ビーナス・プロジェクト展

HAPPENING


国際色豊かでさまざまな顔を持つ街、ブエノスアイレス。そんなこの街で5月12日に開催されたのが、ビーナス・プロジェクトという展覧会だ。会場は、ラテン・アメリカ美術館。

南半球に位置するブエノスアイレスの今の季節は秋。開場を待ちわびる人たちに向けて、マリバ美術館のドアが開かれた日は、小春日和のようなぽかぽか陽気。ここからが忙しい午後のはじまりだ。と言うのも「フレンドシップ・テクノロジー」と「ザ・ビエンナーレ・オブ・タンディル」というビデオ作品2本と、現代美術に関するディベートがその日の午後に催されたからだ。

その討論会の内容はどうだったかというと、おもしろくもなければ深くもないという残念なもの。開場にいた誰もが、早く終わらないかな〜と思っていたに違いない。そんなのいいか悪かなんて決めれる事柄じゃないのでは?というある勇気のある発言があるまで、ただひたすら政治的芸術と気軽な芸術について論議を交わせている始末なのだ。もちろんもうひとつの討論会も、オ−ディエンス同士が「あ、どうも」とあいさつを交わしている間に、こちらは決着がつかないまま終結を迎えるというありさまだった。

さて、そんな中でも一番おもしろかったのが、プロジェクト開始から終わりまでを克明に紹介した、ビーナス・プロジェクトの上映会だ。今年で発足1周年を迎えたビーナス・プロジェクト。意見、グッズ、サービスをオンライン上で交換することを目的に、社会的な実験として、アーティスト、化学者、知識人や一般人などが集結してスタートした。オートマティックで一時的なゾーンでのみ、ビーナスの社会は存在する。

「プロジェクト自体が技術的なものではなく、すべての人が参加できるようなコンセプトが、要望や希望を実現できるか否かが一番重要なポイントです。それには、お互いの協力しあう姿勢が大切です。現在は、企業や州からの援助を受けているので、このプロジェクトが一歩先を行った、そして他のセクターとも直接結びついた存在でいられるのだと思います。お金は、交流やコラボレーションを企画する際の、一種の尺度でもあり、かなり決定力が強いものだと解釈しています。アーティスト自体が、他のアーティスト達の作品から刺激を受けるような、そんな根本的なプロジェクトです」と語るのは、スタート・ファンデーションの実行委員長でもあり、バーサス・プロジェクトのキュレイターでもあるロベルト・ジャコビー。だからこそ、批評も多く厳しい状況下においても、260組のグループ(この数字は現在も増加中)が生き残ることができているのである。作品を交換したり、講議を開いたり、それを受けたり、何かを作り上げたり、雑誌に寄稿したり、わくわくしてしまいそうなプロジェクトを始めたり、ポップミュージック・バンドを再結成したり、作るのを決して止めなかったり…。そういったことすべてが、遊び心満載の創造性豊かな精神で行われているのだ。そしてそこには、すべてに共通する究極
の答しかない。

昨年私は、とても不思議な祭典に参加した。遥か昔に発行された雑誌、世界中から集められたユニークなキャンディー、写真のコピー、かっこいいビンテージものの古着、フランス語講座などが、一挙にひとつの場所に集められているのだ。その祭典が行われているビルの2階では、この祭典でアシスタントとして活動している人たち全員の肖像画を描く人の姿も。誰かを捕まえては、その人にとって最高の笑顔をするように強請していた。また階下では、当時成長株だった「ポーレン」というバンドを発見。11人程度の少女達が、この不思議なバンドを囲んでいたが、彼女達以外、オーディエンスの姿は見当たらなかった。日を追うごとにプロジェクトはその規模を拡大していく。ビーナスのメンバーが今憧れているのは、快楽主義と、人生を楽しんでいる様を写真として収めてもらうこと。ビーナスという団体は、一体何なんだろう?そんな疑問が自然に沸いてくるが、その実態を掴めている人は誰一人いない。私達の誰もがビーナスの一人になることができ、お金や抱えている問題など関係なしに美の世界を共有できるのだ。必要なのは、自分らしくいることのみ。ヒッピー精神から回復した人たちが、希望のかけらもない大地に新しい種を自由に蒔くことができるのが、それがビーナスなのである。

Venus Project
会期:2003年5月12日
会場:MALBA
住所:Av. Figueroa Alcorta 3415 Buenos Aires, Argentina
www.proyectovenus.org

Text and Photos: Gisella Natalia Lifchitz
Translation: Sachiko Kurashina

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