VIDEACY 映像・概念・音楽

HAPPENING

今までは商業ベース、もしくは口コミでしか情報網が発達していなかったビデオに、改めてメディアとしての光を当てるイベントが増えてきた。今では大手プロダクション映画がすべて DV で行われることも珍しくなくなり、そういった高度なデジタル技術がより身近になった影響もあるのだろう。ただビデオはあまりに消費者に近づき過ぎて、メディアとしての荘厳さを失っていた気があったことも事実。アートとしての神聖さが大量消費の行為で希釈されてしまう、これは少し前にスチル写真が陥っていたジレンマに他ならない。各国の美術館、画廊界でも写真が芸術としての安定した、いや、うなぎ上りのステータスを築きつつある今日、今度はビデオにその価値を問いただされる番がまわってきた。


ロサンゼルスをベースに活動する映像・実験音楽作家のアンドリュー・バックスバーグが新しい切り口を見い出すべく、この低コストで制作に導入できるメディアに着目。今回のVIDEACYを主催した adHocARTS.orgは、そうして一年半ほど前に日の目を見る。

「どの“群”にも属さないアーティストやクリエイタ−達の分野を超えた共通の発表の場を想起しなければ、という衝動と需要に突き動かされて adHocARTS.orgを立ち上げた。その主軸となるのは、ギャラリーや美術館などの展示に向けた伝統的/保守的な形式・様式外、また商業ベースの産業の影に隠れて値する評価を受けられていない制作活動をこぞって奨励しようという試み。ここではインディーズや実験派のアーティスト達にはもってこいの“ツール”であるウェブやインターネット技術を積極的に駆使し、ベースとなるロサンゼルスはもちろん、世界中のアート界、また一般のオーディエンスと作品を分かち合うことを目指している。 adHocARTSの任務は、芸術的なレジスタンス、メディア・アート・テクノロジーの発展、文化的展望、多様化・非同一化の遂行を通しておのおのアーティストに制作様式の幅を広げてもらい、その行為の発表の場となるのに相応しいイベントを主催してくことにある」とバックスバーグは述べる。

VIDEACYの開催にいたって、 12組のアーティストが世界中から集められた。意図は簡単。彼等の最新のビデオアート、アニメーションのいわばサンプリングを通して、各アーティストが遂行するビデオ特有の様式や機能を紹介。「楽しんでもらえるといいけれど、」と控えめな言葉でプログラム紹介が始まる。

「動画を捕らえたり制作する行為が、音、音楽、インスタレーション、パフォーマンス、またそのあいのこ達と融合することによって、アーティスト達は未来への前進を遂げる。デジタルアートはアーティストに技術的に挑戦をし続けるとともに、一方でジャンルを入り交えることを可能にしてくれる。このプロセスで多くのパターンが生まれ、アーティスト達は自身の人間性をより忠実に反映する方法を選択していく。作品とアーティストの関係もしかり、それから他の作品との比較を強いられることによって昇華や裏切りを経験する。」そんな相互作用の促進にも VIDEACY 開催の意図はあるようだ。「音声と音楽も作品の重要な一部を成している。というより、ほとんどの人が視覚的覚醒にとっての最大の修辞だと思ってるんじゃないかな」というバックスバーグも映像作家の他に実験エレクトロ音楽家、という看板をかかげている。

参加アーティストの紹介

J. TOBIAS ANDERSON – 879 (01:52), My Name Is Grant (01:52), Active Passive Conversation (02:04)
スウェーデンはストックホルム出身。画家であった彼は1993年にアニメーションとビデオに傾倒する。ヨーロッパのフィルムフェスティバルに数多く参加。アンダーソンはハリウッドの商業的荘厳さ挑戦したりもする。「879」は、ヒッチコックの「North by Northwest」の一シーンがを879枚の手書きパネルによって再現された。

KINYA HANADA / Mumbleboy – Crossing (01:48), Kompendium (02:34), Powers that Lurk (03:05), Enfant! (01:44)
横浜出身だが13歳の時に南カリフォルニアへ。学校を経てNYへ移住し、 現在はフリーランスのウェブ・アニメーター/イラストレーター。ポップ色の強い作品。ハナダの作品は様々なウェブサイトで取り上げられ、ビデオ/フィルムフェスティバルへの参加も多々。

MICHELE BECK and JORGE CALVO – Untitled (01:09), 9;11 (03:00)
ベックとカルヴォはパフォーマンス、ビデオ、写真、サウンドなどのメディアの境界を超えて活動。

