NUEVA 2003

HAPPENING

「未来型」のフィルムフェスティバルを謳う「NUEVA」の前身となったのは、1998年にニューヨークで始まった「RETinevitable」。その仕掛け人でもあったデービッド・レヴィンを迎え、スペイン語で新しいを意味する「NUEVA」が、東京・原宿ラフォーレミュージアムで12月10日〜25日までの約2週間に渡って開催された。


会場に一歩足を踏み入れると、スクリーンが会場を囲むように円形に設置され、中央にも4台のモニターなどがあり、いたるところでこのフェスティバルに出展された作品が上映されている。一瞬その情報量の多さにたじろいでしまい、一体どこから観ればいいのか分からなくなってしまう。

過去数回のフィルムフェスティバルで経験してきたものとは明らかに違う印象を持った。通常、時間や日程などによって細かくプログラムが分かれ、その時その場所へ行かなければお目当てのフィルムを観ることが出来ないものだが、ここでは常に複数のスクリーンを使って、約160点もの出展されているフィルムを多少の時間待てば全てチェックできる。

それを理解できればあとは簡単で、片手にどのスクリーンで何が上映されるのか記載されているプログラムを持ち、テレビのチャンネルをひねる様にスクリーンやモニタを変えていけばいいのだ。音響装置も、各スクリーンごとにヘッドフォンが設置されているので隣の音と混じり合うことはない。

上映プログラムは多種多様で、ミュージッククリップからドキュメンタリー、モーショングラフィック、ショートフィルムまでアートフィルムと呼ばれる作品全般が網羅されていた。アーチストもイベント自体が持つ様々なアートとのコラボレーションというコンセプトどおり、映像作家、建築家、ファッションデザイナー、フォトグラファーなど多岐に渡っていた。

この多くの出展作品の中で特に印象的だったのは、グラフィックデザイナーの青木克徳氏によるドキュメンタリーフィルム「Kami-Robo」。題材となる人物は、造型作家でもある安居智博さん。彼が制作した紙で出来たロボットが織り成す想像世界を追ったストーリーで、20年間その手の中で「Kami-Robo」達を戦わせたことで培われた超絶技巧の職人的手捌きと、その世界を舞台に繰り広げられる、人間模様ならなぬロボット模様が見所だ。女性には少し分かりづらいかもしれないが、子供のころ超合金ロボット同士を戦わせたことのある人であれば容易に感情移入してしまう。幼少期への懐かしさと、このような個人的愉しみにフォーカスしたドキュメンタリーに興味をそそられた。ボクはこの作品がとても気に入ったので計3回ほど観た。

この様に、自分のお気に入りの作品を会期中であれば何回でも観る事ができるのがこのフェスティバルの良いところだろう。と同時にこの様に、いつでも好きな作品にアクセスできるという状況にいるということは、時々集中できない時間も訪れる。例えば、Aのスクリーンを観ようと思い、ヘッドフォンを着け集中しようとしたところ、たまたま目に入ったBのスクリーンに目を奪われ、音はAの音だが、映像はBというあべこべの状況になる。またAのスクリーンに集中しようとするが、やはりBの方が気になってしまって、結局Bへと移動。しかし、やはりAも気になってしまうという少し混乱気味の状態で、まるでテレビのように、サッカーを観ているのだが野球も気になって、チャンネルを交互にかえているうちに、どちらちもどうなっているのか分からないというような状況になってしまう。時たま訪れる、この様な状況を乗り切りつつ忍耐強さと集中力を持って、観て周るのも観賞のポイントだろう。

従来のフィルムフェスティバルとは違った観点から作られた「NUEVA」。特にこのユビキタス型の上映方法が、果たして映像の持つ価値を高めるのかどうかは分からないが、観客がこの経験を咀嚼、消化する事によって次世代の映像表現が生まれてくるのかもしれない。「NUEVA」のスクリーンがこれからどのような新しい映像体験を映し出していくのか楽しみにしたい。

NUEVA 2003
日程:2003年12月10日〜25日
会場: 東京・ラフォーレミュージアム原宿
主催: NUEVA実行委員会
出品アーチスト:スパイク・ジョーンズ、タグ・エイケン、ハーモニー・コリン、アトム・エゴヤン、ジョン・ガリアーノ、宇川直宏他多数
http://www.nueva2003.com

Text and Photos: Yasuharu Motomiya

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