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デザイニングス

PEOPLEText: Akira Natsume

直訳だとモダンな人達の為のパターン集。昨今のフォントブームを見ていると、デジタルというフィルターを通して、自分のアイディンティを表現する際にフォントがとてもいい役割になっている事が分かる。ではパターンはどうだろう。パターンはすでに数多くのデザインが出ていて、なかなかオリジナリティーは持ちにくいというのが正直な所だが、去年一昨年と流行した迷彩というパターンが大きな文化の流れの中で記号化されていくさまはとても面白かった。それと同じようにチェックやオプティカルパターンなどのモダンなパターンもまたオリーブや、ピチカートファイブ、グルーヴィジョンズ(GRV)に代表される文化の大きな記号になりえるのではないだろうか、このパターン集にはパターンが200種類収録されていて、全てがタイリング可能になっている。自分のデスクトップの色を変えたり、仕事に使ったり、時期的にクリスマスカードや年賀状(元の始まりは去年デザイニングスに黄色のチェックの年賀状を制作してもらったことからだった)布ものなど、デジタルの生地屋として存分に楽しむ事ができるだろう。

制作を担当したデザイニングス(designings)は、まだ若干22才の3人組で、GRVが登場した土地、京都で現在も活動している。東京から離れた町で、しかも若い彼らがインターネット(モダニティーズという同名のメーリングリストも主催している)や、フリーペイパー、様々な作品制作を通じて、小さいながらも全国規模のネットワークの中で活動している様は今起ってきている新しい時代の波を感じさせずにはいられない。それはフリーペイパーという文化が望んでいた一つの形だったのではないだろうか。

まずデザイニングスの生い立ちとメンバー紹介をしてください。

96年にお互いのGRV好きその他諸々の趣味の一致がこうじて出会い、意気投合したところからスタートしました。当時僕は会社員、他の二人は学生ということもあって、遊び半分でなんかやろうという感じでした。こう、まさにおきらくごくらくな(笑)。結成当初より現在に至るまでメンバーは僕ウガタと他にカタヤマ、フジワラの計3名です。現在全員22歳です。

96年当時のGRVのイベントの様子や、回りの状況をもっと教えていただけないでしょうか?

グルーヴクエストという名前は昔出ていたジャズのコンピを編集していたり、ピチカートのライヴ映像をやっているということで以前から知っていて京都に来るときもすごく気になってはいたのですが、グルーヴィジョンズ by グルーヴクエストとか言ってたし最初は本当に謎でした…。正直そのジャズコンピのイメージから「ぴたっとしたスーツ着てる人たちかなあ?」(笑)と思ってたんですが、いろいろ調べていくと全然そうじゃなくてもっとカジュアルでスポーティーだった(笑)。

僕はその年の春に京都に来たので(1)メトロでのイベントには後期3回しかイベントに行ってないのですが、とにかく日本全国からいろんな人が集まってきてました。ちょうどGRVサイトがマクロメディアサイトに掲載された時期で。僕もちょうどその頃ネットに繋ぎ始めていたし、初めて入った Apes-ML(コーネリアスのML、その頃ほぼ唯一の澁谷系ML)でGRVツアーみたいな感じで東京の人たちが来るということで連絡とって合わせて行ったりしていて。イベントの方もDJに今年大ブレイクしたソウルメイツ(2)の皆さんとかが名古屋・岐阜から来て回していたりして、今現在もネットで仲良くしてもらってる人たちがとにかく集まってきていました。

そこで初めて見た映像にガツンとやられてしまって。その頃僕の考えてたVJっていうともっと「クラブ」みたいなのを意識してて、わりとぐにゃぐにゃした映像とかばっかり、悪く言えば水っぽいかなあって勝手に想像してたんですが、全然違って、すごくインテリジェンスで、おしゃれだったというのが衝撃的でした。その頃さかんに叫ばれていた「理系」っていうキーワードも映像見てわかったし(笑)。

96年9月の時にはイベントの前に宴会があって、そこで初めてGRVのメンバーやソウルメイツや僕らとフリーペーパーを作っている島根のPWM渡部さんとか、SHIFTでも以前ライターをやっていたアコさんとか、現在モンスーン(3)という雑誌を作っている慶応の牛久保くんとかとお会いしてお話したりしていました。デザイニングスのメンバーともこの頃会った形なので、モダニティーズの始まりもちょうどこの頃かもしれません。とにかく僕にとって非常に濃い出会いがあった時期でした。

