「髙田賢三 夢をかける」

HAPPENINGText: Alma Reyes

次の展示室では、装苑賞を受賞した記念すべき作品をはじめ、1970年代の初期の作品が展示されている。「絞り」「ちぢみ」「紬」「浴衣地」など、「日本のきれ」を使った初期の作品、「ニット」「ツイード」「バルーン」といった素材や技法など、髙田が発表したテーマに着目した、日本人としての感性を駆使した作品を見ることができる。

また、寒い季節に木綿を使うという木綿の新しい可能性を打ち出したことで「木綿の詩人」と称され、早くから注目を集めた。


「髙田賢三 夢をかける」展示風景 東京オペラシティ アートギャラリー 撮影:髙橋健治

さらに髙田は、「バルーン」「ペザント」「ミリタリー」「修道士」といった斬新なモードで名声を高めた。バルーン・ルックはニットや厚手のコットン、コーデュロイで作られ、ふわふわとした風のように身体を包み込む。ペザント・ルックは、縦縞やチェックがはっきりした、ゆったりとした膨らみのあるコットン生地で日本の農民を彷彿とさせる。ミリタリー・ルックは、式典で着用される装飾的な軍服をベースに、スタンドカラーや金ボタンで表現した。修道士ルックにはヨーロッパの僧衣を取り入れ、コットンレースやコットンベルベットをあしらった。これと似ているのが、王室の人物をモデルにした華やかな刺繍が施されたコート・ルックだ。また、1970年代には、ポップでカラフルな配色でコミックのキャラクターを模したバンド・デシネ(フランス漫画)ルックも登場した。


「髙田賢三 夢をかける」展示風景 東京オペラシティ アートギャラリー 撮影:髙橋健治

その後も、髙田は身体を衣服から解放させることを意識し、直線裁ちの着物袖やダーツをなくしたゆとりある服を生み出したり、独特の色使いや柄の組み合わせを用いた作品を数多く発表。脚光を浴びてからわずか5年足らずで、ワイドパンツ、キャップスリーブのエプロン、アームホールの軍服、ゴム入りのウエストライン、パッチワーク、セーラー・ルックなどでファッションに革命を起こした。それらは、国境や文化、性別を自由に超え、しばしば “アンチクチュール” と形容された。これまでの西欧中心の伝統文化にとらわれない新しい衣服を示唆する遊び心は賞賛され、今もなお世界中で愛されている。

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葛西由香
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