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NEUT.

THINGSText: Naoko Ikeno

グラフィック、音楽、ファッション、プロダクトなど、既存の枠組みにとらわれず、ジャンルを横断しようとするデザイナー達自身が、自分達のデザインを自由に表現するメディアとして、新しい形のデザインを考える本「NEUT.」が発売される。今生まれつつあるデザインがここにある。編集を手掛けたアジール・デザイン佐藤直樹氏にお話を伺った。


Spread from NEUT., ASYL DESIGN / Photo Satoshi Minakawa.

まず初めに、自己紹介をお願いします。

佐藤直樹。1961年、東京生まれ。北海道教育大学卒業後、信州大学で研究生に。専攻は教育社会学・言語社会学。研究生活、肉体労働、編集業務などを経験しつつ、赤瀬川原平らの活動で知られていた神田・美学校にも在籍。 94年から「ワイアード」日本版のADを2年間務め、クリエイティブ・ディレクターを経た後、独立。現在、アジール・デザイン主宰。というかんじです。


Spread from Design Plex., ASYL DESIGN / Photo Satoshi Minakawa.

アジール・デザインについて教えて下さい。どのような活動をしていますか?

ホント、いろいろですねえ。ウェブサイトを見ていただけると分かっていただけると思うんですが、いわゆるグラフィック・デザイン全般です。

NEUT.を始めることになったきっかけについて教えて下さい。

きっかけっていうのはもうよく憶えてないんです。2年以上前になると思うけど、最初はウェブジンをやろうとか言ってた。そもそもはデザイン業界に対する強い違和感があって。広告をやるとかエディトリアルをやるとかっていうのは、やるべきものがあってはじめるのがまっとうなモノづくりだと思うんだけど、今のデザイナーっていうのは、そういうのなしにやってるっていうか、業界人であることが目的になってしまっているように僕には思えた。そのポスターほんとに必要なの?とか、それ、ほんとにカッコヨク見せなきゃなんないの?とか、そういう根っこのところを全然考えないでやってる。そういうのが、すごくカッコワルイことだと思ったんですよ。

今の業界の発注とか受注を前提にしないで、つくらないでいいようなものはつくらないということを流れとしていくためには、いい仕事を運んできてくれる人を待っているだけではダメで、常にこちらからいろいろなことを提案できるようにしなきゃならないし、そのためには実験のプロセスを公開して、いつでもそれを見てもらえるようにしておかなければならないと思った。

最終的に、ウェブジンからのスタートにしなかったのは、ウェブっていうのはすごく自由にはじめられるものだから、放っておいてもいろいろな新しいメディアが生まれてくるだろう、でも、紙のほうでそれをやってる人が全然いないんで、じゃあまずは紙からはじめてみようかと。それに、今までのメディアのあり方に対するアンチだったりオルタナティブだったりというのなら、はなから違うことをはじめるより、同じ舞台で違うものを見せたほうが強いんじゃないかっていう。ウェブを使った提案だから新しいとかそういうことではなく、どんなメディアの使い方にもやりようはあるんだっていうふうに考えましたね。


Spread from NEUT., Naohoro Ukawa

NEUT.の内容について教えて下さい。どのような内容ですか?どのような方が参加されていますか?

ほとんどの頁がグラフィックのみによって構成されていて、文字を主体にした記事は3つだけです。ひとつはテイ・トウワと東泉一郎の対談で「DESIGN LIKE MUSIC, MUSIC LIKE DESIGN」というもの。もうひとつは、若手建築家とグラフィック・デザイナーのユニットであるスープ・デザインがデザインジャーナリストの渡部千春と家具デザイナーの藤森泰司を招いて行ったSOHOをめぐる鼎談。そして、伊藤ガビンと椹木野衣と僕の3人がデザイン全般の話を6万字にわたって展開している「WHAT IS DESIGN?」。

グラフィックの頁も、ただ作品を掲載するというのではなく、各デザイナーと話し合って、今のデザインを再解釈するかたちで、新しいデザインを提示してもらうようにしたかった。そこで「○○デザイン」という場合の○○の部分を、各人各様にテーマ化してもらいました。


Spread from NEUT., Tomoo Gokita

たとえば、五木田智央は「看板のデザイン」をテーマにしています。当初はイラストを使おうと思ってたんだけど、作品性や作家性はこのテーマにそぐわないってことで、場末のポルノショーの煽り文句を書き殴った巨大な横断幕を、都内の至る所に持ち出してみることにしたんです。で、合成とかじゃないナマの強さがほしかったから、フォトグラファーの増田慶に依頼して全て8×10で撮ってもらうことにした。これがどこで撮ってもハプニングの連続で、やーさんに囲まれたりもしました。デザインにとって「どこで何を」っていうのがいかに重要かってことですね。今のデザインの作品主義、作家主義をふっとばすような仕掛けになってると思います。

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