レスフェスト 2001

HAPPENINGText: Aya Muto

あらゆる祭典の催される街ロサンゼルスだが、そのシーンのヒップ度や、どのセレブが何を着てた、などとは程遠い次元の「フェスティバル」はなかなか希少。毎年サンフランシスコを皮切りに、世界のあらゆる都市を旅するレスフェストは、そんなロサンゼルスに「でも実は先端の技術を知ってる街でもあるんだよね、」と優しく問いただしているかのよう。

鍛練と熟練の賜物と言えるデジタル・フイルムの先駆作品が一堂に介するこの祭典は、かなり着実に市民権を得てきている。とはいえ、足を運ぶ多くはフイルムメーカーやアニメーター、そしてグラフィックデザイナーやその卵たちだ。上映の後のたわい無い会話には、フラッシュ、マヤ、アフターエフェクツなどのソフトウェアの名前が当たり前のように飛び交う。出向いた理由も『ひらめきを求めて』とか、『アフターエフェクツを習得中だから』と実に勤勉だったりする。世界中の様々なフイルムフェスティバルにはそれぞれの「色」があるわけだが、レスフェストでは明確な素材の限定と主旨の特殊さによって、まるで美術館のキュレーションに近い完成美をかもし出す。まだまだ未知指数といえるデジタル世界のスキルと先駆性を讃えるこの祭典は、 2000年代を生きる我々を常に新しいレベルへと引き上げていってくれるだろう。いや、世界中のどこかのデザイナー、クリエイターによってすでに実践されたいわば「事後報告」なわけだから、実に最前線の戦士達の手の内あかし大会と言ってもいいかもしれない。

1分から40分の短編作品達がテーマによってグループ化されてのプレゼンテーション。今年のテーマ設定は応募作品の増加を反映して短編5部門に、シネマエレクトロニカ(ミュージックビデオ部門)、映画タイトルデザイン部門を加えた7部編成。それに特別上映の「SCRATCH」と「BLOOD THE LAST VAMPIRE」が名を列ねる。後者が日本アニメということで、1995年のケン・イシイのミュージックビデオ「EXTRA」(6年前のものとは思えないでき!改めて日本のアニメーション技術に乾杯)、そして御存知ダフトパンクと松本零士のコラボレーション「Harder, Better, Faster, Stronger」(シネマエレクトロニカでは「Aerodynamic」もエントリー)のとてもおまけと言えないような2本が同時上映された。その中からほんのいくつかを以下に紹介したい。

Avenue Amy “Outfriended” / アベニュー・エイミー「のけ者」(USA/11:00/2001)
監督:Joan Raspo 脚本:Amy Sohn

「人情」の痛いところを突いた傑作。最高につまらないデートの相手がもし自分の大親友の男友達と意気投合してしまったら?そして自分よりもそいつと過ごす時間の方が長くなってしまったら?小さな嫉妬から生まれるそんな恐怖がエイミ−の身には降り掛かってくるのです。しかも10年ぶりにバーで遭遇した女友達までどうやってか一瞬にして二人に意気投合してしまい…と落とされるところまで落とされるエイミー。実際の動きからつくられた暗いカラーパレットのアニメーションがダークな笑いを誘います。

Delusions in Modern Primitivism / 近代原始イズムの錯覚(USA/17:00/2000)
監督・脚本・編集:Daniel Loflin

この監督、日本にも行くそうです。ピアシングと入れ墨の先にはこんな発展形の「アート」(?!)があったとは。米国郊外臭ムンムンの、ただのパンクなモノローグかと思いきやとんでもない。ここまで手に汗を握らせながら、それでも笑わせるこの監督、最高です。ジェローム(主人公)万歳。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE