マット・オーエンス

PEOPLEText: Satoru Tanno

今回SHIFTのカバーグラフィックを制作してくれた、マット・オーエンス。ニューヨークのヴィジュアル・コミュニケーション・スタジオとして数々のウェブ制作をしながら、自らのサイト「ボリュームワン」では数々の実験的なアプローチを試み、自らのプロモーションにも成功を収めている彼に、ニューヨークのウェブシーンや「ボリュームワン」についてインタビューを試みた。

Matt-Owens

まず、自己紹介をおねがいします。

マット・オーエンス。26歳。1997年からニューヨークでヴィジュアル・コミュニケーション・スタジオとして、「ボリュームワン」を始めました。その前は2年ほど、「メソッドファイブ」というウェブ制作会社でシニア・デザイナーとクリエイティブ・ディレクターとして仕事を経験。そのさらに2年前は、クランブルック・アカデミー・オブ・アート・グラフィックデザインの修士号を取得。出身はテキサスです。

自身のウェブサイト「ボリュームワン」について教えてください。

ボリュームワンには2つの目的があります。まずは、自分が面白いと思うナビゲーション、ヴィジュアル、ナレーティブのアイディアを試す実験場として機能させること。クライアント・ワークというのは、実験的で斬新な試みを時間と予算の枠組みによって阻害してしまいがちなので、ボリュームワンはアイディアを生かすためのフォーラムとしての機能もあるのです。
2つ目は、プロモーション的な役割。季刊としてデザインを変更していますが、ボリュームワンというのは自分に課したクリエイティブ・ダイアローグのようなもの。自分としてはクライアントや他のデザイナーに異なったコミュニケーションの可能性や新しい領域へ足を踏み出して欲しいし、それこそが、これらのダイアローグを実際の例を通して押し進めることなのです。誰もが面白い作品を作りたいと思っています。問題は、だまって状況が変わるのを待つか、それともそういった状況を作り出すか。僕は後者を選びます。

ボリュームワンでは新しい表現方法を試みるにあたり、どういうことに心がけて制作しているのですか?

特にウェブ制作という領域に関しては、既存の伝統的グラフィックデザイン、インターフェイスデザイン、インフォメーション・アーキテクチャーが全て融合されるので、これら3つの要素がどのように効果的に働くかはインターネットでのきちんとしたコミュニケーションの成立の重要な事柄だと思っています。
グラフィックデザインのスキルは、単にサイトの構造的な要素や情報のヒエラルキーだけではなく、一定のプロジェクトにおいて最も適切なヴィジュアル・ランゲージを作り出すことにも深く関わってくるのです。
インターフェイスデザインとグラフィックデザインは、ヴィジュアルとナヴィゲーションが一体化してこそ円滑に機能されるので、インフォメーション・アーキテクチャーを左右させる技術的な要素を踏まえてオペレートしなければならない。このことが理想的に運べば、新たな表現形態が生まれ、それを作り出すための環境をも作り出すことができるのです。

今興味のあることは何ですか?

今最も興味があるのは、自分のデザイン能力をもっと広げていくことです。モーション・グラフィックやプリントの仕事にもとても興味があります。
ウェブ制作に関して言えば、強力な技術的ノウハウをもつチームと共同で、デザイン、コンテンツ、インタラクション、ナビゲーションが一層洗練された面白いものを作りたいと思っています。
ウェブ、テレビ、プリントとインタラクティブメディアと今後ますますメディアの垣根が取り払われていくと思うので、デザイン自体がクロスメディアにおけるヴィジュアルコミュニケーションの問題に重要に関わってくるものと思っています。こういったメディアの融合プロセスの一端を担いたいとも思っています。

今回SHIFTのトップページのグラフィックを制作していただいたのですが、このグラフィックについてコメントおねがいします。

SHIFTのカバーグラフィックスはわずかの時間で仕上げました。最初はもう少し、キュートでハッピーなものを作ろうと思ってたのですが、正反対のデザインを試みました。
初めに、G2SYSTEMSのレモンの形を基に作った奇麗なヴィジュアルラインのレモンフォントを手に入れたのですが、英語のフォントがなかったので、レモンフォントの特徴を生かして、ビジュアルクオリティーを保ちつつ英語でSHIFTと組みました。
2、3週間前にニューヨークのエリザベス・ストリートでビューティサロンの回転ポールとサインを写真で撮っていたのがあって、そのうちの1枚が漢字(と思うが)の赤いネオンのものでとても奇麗だったので、このグラフィックのバックグラウンドにしました。3Dのフォントとのコントラストがグラフィックに深みを与えていると思います。横に走っている水平のラインで安定感を与え、フォントのバランスを取りました。コンセプトに拘わらず、カバーグラフィックというのは雰囲気や気分といったものを伝えるものを思っています。というわけで、これが僕の思うSHIFTのイメージであり、断片的な要素が集まった結果のフィーリングです。

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