サル・ヴァニラ「インター/アクション」

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

2日間とも観賞したのだが、即興演奏ということもあって両日とも異なったサウンドスケープを体感できた。これは、ライブパフォーマンスによる即興演奏の醍醐味でもあるのではないか。コンピューターを使って演奏する以上、データーは変わることは無く、それゆえにラップトップによるライブは、“再生”か“演奏”かというところで曖昧になってしまう。しかし、複数人のアーティストが、ラップトップ・コンピュータを使い即興という、有機的な行為でお互いの音を絡ませて行うことは、そうした問題を回避する一つの手段になるのだろう。だからこそ、演奏しているアーティストたちも手探り状態であり、このスタイルの完成形を見る事はできなかったが、アイディアは面白いものだっただけに、まだ探求の余地があるという印象を持った。

後半部分は、サル・ヴァニラによるミックスメディアパフォーマンス。都市情報空間におけるコミュニケーションリアリティーをテーマに、パフォーマンスがアリーナの中心に設置された舞台で展開された。未来的な衣装をまとった演舞者達は、舞台を一杯に使いリズミカルに力強く動き回り、都市に住まう人間のパラノイアを映し出していた。そこには人間的なものを排除した先に、人間の苦悩のようなものが浮かび上がるのではないか、という印象を観る者にもたせ、中央部分に設置された、伊東篤宏作の音具「オプトロン」の放つ光は、都市の持つ光を連想させた。そして、音楽はノイジーな電子音と生ドラムによるライブでダークな響きを奏でていた。決して心地いいものとはいえなかったが、目を逸らすことはできないリアリティーの持つ力強さをパフォーマンスから感じることができた。

都市の中心部の空の下で音楽とアートを体験する機会は、なかなか無いもので、高層建築物の谷間から見える空を見ながらこういったパフォーマンスアートを観ることはとても良い経験だった。そして、こういったスペースが都市に増えることで、都心に住む多くの人々が気軽に足を運ぶことができ、またアーティストにはこのような場所でしかできない表現形態を生む可能性を持たせるのではないだろうか。

INTER/ACTION – BIRTH PLAN BY SALVANILLA
会期:2003年6月27日、28日
会場:六本木ヒルズアリーナ
住所:東京都港区六本木6-10-2 六本木ヒルズ
info@salvanilla.com
https://www.salvanilla.com

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Yasuharu Motomiya

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