ナンド・コスタ

PEOPLEText: Sachiko Kurashina

今月のカバーデザインを制作してくれたのは、ブラジルのアーティスト、ナンド・コスタ。24歳の若手アーティストながらも、その才能はプリント、インタラクティブ、アニメーション、ウェブの経験を経た今、見事に開花している。ドイツの美術書籍出版社、ディ・ゲシュタルテンから本とDVDのリリース、そしてサンフランシスコを皮切りに9月18日からスタートするレスフェストでの作品上映など、彼の世界に触れる機会が増えそうな嬉しい予感もする。ブラジルのアートをもっと沢山の人に知ってほしい。そう願う彼に、お話を伺った。

まずはじめに自己紹介をお願いします。

カルロス・フェルナンド・ファリア・コスタです。友人や家族からは「ナンド」と呼ばれています。アーティストとしては、ナンド・コスタの名で活動しています。ブラジルのリオデジャネイロの生まれで、小さい頃からペインティングやドローイングに親しんで来ました。芸術系の高校でドローイングを学び、卒業後、3年間カレッジでグラフィックデザインを勉強しました。大学1年の時からデザイナーとして活動を始め、その時期にプリントメディアからインタラクティブメディアに転身しました。最近は、アニメーションのスキルを磨いています。様々なメディアで働いて来た経験は、思わぬところで役に立つのでとても貴重なものです。プリントデザイナー時代に身に付けた技術は、ウェブの世界に足を踏み入れた時から、更に熟練したものになったと思いますし、また、ウェブアニメーターとしての技術も、テレビやDVDのプロジェクトに携わることで、その磨きにも拍車がかかったと思います。アメリカで活動を始めて3年になりますが、自身のプロジェクトやペインティングに集中する為に帰国することにしました。

ブラジルの出身ですが、アトランタ、ニューヨーク、シカゴ等、アメリカでの活動経験もありますね。母国ブラジルを離れ、アメリカに渡ったのは理由は何ですか?また現在は何処を拠点に活動していらっしゃいますか?

子供の頃からアーティストになるのが夢で、ペインティングやドローイングを制作しながら暮らせていけたらなぁ、と思っていました。そして成長し、様々な経験を積むうちに、アーティストになることは想像したよりもずっとハードなことなんだ、と気付きました。高校を卒業し、2、3年アートのフィールドで経験を積んだ後、リオデジャネイロの厳しいデザインマーケットよりも、アメリカへの興味が強まりました。アメリカのデザインスタジオで、中間レベルのフラッシュの技術を持ったデザイナーの需要が高かったのも、私にとっては、家族、友人、故郷を離れる理由の重要なポイントでもありました。アメリカで様々なクライアントとの繋がりを深め、そしてできる限りいろいろなことを吸収したお陰で、リオデジャネイロに戻り、独立して活動しようという決心がついたのです。現在はアメリカのシカゴに住んでいますが、9月の始めにはブラジルに帰国します。

一般的なブラジルのイメージといえば、サンバ、コーヒー、そして一番強いのはサッカー王国だということだと思います。アートに関するイメージは残念ながらあまりクリアではないのですが、実際の所、現在のブラジルのアートシーンはどういった感じですか?また、ブラジルとアメリカのアートシーンの違いがあれば教えて下さい。

メディアの間違った情報伝達のお陰で、ブラジルに関する事実とは違ったイメージがみなさんには埋め込まれていると思います。ブラジルの文化の違った部分がスポットライトをあびることは、 テレビ番組では滅多にありません。いつもカーニバル、女性、サッカー、社会問題ばかり。このようなイメージを最小限にするプロジェクトを、 最近手掛けています。このプロジェクトはウェブに繋がっているのですが、これを通じて少なくとも、才能溢れるリオのアーティストや、国内のその他の地域のアーティストの作品をみなさんに紹介できることでしょう。このサイトは「ブラジル・インスパイアド」といい、地元で生まれたアート、デザイン、音楽、そしてエンターテイメントを紹介するものです。コンテンツは英語表記なので、地元の人たちだけではなく、世界中の人々も楽しむことができると思います。

現在24歳のナンドさんは、同世代の私からは、単身でアメリカに渡り、デザインの経験を積み、数々のカンファレンスへの参加やクライントワークをこなし、とても勇気と行動力がある人に見えます。そのパワーの源は何ですか?

バーに行ったり、パーティーに参加したり、友人達と頻繁に遊んだり、人と接するのが好きだからではないでしょうか。アメリカ時代に持っていた目標は、できる限りいろいろなものを学び、そして何かを成し遂げることでした。私はたばこも、もちろんドラッグもやりません。お酒もめったに飲みません。そのお陰で長時間起きていたり、仕事に集中するのは簡単なことでしたし、またそれが、私にとってはセラピーのようなものでした。家族の中にアーティストが多いことも、パワーの一つだと思います。母は彫刻家ですし、兄や弟も広告やデザイン業界で働いています。祖父も画家で、その他の家族もアートの世界で生きている人たちが多いです。そのことが何らかの形で、私がプロジェクトに熱中するのを促しているのでしょう。また、信頼が置かれた上でのクライアントワークは、私にとってセルフプロモ-ション作品と同様に、個人的な存在になるのも一理あるかもしれません。

99年から始まったパーソナルショーケースでもあるハングリー・フォー・デザインでは、ナンドさんのビジュアルに対するアイディアが紹介されているとのこと。このサイトについて詳しく教えて下さい。

このサイトの第一段階的なアイディアは、デザインやアートを勉強する学生だけではなく、プロの人たちにとっても便利なリソースになるサイトを作ることでした。ブラジルのアーティストの作品を紹介する他に、アートやデザインの歴史、そしてイベントや展覧会の最新情報を掲載する予定です。私のサイト自体が、個人のポートフォリオ色が濃くなってしまったので、ブラジル・インスパイアドという新しいサイトを作ることにしたのです。

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