ANDREW BUCKSBARG – Untitled (06:00), Chair (06:53)
主催者でもあるバックスバーグはこのイベントの主旨を体現すべく、2作品を通してビデオというメディアに全く違ったアプローチを試みる。前者は実験音楽にあわせたデジタル画像美。後者は廃虚となったオフィススペースを人間と一体化したイスが練り歩く。

LARA FRANKENA – To Ache Sharply From Time To Time (06:00)
体のクロースアップのシークエンスで痛みを示唆する。ビデオ、サウンド、写真などのメディアの他にも印刷術や手製本にも長けている。

STERLING RUBY – Human Touch (02:11)
ドイツはビッツバーグ出身。彫刻、写真、ドローイング、オーディオ、ビデオなどの作品を通してルビーは情緒やセクシュアリティを考える。現在はシカゴ在住。

CECILIA LUNDQVIST – Rebus (06:17)
スウェーデンはストックホルム出身。1994年以来アニメーションビデをを数多く手掛けている。世界中のフィルムフェスティバルに数多く参加。

CLAY CHAPLIN – “Thanks, Sharon” (approx.06:00)
ロサンゼルス在住の作曲家、デジタルメデイア・アーティスト。チャップリンの作品ではリアルタイムのパフォーマンスとビデオのサンプリング術などが共存。つい最近アムステルダムで「Stupid Thing」と呼ばれるインタラクティブ・ワイヤレス楽器(内蔵されたオーディオ/ビデオデータをリアルタイムで遠隔的に操作できる)の発明を終え、帰国したところ。

GABRIEL CYR and KYLE HARRIS – Mannered (04:00)
シ−ルはシカゴ在住の音楽家、フィルム/ビデオ作家。米国内各地でパフォーマンスを行う。ハリスはビデオ作家であるとともにライター、キュレータとしても様々なフィルムフェスティバルで活躍。

MARINA ZURKOW / Braingirl – Eye Test (03:39), Braingirl’s Brain (03:55)
O-Maticの創設者。マルチメディア・アーティストであるとともに映像作家である彼女はVIDEACYに強力なキャラクターの Braingirlをもって参加。異常に強調された性器を持つ Braingirlは、ジェンダーを超えたところの現代医学に疑問符を投げかける。

AMY GREEN and RYAN HILL – How To Build Your Own Plastic City of the Future (07:51)
グリーンはロサンゼルス在住の彫刻家、画家、インスタレーション・アーティストで、教育者でもある。彼女の抽象絵画にはチェリーやジェロー(アメリカ製簡易ゼリー粉)やキャンディーが場をひしめく。

JENNIFER STEINKAMP and JIMMY JOHNSON – X-ray Eyes (05:00) Courtesy of Acme, Los Angeles
アーティストのスタインカンプとコンピューター音楽作家のジョンソン。二人の建築インスタレーションは世界中の美術館、ギャラリーで展開している。

「中には3人(バックスバーグの他にサラ・ロバーツ、シーラ・M・ソフィアンがキュレーションに参加)で話し合って、長過ぎる、という意見が出た作品もあったが、純粋にビデオの可能性の提示をするにはそういう作品もあえて加えることが重要だった。」とバックスバーグ。VIDEACY は、年に一度開催されるビデオフェスティバル。今回はその記念すべき第一回となるわけだ。ロスのダウンタウンという華やかさとは程遠いロケーションをあえて選択したわけだが、「思った以上の反応で良かった。ロケーション的に嫌われるかと心配してたから」というバックスバーグは、このダウンタウン地区の再建にアーティスト達が意識的に貢献することの大切さを解く。今回は、Side Street Projects という組織が提供しているシアターを幸運にも押さえることができたのだそう。「ロサンゼルスではいわゆる業界が強腕を振るい過ぎている気があって、今までSFやシアトルのようなメディア・アートをサポートする組織がなかったんだ。少なくとも僕の知ってる限りではね。でも人々はビデオやデジタル・アートにまだまだ夢を抱いてる。だからこの先どれだけ技術が発展していこうと、それに追随してアーティスト達はこのメディアの実験や追求を続けていくだろう。」

これから再発展するメディアとしてのビデオに注目あれ。

VIDEACY
会期:2001年7月20、21日
adHocARTS.org主催

作品、アーティストに関する問い合わせはすべて Andrew Bucksbarg まで。

Text: Aya Muto from New Image Art Gallery

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