MUTEK(ミューテック)2000

HAPPENINGText: Jean-Philippe Beauchamp

毎年モントリオールでは、様々なフェスティバルやイベントが開催される。いろいろなイベントが一度に起こって、その殆どはつまらないものだが、MUTEK(ミューテック)こそは、僕が求めていたものだ。まず始めに、その歴史を少し紹介しよう。

ダニエル・ラングロワは、ケベックが生んだ最初の “ソフトウェア” 大富豪だ。彼の3Dソフトウェア、ソフトイメージは、コンピューターアニメーションという分野においてハリウッドでの基準を作り、ジュラシックパークやタイタニックなどの大ヒット作を生んだ。

だが、稼いだ金で何か面白いことをやりたいと思い立ったラングロワは、1999年6月に自分の組織を設立。彼が自分自身で設計したエキセントリス劇場は、今日得ることができる最もハイテクな装置を兼ね備えており、「デジタルテクノロジーを使ったアート作品と共に、世界中で作られるアヴァンギャルドで素晴らしいインディペンデントフィルムのメッカ」と言われている。3つの小シアターは、デジタル高画質作品を鮮明に上映可能で、必要とあれば衛星を経由することもできる。

オープン以降、ラングロワと彼のクルーは、ありとあらゆるイベントのスポンサーを務め、主催してきた。モントリオール・ニュー・シネマ&メディア・フェスティバルも、そのひとつだ。10日間に渡り、「新しい映画」「新しいメディア」を紹介するこのイベントには、ファーマーズ・マニュアルを始めとして、モントリオール出身でデジタルイメージを扱い、巧みなオーディオビジュアル表現を展開するスキャナー+トンなどが過去に参加している。

エキセントリスとFCMMが手を組み、よりオーディオ寄りのフェスティバル、ミューテックを初開催した。音楽、サウンド、ニューテクノロジーをメインとした5日間のフェスティバルでは、最先端のアーティストを集め、モントリオールのミュージックシーンのギャップを埋めるものとなった。アクフェン、トーマス・ブリンクマンやポール、ヴラディスラフ・ディレイ、ジェイク・マンデル、テイラー・デュプリー、カールステン・ニコライ、パナシア、スーテック、(ドットマトリックスプリンターでシンフォニーを生み出した)THE USER など、ビッグネームが名を連ねていた。

第1回目から、モントリオールの批評家達はミューテックに対して寛容だった。もちろん、調整すべき点がいくつかあるのだが。皆と同じように僕も、トーマス・ブリンクマンがダンスフロアーにぴったりのプレイをする「ミニマリズム」ナイトでどんなことが行われるのか気になって出かけてみたのだが、そんなに印象的なものではなかった。だが、全体的にはミューテックは成功を収め、来年も開催されることだろう。

MUTEK 2000
会期:2000年6月7日〜11日
会場:Ex-Centris complex、Café Campus、Laika
TEL:+1 514 847 9272
http://www.mutek.ca

Text: Jean-Philippe Beauchamp
Translation: Mayumi Kaneko
Photos: Courtesy of the Mutek

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