九龍皇帝 曾灶財

PEOPLEText: Shinobu Koike

香港、特に九龍サイドを歩いていると、筆で文字がびっしりと書かれている電柱や壁によくでくわす。中国語で書かれたその内容は、「自分は英国に我が領土を奪われた九龍の皇帝である」といったもので、作者・曾灶財は自身を「九龍皇帝」と呼んでいる。多くの香港人は、彼のことはよく知らなくても、彼の書(グラフィティ)ならよく知っているだろう。ちょっとした有名人である。

そんな彼追ったドキュメンタリー映画「九龍皇帝」がジョアンナ・シェン&マーティン・イーガンによって制作された。大学教授、彼を撮り続けているフォトグラファー、彼の書をプリントした生地でコレクションを発表したファッション・デザイナー、そして、香港一般市民等々の声を交えながら、彼の姿、生活の様子を写しだしていく。彼の書は芸術、落書き、かれは天性のアーティスト、単なる風変わりな老人、羨ましいから迷惑だまで、登場した人々のコメントはとても対照的だ。彼は凄い、天才だと力説する知識人と比較的醒めた目で見ている香港一般市民の落差が興味深かった。

曾灶財は、現在78歳と高齢だが、今も書き続けている。同じ内容を40年間も九龍、新界で書き続けている。消されてもまた書く。捕まっても書く。けれども、殺気立っているわけではなく、にこにこしている。

いずれにせよ、どんなに誉めたたえられようと嫌がられようと曾灶財には何の影響力もなく、彼は書き続けるのだろう。そして、多くの香港人にとってはそれは日常の一部となっている。

Text: Shinobu Koike

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