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ドリ・ドック

PEOPLEText: Jiro Ohashi

1998年1月にサイトを立ち上げ、インターネット上で作品展開を行うウェブ・アート・ユニットとして活動がスタートした「ドリ・ドック」。
『視て、聴いて、楽しんで体験できるものとして、“音の出るオモチャ”(サウンドツール類)や“ゲーム”等、ネットならではのインタラクティブな作品を中心に発表を続けています』と本人たちがいうように、彼ら(もしくは彼女ら)の活動には必ず 「遊び」というキーワードが出てくる。

モーション・グラフィックを駆使して作り上げられるバーチャルな作品群は、アップロードされたデータの塊が、音を出したり、動いたり、グラフィックを描いたり…といった楽しいリアクションをコンピューターのモニタ上から返してくる。それは初めて書いた単純なHTMLファイルを、ウェブブラウザにドラッグ&ドロップした時の新鮮な驚き。 無味乾燥な文字列が、カラフルな画面となって立ち現れる時の快感といってもいい。

「ネット遊び」ともいえる一見幼児的なこの行いだが、そこにはテクノロジー自体の内包するエンターテインメント性と、ネットの先にいる人々とのコミュニケーションを前提としている。しかしそれらを「インタラクティブ・アート」「メディア・アート」と捉えずに、単純に「遊び」と言ってしまうのが「ドリ・ドック」の潔さだろう。とはいえ彼らは、コンピュータおよびネットのビギナーではない。「ドリ」と「ドック」は(この二人のユニットは活動の際、匿名でそれぞれこう名乗っている)、片や普段はウェブ・プロバイダー勤務、片やフリーのウェブデザイナーであり、二人ともウェブに関するベテランである。初心者特有の、単純で一過性の感動に突き動かされているわけではない。

サイト立ち上げから約半年後の8月には、ネットから実際のギャラリーに場を移し、ウェブ上で発表してきた作品を実際に触って遊べるものとして具現化した展覧会「dori dock version 1.0 in Tokyo」(青山:ギャラリー・プロモ・アルテ)を開催している。これはプログラムとしてのソフトウェア作品を、ハードウェアとして実体化させたものである。そのもっとも分かりやすい例として、「サウンドツール」と「ddロボット」がある。

前者は、「ローランド MC-303」のような、架空のドラム、ベース、シンセ音源一体型マシンを、ソフトウェア的に再現したヴァーチャル・サウンドマシン。フロッピーディスクにプログラムを収録したFD版と、実際にコンピューターとシリアルケーブルで接続するフィジカルコントローラとしての実物版を制作している。

後者は、彼らのイメージキャラクターを人体スケールのロボットとして作成したもの。お腹に埋め込まれたCDプレーヤーがオリジナルサウンドを再生し、その音はヘッドフォンへと送られる。眼球にはCCDカメラが装着されており、これもコンピューターに接続され、展覧会場の様子をロボットの見た光景として ウェブ中継する。

モニターの中の表現が現実の空間へ拡張していく試みは、これまでにも様々に行われており、RGBのグラフィック表現が印刷物としてCMYKに変換され、紙に定着していく過程などはその分かりやすい例であろう。ドリ・ドックの斬新さとその魅力は、コンピュータおよびインターネット上でのデータ・クリエイションと、現実のマテリアル・クリエイションとの絶妙なバランスである。

8月の第一回展覧会(Ver.1.0)を皮切りに場所を様々に移し、それぞれに異なるバージョンを予定している。こうした展覧会自体にソフトウェアのメタファを援用するのも面白いが、現代アートのギャラリーだけでなく、クラブやウェアブランドショップなど、エッジカルチャーの出会う様々な場所で展覧会やパフォーマンスを行っている。

10月30日には僕と浜里堅太郎で主宰するクラブイベント「E-Regular」にVer.1.1として参加してくれた(浜里は「サウンドツール」の音源制作も担当し、実際にライブで、ダンサブルなドラムンベースサウンドを聴かせている)。
最新バージョン(展覧会)は、11月にSHOP33原宿店にて行われるVer.1.2。 その後、年内は都内各所のクラブイベント等に参加予定。

Text: Jiro Ohashi

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