メトロポリス

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まず、ふと思うのは、なぜ今「手塚治虫」なのか、そしてなぜ映画化に選ばれた作品が「メトロポリス」なのか、このふたつの意味を考えなければならない。
日本のアニメーションが「ジャパニメーション」と呼ばれ、質の高いカルチャーとして盛り上がり、「風の谷のナウシカ」や「攻殻機動隊」などが世界的に高い評価されている現在、日本でこれからも決して超える存在は考えられない漫画家であり、同時に日本のアニメーション時代の創始者でもあるのに、手塚治虫の手がけた劇場映画アニメーションというのは決して多くはないし、世界的評価が確立されたものも皆無の状態なのは、なぜなのか。そんな素朴な疑問からこの映画は作られた理由ではないか、と僕は思っている。ある意味皮肉かもしれないが、手塚治虫のマンガは、コマが躍動するようなスピード感があり、作風も非常に洗練されたヨーロッパ映画風のものが多い。逆にいかにも日本的、といえる部分が少ないぐらいだ。映画化する題材しては、とても魅力的だといえる。


「AKIRA」 で知られる日本のアニメーションのトップクリエイターの一人であり、本作では脚本を担当した大友克洋も、当然のことながら手塚作品に大きな影響を受けた一人だろう。大友克洋もなぜ世界に誇れる手塚作品がないのか?そんな疑問あったのではないだろうか。では、あらゆるジャンルに膨大な作品のある中で、なぜ「メトロポリス」なのか?この答えも、案外シンプルなもので、大友克洋は自分の得意とする未来都市をテーマとする作品を一度リセットして再びつくり出したかったのではないか。具体的には、2001年を迎えてネガティブに行き詰まりをみせている「未来の光景」をもう一度、クラッシックな未来観を通して再構築したかったのではないか、と感じた。得意とするテーマのなかで、自分のリスペクトする手塚治虫の作風と、自らのセンスを重ねて、単に「懐かしさ」のみを感じさせる作品になるのを防いでいる。「メトロポリス」の映像は、まさに「手塚作品」と「大友ワールド」が、とても気持ちよく融合して、品が良く、同時に緊張感のあるシーンを作り出している。

ストーリーを簡単に説明すると、犯罪科学者を追って日本から未来都市「メトロポリス」に来た探偵であるヒゲオヤジと、その甥で主人公のケンイチ。ペロというロボット刑事の手を借りて、捜査している中で、ケンイチは不思議な少女ティマと出会い、同時にメトロポリスの影の実力者、レッド公の秘密結社マルドゥク党のリーダー、ロックに命を狙われる。ティマと逃げるケンイチ、その中でふたりの間に生まれるほのかな愛情。そしてレッド公の恐るべき陰謀と、反メトロポリスの革命の動き、これらが、圧倒的な迫力を持つCGを駆使した都市の光景の中でストーリーが進んでいく。

登場キャラクターは、ヒゲ親父や、ロック、スカンク、ハム・エッグなど、手塚作品ではおなじみのキャラクターが、メトロポリスを舞台に活躍する。無数の人が生活する超巨大都市メトロポリスの描写は、様々なシーンで繰り返し登場し、本作の見どころの一つになっている。反面、華やかな地上都市と対照的な地下都市の「ブレードランナー」風のさびれた都市のセンス、銃火器のシーンのマニアックなこだわりは、まちがいなく大友ティストを感じさせる。結局のところ、故人である手塚治虫は、本作には直接関連できない訳で、作風のサジ加減は難しいところなのだが、その辺はさすが。スタッフらは“手塚の子供たち”のようで「手塚先生」に観てもらっても絶対恥ずかしくない作品を作るぞ!という、心意気が最新の映像テクニックや、独自のこだわりをキチンと出しながら、手塚作品のもつ、独特のやさしさ、品の良さを最大限に活かした作品になっている。でなければ、逆に本作を作る意味がないだろう。

人間ドラマという点も忘れてはいけない。「人間とロボット」という関係を単なるファタジーではなく、純真で正義感の強いケンイチという主人公のまわりに取り巻く、歪んだ愛、人間の欲望、そして暴力の恐ろしさがハッキリと描かれていて、ラストで描かれる大きな悲しみと新たな始まりを僕たちは心に刻み込む必要があるだろう。本作は単なる「お祭り映画」ではない事をもう一度念を押しておきたい。

メトロポリス
2001年/日本/35mm/カラー/ドルビーデジタル、DTS/ビスタサイズ/1時間47分
制作:マッドハウス 製作:メトロポリス製作委員会
配給:東宝
原作:手塚治虫 監督:りんたろう 脚本:大友克洋 音楽:本多俊之
http://www.metropolis-movie.com

Text: Shinichi Ishikawa from Numero Deux

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