NIKE 公式オンラインストア

「ブリトニー・スピアーズ」展

HAPPENINGText: Aya Muto

ブリトニー・スピアーズが制服に身をまとった「Oops! I Did It Again」が賛否両論、一世を風靡したのが1999年のこと。かのスクールガールはすっかり成長して、今では複数の体格のいい男達と絡み合うように身体をくねらせ、その一方で未だに純潔を宣言する。そしてそれを十代の少年少女達が愛玩視する。

あの圧倒的パフォーマンスなのか、キャッチーなダンスチューンにのせられた機械音のような声なのか。それともアイコンと成り果てたブリトニー・スピアーズの矛盾を見抜いたうえでの称賛なのか?ティーンエイジャー達の頭はそこまでひねてないと仮に信じることにして、しかしその上の世代はスピアーズというアイコンに疲弊している。一般社会ですり減ったこのアイドルのイメージに注目したのがサンフランシスコ・アート・インスティテュート、ニュー・ジャンル学科の教授トニー・ラバト。スパイラルギャラリーで行われたブリトニー・スピアーズ展は彼のキュレーションのもとに行われた。

ニュー・ジャンル学科では、従来のアートスクールのミディアム別アプローチではなく、視覚的表現/思考への取り組み方全般を鍛えることを目的とし、生徒のあらゆるアプローチを奨励している。伝統的メソッド(ペインティング、彫刻、写真)に加え、映像、マルチメディア、インスタレーション、パフォーマンス、さらには新しい表現方法が枠に捕らわれることなく評価される。意義形成に至るまでの方法論の展開が重要視され、生徒達は繰り返しそのプロセスを掘り下げ、表現者としての自己と向き合うことになる。

ラバト氏は比較評論を教えるなかで、学校という枠を越えたところに生徒を出すことにも意味を見いだす。『このキュレーションもそれぞれのアーティスト達が作ってきた作品やその姿勢に触発されて生まれたテーマを、サブテキスト的に、完ぺきに説明してしまわない形で一つのグループ展にしたもの。半数の作品はすでに「ブリトニー・スピアーズ」というテーマを言渡す前にそれぞれが作っていたもの。このグループ展は二人を除いて皆男性。ブリトニー・スピアーズという少女を中心としたカルト現象をサブテキストに、男だってそうあれるぞ、というところででき上がったグループ展といえるね。』と氏。このテーマを掲げるところにもみえるように、自身もアーティストであるラバト氏はメディアとポップカルチャーに強い感心を持つ。


Albert Herter

未だ1年目というスパイラルギャラリーはダウンタウン近くの住宅街の2階にスペースを持つ。階段を上るとネオンの渦巻きに迎えられ、古い建物特有の空間に吸いこまれる。入り口スペース、メインスペースへと導く廊下、そして天井の高いメインスペース。他にも一つ二つ謎の空間が存在しそうな作りだ。作品の配置が実にまたみごとに計算されていた。まずは画面が二つに割れた少女とブリトニーのビデオに迎えられる。これはあどけなさと成熟の矛盾をついたセス・マイヤーズの作品。左側にはソファーに腰掛けた少女がブリトニー鉛筆などについて熱心に語っている。と思えば右側では挑発的なブリトニーのビデオが故意に編集され、繰り返される。この作品はポスタープロジェクトと同時進行に行ったという。DVDはギャラリーに、ポスターは広告イメージのありふれたロスの道端に。作品の配置までもが計算づく。


Erik Seidenglanz

メインのスペースでの作品をいくつか紹介。アメリカーナの行き着くところの、スクールガールというイメージへの執着を壁にディスプレイしたエリック・セイデングランツ。イヤーブック用のポートレートからビンテージアディダスパンツまで。物語はベッドにそのパンツをはいて上半身裸で悶える青年の写真で完結するという起承転結のはっきりした作品。そして注目を集めていたのは彼の愛犬であろうか、犬とのディープキスをループで流すアルバート・ハーターの作品。部屋の隅っこにおかれたテレビセットの画面からは異様な不穏感が部屋に向けて発散される。中にはインタラクティブ作品まで。マウスを動かしクリックすることによって画面のなかのあどけない少女がブラウスのボタンを外したり(でもそこまで)、眠る少女が寝返りを打ったり。微妙な作品がそろいにもそろっている。最初のビデオ作品はパトリック・ロックとビキニ姿で登場のパフォーマンス・アーティストのキャサリン・ウィリアムソンとのコラボレーション。無意味なメビウスの輪的パフォーマンスが繰り返される。

ブリトニー・スピアーズとは何なのか。アイコンと成り果てた若いアイドルの行く末については様々な憶測が飛び交い続けることだろう。

The Britney Spears Show
会場:SPIRAL GALLERY
住所:1837 Arlington Ave, Los Angeles, CA 90019
TEL:+1 323 731 4542
spiralgallery@hotmail.com

Text: Aya Muto
Photos: Photos: Courtesy of Spiral Gallery

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE