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レスフェスト 2003

HAPPENINGText: Aya Muto

MICHEL GONDRY RETROSPECTIVE

ドラマーとして活躍していたバンド「OUI OUI」のミュージックビデオを作り始めたところから映像作家のキャリアを築きあげたミシェル・ゴンドリ—。80年代に作られたという「La Ville」という曲のビデオは完璧エイティーズながらも、今見ても斬新なアイディアと映像編集力(良ーく探して下さい。本人も出ています)。OUI OUIのビデオにいち早く眼を付けたビョークとの数々のコラボレーション、そして最近ではゴンドリ—が手掛けたレゴのビデオが知られるザ・ホワイト・ストライプスとの継続的なコラボレーションによって、彼の確信犯的映像実験は続けられる。ドラマーとしてのリズムへのこだわりと、幾何学的表現、繰り返し行為への視覚的応用で、どの映像にもゴンドリー印が焼き印される。ダフト・パンクの初期傑作、AROUND THE WORLDではディスコ鍵盤、ベース音、ギターなどのセクションごとに仮装したダンサーを丸い階段状のセットに位置し、それぞれの音にあわせ、振り付けが工夫される。「真ん中のミイラはマイケルジャクソンへの敬意だよ」と冗談めいて見せるのも5年前制作のこの作品に対する自身の現れに他ならない。

最近のプロジェクトでエントリーしたのはカイリー・ミノーグの「COME INTO MY WORLD」、これまた、ザ・ホワイト・ストライプスの「THE HARDEST BUTTON TO BUTTON」。前者は街角四方を使って、ミノーグが歩き回るたびに全てが2重、3重にと増えていく(あっぱれのデジタルアフターエフェクトは、ゴンドリーの弟オリビエによる)。見事なフローとどこまで行くのか的な限界への挑戦精神で、返り咲きを試みるミノーグまでをもキュートにクリエイティブに見せる。(ゴンドリーを見つけだしてきた彼女のプロダクションにブラボーを送ろうではないか。)後者は32セットのドラムセット(「メジャー・レーベルのミュージックビデオのバジェットにしたらたいしたことない出費さ」とゴンドリー)を駆使してバンドのシンプルな音を効果的に、視覚的にみせた作品。バンドの顔でありながら、神経質で有名なジャック・ホワイトの「何がおこっているんだかわからない」的な表情も手伝って(実にキュートだ)視覚的にもリズム感のある音の異空間が作り出される。

彼自身がロスの街角あちこちでドラムセットを広げて演奏した映像を編集し、サンプリング使用した「Drum and Drummer」も必見。自分をカメラの前に立たせて実験するその純粋な遊び心がいつまでもゴンドリーを映像のフロンティアに立たせることだろう。

SPIKE JONZE RARITIES

ファットボーイスリムのビデオ、「PRAISE YOU」のダッサダサダンサー軍団を覚えているだろうか。その名も「Torrance Community Dance Group」という架空の団体を率いる男こそ、リチャード・コフェーことジョーンズ氏なのです。(ここで明かすのもどうかと迷ったのだが、少なくともそうすれば会場で「あれってスパイクでしょ?」などという野暮な発言をしなくてすむはず。ロスの会場は上映後のランス・バングスとのQ&Aでも、誰一人として神話を壊す者はいませんでした。あっぱれ。)そのビハインド・ザ・シーンをドキュメンタリー(モキュメンタリー?)として撮影仲間のランス・バングスが、「TORRANCE RISES」として作品にまとめた。近所の教会地下での練習の様子から、振り付け案のぶつかり合い、そしてリンカンセンター(NYC)でのMTVミュージック・アワードステージで踊りを披露するハイライトまでを見事な感動のスペクタクルでお送りする。スパイク…いや、リチャードの没頭ぶりには最後に思わず涙します。

そしてその他にもスパイクのレア作品が倉庫から引っ張り出されてきています。「THE OASIS VIDEO THAT NEVER HAPPENED」は、バンド、オアシスの人気絶頂期に、懲りずにスパイクアタックでアイディアを仕掛けたら思いっきりボツられた、という傷(笑)を癒すかのごとく、そのアイディア収集の足跡を辿る。ごく普通の人たちがこんなにもおかしいのはきっとジョーンズのレンズを通す魔力に違いない。普通であって、そんな自分を堂々と見せるということは実にカッコイイ。そんな美学がジョーンズのドキュメンタリー作品にはいつもにじみ出ている。

そしてあの!クリストファー・ウォーケンをケーブルで吊り、ファンキーダンスムーブ(あれはウォーケンが6歳の時に習ったダンスムーブらしい。彼の年齢になり、それをなんてことなく引き出しから出して来れるウォーケンはやはり尊敬に値する)を披露させた、あの有名な作品はみなさんご存じだろう。これまたアイディア勝ちで、大御所にうんと言わせてしまう、そのジョーンズ魔力がご披露される。ウォ—ケンの独特のしゃべりで楽しめる「WEAPON OF CHOICE: FATBOY SLIM WITH CHRISTOPHER WALKEN COMMENTARY」もお見逃しなく。

レスフェスト2003 ワールドツアー
ワシントンD.C./10月3日〜5日/グロスベノー・オーディトリアム・アット・ナショナルジオグラフィック
ニューヨーク/10月9日〜12日/バウエリー・ボールルーム/トリベカ・パフォーミング・アーツ・センター
シカゴ/11月7日〜9日/ミュージアム・オブ・コンテンポラリーアート
東京/11月21日〜24日/ラフォーレミュージアム原宿
大阪/12月5日〜7日/なんばHATCH
博多/12月12日〜14日/IMSホール
この他にも、10都市以上での開催が予定されている。
主催:RES MEDIA GROUP (米国ニューヨーク州ニューヨーク市)
http://www.resfest.com

Text: Aya Muto
Images courtesy of Resfest

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