レスフェスト 2003

HAPPENINGText: Aya Muto

レスフェストに足を運ぶようになり3年目。毎年毎年これだけの進化/変化を見せる映画祭は、他にないといっていいだろう。なにしろ、お題がテクノロジーの最先端をいかにアートに生かせるかということ。フェスティバル・ディレクターのジョナサン・ウェルズが説明するように、レスフェストから生まれたアニメーションテクニック「ロトショップ」(リチャード・リンクテイラー監督の『Waking Life』で使用された)だってある。アートディレクター達が新しい才能を漁りにくるのでも有名なフェスティバルだ。9月24日から28日までロサンゼルスで開催されたフェスティバルから最新情報と注目作品をお届けします。

The Winner of Resfest 2003 (Holland | 2003 | Dir. Johan Kramer)
アムステルダムの著名な広告代理店「KesselsKramer」の共同創設者、ジョハン・クレーマー(彼は今フェスティバル「OFF THE MAP 部門」のドキュメンタリー『The Other Final』も監督)による賢い自己妄想フィルム。曇り空とグレーな空気が実にオランダで、眩しいくらいの青いスーツに身をまとった主人公の、絶妙なフレーム位置におもわず膝を打つ。レスフェスト2003の勝者、というタイトルにも実はふさわしいコンセプトと完成度。

Salami Fight Association (US | 2003 | Dir. Douglas Avery)
ベーコンがこんなにセクシュアルだったとは。無機質などこにでもあるアパートの一室。サラリーマン風の画体のいい赤ひげの男が慎妙な面持ちで登場。何を引っ張り出すかと思ったら、数パックのベーコンとダックテープ(強力ガムテープ。銀色で繊維がはいったものが規格商品となっている)。それを世にもおぞましい方法で身にまとい、びちびちと男の真剣勝負が始まる。肉に対する果てしないまでの執着。これを観た後にベーコンを食べれるあなたは、実に勇敢。

Ninja Pays Half My Rent (US | 2002 | Dir. Steven K. Tsuchida)
世界の忍者に対する尊敬と畏怖は日本の皆様の想像を超えたもの。子供の頃「ニンジャ」に真剣になりたいと思っていた、という人に会うことも稀ではない。生活空間をシェアすることが浸透している(特に都市において)ようで、実はドアの向こうに隠された様々な葛藤が。それをニンジャファンタジーに絡ませて展開させたのがこの作品。素早く、静かで、いるかいないかわからない。そんなルームメイトが実は理想的だったりして。

The Japanese Tradition: Relationships (Japan | 2003 | Dir. Namikibashi as Junji Kojima & Kentaroh Kobayashi)
待っていました!昨年の『Japanese Tradition: SUSHI』(DVD Best of Resfest#3 にも堂々エントリー)シリーズの再来は喝采を持って迎えられました。海の彼方の東の果て(Far Eastと実際言います)の国、ニッポンの伝統と作法を丁寧な分析でぴしゃりと提言。今回は福永武彦の『愛の試み』のように、概念を実証するエピソード付き。実写とアニメーションの実に効果的なミキシングに会場は識者がいるかのような統括された笑いの渦。小島淳二監督(テーヴィーグラフィックス代表)、貴方はサイコーです。

Mulit (US | 2003 | Dir. Ivan Zacharias)
Hollywood が Bollywood に追い付いた!世界中にその華やかな姿を誇示するハリウッドだが、実はボリウッド(インドはボンベイの「ボ」をとって)の方が年間制作本数で群を抜く。それにしても決まったストーリーライン(美女が暑苦しい<それともカッコイイ設定なのか?>男との恋模様を、いやよいやよ、好きよ好きよでダンスに盛り込んだ徹底プロデュースの大ミュージカル。)でこれだけの歴史を築いてきたボリウッド。ついにはショートフィルム先鋭陣にもその熱が。偉大なるアメリカ神話「マレット」(てっぺんが短く、襟足が長いという実に醜くも美しい髪型)が生まれたのがインドだったとは(笑)。

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