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アンテナ・シアター「ユーフォリウム」

HAPPENINGText: Kanya Niijima

過去20年に渡って サンフランシスコ・ベイエリアを中心に、 数多くの実験的シアターイベントを制作し続けているグループがある。アンテナ・シアターという名のもとに活動するこのクリエイティブ集団、単にシアターといっても典型的な劇場の定義から全くかけ離れた、“シアターらしくない” 作品を展開する事で有名だ。

「Walkmanology(ウォークマン論)」と自ら称したコンセプトに沿って繰り広げられる彼等のイベントは、いわば舞台と観客席という二面性の境界がはっきりしたような空間を原点にしていない。歩く事、動く事をオーディエンスに要求し、従来のシアターがもつ静的な鑑賞法ではない、インタラクティブ性の強い環境を提案している。過去の代表作として、サンフランシスコの名所アルカトラズ島の元監獄で、今でも使用されているオーディオ体験型ツアーなどがある。

今回紹介するのは、2月に発表されたばかりのアンテナ最新作「ユーフォリウム」。ゴールデンゲートの根元、鬱蒼とした森林に囲まれた人気のないプレシディオ地区にて、3000平方フィート程のウェアハウスを、オーディオとビジュアルメディアを駆使した3次元インターラクティブスペースに変貌させたイベントである。1800年代初期の英国詩人サミュエル・テイラー・コールリッジによる麻薬アヘンの関連性をもった作品、「クブラ・カーン」を題材にして構成されたこの作品は、ドラッグがもたらす幻想的で混沌とした体験を、パフォーマンスとインスタレーションアートを通して再現しようと試みたものだ。

オーディエンスは各自提供された特製ヘルメットをかぶり、2分間ごとに一人ずつ入場することになっている。一人きりになる事によって個人各々の精神世界に没頭させるのが狙いらしい。一旦会場へ入ると、様々な幻覚的イメージが暗闇の中でフラッシュバックし、ヘッドフォンからはクブラ・カーンの詩を断片的にサンプリングしたサウンド、ボイス、そしてエフェクトが耳を刺激する。ヘルメットによって作り上げられる視覚効果の一つとして、目の前でイメージがまるで万華鏡のように形や色を変化し続ける中、オーディエンスは備えつけられたハンドレールのみをガイドに、迷路の様な闇の空間を歩き回り、疑似ドラッグビジョンを堪能するといった具合だ。わずか30分程の体験だが、夢の様な次元を誘発し現実的な感覚を麻痺させる。

サイケデリックを主題とした、いかにもサンフランシスコらしいこのイベント、予想以上の人気のため予定されていた最終日である3月10日を変更し25日まで開催する。尚、一日における入場人数が限られているため、予約を入れた方が無難との事。

The Euphor!um by Antenna Theater
会期: 2001年2月16日〜3月25日
会場: Presidio, San Francisco
TEL: +1 415 332 8867
https://antenna-theater.org

Text: Kanya Niijima

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