ウィーワークフォーゼム

PEOPLEText: Sachiko Kurashina

なぜサイトを閉じてまで、パッケージングしようと思ったのでしょうか?今回のこの試みの目的は?

いろいろ理由はあるのですが、作品を全部一つにまとめる時期が、たまたま今だったのだと思います。この3つのサイトへのトラフィックが、かなりあったので、オンラインとして運営していくのが、コスト的にかなり厳しくなったことも一理あります。また、今まで僕達はオンライン上で沢山の作品を紹介し続けてきたので、僕達のことを「ただの」ウェブデザイナーだと思い込んでいる人たちが多くなってきてしまい、そういうのにもウンザリしてしまったのもあります。

また、過去2年間に僕達が行ったクライアント・ワークが5件ぐらいだったのですが、プリントワークがそれの何倍にも多くなったのも理由のひとつです。プリントワークを通じて、クライアントワークも増えたので、これはこれで良かったことです。でも同時に、今ここで終止符を打って新しい方向性を見い出す時なのだと思いました。

全ての作品をCD-ROMと本に収録したのは、オンライン時代に作品を楽しんだ人たちに、もう一度作品を見ることができる機会を与えるのと、なぜ僕達がこの作品を制作したのかや、作品に込めたアイディアを知ってもらうためです。常にウェブがベースとなったアート作品を扱ってきて、しかも通常のウェブっぽさと比べてかなり奇抜な作品ばかりだったので、それだけだとその作品についての説明はあまり必要とされていませんでした。でも実は、そういったプロジェクトに関する裏話というのはかなりある。この本では、その裏話がきちんと、そして適切なフォーマットで紹介されていると思います。

実際にサイトがオフラインになり、パッケージングされたものを目の前にして、どのような感想を持っていますか?

今までの作品を全て、形あるフォーマットに納めることができて、本当に良かったと思っています。この「ワン」というパッケージに、何年もの間に積み上げられてきたプロジェクト、アイディア、流して来た汗や涙が込められています。言葉だけでは、僕達にとっては何かを説明するには不十分なので、CD-ROMも付けました。本だけでも、まとめたり、コンセプトを考えたり、書いたりする作業に1年という時間を費やしました。今のところリアクションはポジティブなものが多いですね。そういった前向きなコメントをもらうと、正しい方向に進んでいるんだな、という確信につながりますし、これからも正しい方向に作品を持っていこうという気にもなれます。

サイトを閉じるということは、自身のポートフォリオのプレゼンテーションという機能がなくなるとも考えられますが、そのことについては「マイナス」として捉えてはいないのでしょうか?

サイトを閉じるということを、良い意味としてとることもできると思います。と言うのも、WWFTのサイトにある“ポートフォリオだけ”を、ストレートにプッシュできるからです。5種類のサイトが一度に運営されていると、サイトを訪れる人にとっては、どのサイトに行けば僕らに辿りつけるか困惑してしまうことがよくありました。なので、全てのサイトをカオス的ではなく似通ったものにし、WWFTのサイトにあるポートフォリオに行きやすいようにしたのです。

現存するサイトを今回のように閉じるということはなくとも、これからも本やCD-ROMといった媒体を使って、あなた達の考えやプロジェクトなどを発信していきたいと考えていますか?

「ツー」も予定しています。でもそれがいつ発表されるかは、神のみぞ知るといった状態です。実は次のメディアとして僕達が注目しているのはDVDです。今まで本当に長い間ウェブに関わって来たので、今の僕達には、ウェブへの興味は0%に等しい。同じ場所にずっと居たり、ぬるま湯に浸かり過ぎるのはあまり好きではないのです。4年間という時間を、ウェブというメディアでの作品紹介に費やして来たというだけで、今は充分です。いろいろなメディアに通じる道はあると思うし、ブラウザーベースのインターネット作品ではない他のものに関するアイディアもあるはず。僕達のサイトに、色々な種類のプロジェクトが沢山あるのも、これが理由です。

今後はどのような展開をしていきたいと考えていますか?

このスタイルで毎日過ごしていきたいですし、タイプフェイス、ロゴ、プリント、ブランディング、DVD、ウェブ、コンセプト、3D、トラディショナル・アートなどなど、いろいろなメディアを毎月ひとつずつ挑戦してみたいです。そうすることが好きなのもあるし、そうやって前進し成長して行けたらな、と思って。そうでもしなければ、すぐにマンネリ化したつまらないものになってしまいますしね。もしパターン化された生活がしたかったら、織物工場できっと働いていると思いますよ。

WeWorkForThem “ONE”
仕様:Book + CD-Rom
価格:26ドル
info@youworkforthem.com
https://youworkforthem.com

Text: Sachiko Kurashina

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