秋冬コレクション!なんです(笑)。

CDジャケットは、いつものドット絵オンリーではないですね?何故いままでと違うようにしようと思ったのでしょう?

ジャケットまわり/ブックレットは、デタラメと洗練が “いいかげん” でブレンドされたデザイン、CDを聴きながら、眺めているとより音楽を楽しめるものがいいなって思っていました。具体的には、歌詞や散文を楽しくデザインレイアウトすること、大胆な白場使いや裏映り、テキトーな下線などの小技を多用し、飽きのこないものをめざしました。そこで、白羽の矢を立てたのが、千原航。デザインもさることながら音楽がベリー好きというのが決め手でした。音楽のセンスがないデザイナーってまるで興味がないので。

千原氏曰く、『デラウエアと話し合って、ブックレットのデザインは “ダブ” にしようということになりました。デラウエアが基本のグラフィックを作り、ページ構成をする/それを渡された僕が、例えばジャケットではデラウエアのグラフィックをもとに、画面再撮とグラフィックデータを組み合わせました。ブックレット内もグラフィック素材の再撮影、同じベースのグラフィックを使い回したりと、デラウエアならではのダブ的なデザイン展開をしました。……それから、CD-R、インクジェットプリンターがカジュアルになった現在、どういうCDデザインがジャストなのかも意識したところです。家庭デザインであって、なおかつプロフェッショナルなものとは? それをイメージしてインクジェット用紙ばりに漂白されたマット紙を選び、中味のデザインもデラウエアが強く望んでいた、デタラメと洗練が“いいかげん”でブレンドされたデザインを心がけました』

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