たしか10月くらいにデザイニングスやろうって決めてとりあえず結成だけしたり、伊藤さんやソウルメイツ、あと結構GRVイベントには重要な讃岐の山元さん達とメールで盛り上がって自宅の近所で飲み会やったり(笑)
最後の12月の時がいちばん人が集まって、確か北は札幌、南は熊本から京都に集まった、とかだったと思います。そのとき感じていたのは「この求心力は凄いな」って思いました。これが東京だったら分かるのですが、なんせ京都だから。

よく分かりました。そのイベントでの沢山の人達の出会いからこの盛り上がりは起ってきたのですね。 宇賀田さんが主催しているモダニティーズには、沢山の現場で活躍している人々や、その文化を支えている人達が参加しています。モダニティーズの設立から今日までの流れを教えてください。

確か96年の10月くらいに設立しました。最初は知り合いに、他にも少し宣伝等をしていました。開設した当初はすごく盛り上がってそれこそデザインの話題だけでなく多種多様、雑多でごった煮状態でした。思えばこの頃がいちばん楽しかったかもしれません。それから僕の管理能力が無いせいかもしれませんが、徐々に盛り上がりに欠けていきました。まあそれでも時々はぽこっと話題が出たりしていますが。現在では誰も何も言わなくなって、死んでる状態です。

それはやっぱり人が増えてきて誰が参加しているかがはっきりしなくなってきたのが原因なのでしょうか?

まったくその通りだと思います。特にこれといった「ジャンル」のようなものを定めておらず、グラフィックデザインについてのMLとしか当初から明確に説明できないでいたのです。
ある一定の枠を超えた人数が集まったら、モダニティーズというすごくあいまいだけれども共通の価値観のようなものを持つことがきつくなってくるだろう、という事も以前から分かってはいたのですが、管理人としてうまく誘導することができなかったようです。今後はより多くの人が集まってきても発言しやすくて納得できるようなMLの雰囲気を作っていければと思っています。と、言いつつもなかなかできない(涙)

モダニティーズにかぎらず、インターネットで情報をやりとりする事や、ウェブで情報を発信していくことを宇賀田さんは、2年程やられてきたわけですが、今はどんなお気持ですか?これからの展望も含めて教えてください。

ネットも仕事やいろいろな事をする上で僕らにとっては欠かせないツールなのですが、身近な知人レベルでいうとまだまだみんながみんな、という訳ではないので、インフラの問題は別として、そろそろ成熟されてきた感もあることだしもっともっとネットユーザが広がっていけばいいなあ、と他力本願な気持ちです。

デザイニングスとしては現在各メンバーがSOHOでネットも電話もガンガン使って動いている状態なんですが、正直クリエイティビティや作業効率における限界を以前からとっくに感じていたのですぐにでも広い事務所を持ちたいと考えています。もちろん京都で。最近周りに面白い人たちがいっぱいで、お互いいい刺激を与え合っていると思うのでしばらくは離れられないです。また、もっともっとメディアの種類というか、製作の幅を仕事趣味関係なく実験的にでも挑戦していって広げていきたいです。

そうは言っても、言ってもいちばん重要なのはダラダラと、睡眠時間は毎日8時間以上で、という理念は崩さないようにして日々頑張っていくしかないの一言につきますね。

最後に一言お願いします。

この12月に「pfm」がようやく出て、あと前から発行していたフリーペーパーの最終号を出す予定です。今後の事は全然決まっていません。わりとネタはいろいろとあったり、やりたい事は沢山あるので、じっくりのんびり考えていこうと思っています。

(1) インタビューに応えてもらった宇賀田さんは京都出身ではない。東京の文化服装学院を卒業してから京都に出てきたのだ。GRVのリーダ的存在である伊藤さんも新潟県出身である。
(2) soulmates:とにかく必見。今年はホットワイアードでやっているクリックアートで見事な作品を披露するなど、平面、インタラクティブ双方で活躍している。GRVがネットから離れている今、そのサイトの存在はとても頼もしいかぎりだ。今年の年末には名古屋でイベントを開催するらしい。
(3) モンスーン0号のGRVページはリラックスGRV特集と合わせて必見。1号も現在発売中。

Text: Akira Natsume

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